第10話 SIDE : ミーナ

 私は銀狼族アズールの娘、ミーナ。


 父親が狩りで亡くなって約一年。母と弟の三人で貧しいながらも幸せに生きていた。


 でもそんな私達に再び不幸が訪れた。


 狩りに出掛けていたお母さんが足に怪我をしたの。この辺りには動物や魔物が居ないので、遠くまで出掛けていたお母さん。

 怪我をした足を引きずりながら戻って来た為に、その怪我は悪化していたの。


 それが今から二ヶ月ほど前。


 動けなくなったお母さん。私はまだ狩りが出来るほど強くない。ここで無理をして私が死んでしまうとお母さんも弟も死んでしまうだろう。だから畑になる作物でなんとか生きて行くしかなかった。


 ここは「不浄の森」と呼ばれる場所。


 この森には食べる植物は無く動物もほとんど居ない。そして畑の作物はあまり育たない。それでも頑張って、頑張って生きてきた。


 今から一週間前。


 やっと足の怪我が治って歩けるようになったお母さん。私と弟も毎日神様にお祈りしたのが良かったのだと喜んでいたの。


 でも神様は私達を見放した。


 さあ明日からは狩りに出掛けるよ。と言っていたお母さん。朝になると高熱が出て動けなくなっていたの。


 それでも数日すれば良くなるだろうと思っていた私達。でも治ることはなかった。


 家には薬が無い。そして薬を買うお金も無い。森で薬草を探しても、不浄の森にはほとんど生えていない。やっと見つけた薬草も外傷に効くものばかりだった。


 弟が不安にならないように、明るく振る舞っていたが私はもう限界だった。


 そんな時だったの。神様からお告げが来たのは。最初、私は信じられなかった。

 でも、テーブルの上に現れた箱の中身を見て、私は神様に感謝した。(見放したと言ってごめんなさい)


 見たこともない柔らかく真っ白なパン。とても甘くて濃厚なイチゴジャム。そしてオレンを食べているかのような美味しいジュース。


 三人で楽しく美味しく食べたあの日の事は、私の大切な思い出となったわ。


 そしてその夕食の時にもう一度現れた神様からの贈り物。神様は毎日食べ物を届けてくれると言ったけど、まさか二度目があるとは思っていなかった。

 何故か私でなくタルクにお告げがあったのが腑に落ちなかったけど‥‥‥‥‥


 二度目の贈り物は食べ物だけではなく、なんとお母さんの薬が入っていたの。それは私が神様にお願いしてすぐの事。神様は本当に私達を見守ってくれているのだと、私の心は暖かくなった。


 神様、先走って一つ食べてしまった事は許してくださいね。


 これで病気が治ると思った私は、お母さんの胸で思いっきり泣いてしまい、泣き止んだ後はとても恥ずかしかったわ。


 薬を飲んで寝たお母さんを起こさないように台所に行った私達。お母さんの病気が治ると私も弟も嬉しくて堪らなかった。


 そして私達は神様からの贈り物の残りを調べてみることにしたの。その中には弟が大好きなソーセージがあったの。毎年誕生日にお父さんが買ってきてくれるソーセージ。


 神様、ありがとう。


 残りの物は何か判らなかったけど、ソーセージとオレンのジュースで大満足。弟の美味しそうに食べる姿が見れて嬉しかった。


 その弟はお腹いっぱいに美味しいものを食べて、幸せそうな顔で寝ていた。このまま朝までその寝顔を見ていたいと思ったけど、寝室に連れていって私は後片付け。


 そして再び神様からのお告げが来たの。


 残りのものは食べ物?そうなんだ。私には良く判らないから明日弟に調べてもらおう。


 今日は本当に素敵な一日だった。


 神様、最高!!


 そして翌日の朝、お母さんの熱は下がり、体調も良くなっていた。神様からの贈り物の残りの食べ物で、透明の箱に入っていたものを朝食として三人で食べたの。


 茶色の食べ物はなんとお肉だった。それもとびきり美味しいの。お肉に掛かっていた濃厚なソースがこれまた美味しくて。


 麦のように見える白い粒をまとめた食べ物は、あまり味が無かった。だけどお肉と一緒に食べるととても美味しかった。


 神様が送ってくれた食べ物は美味しいものばかり。畑の作物が食べれなくなりそう。


 あとね。とっても嬉しいプレゼントがあったの。神様から。


 弟と畑の手入れをしていたら、弟に神様からお告げがあったの。(なんでまた弟?)

 薬の飲み方と贈り物について。そしてその贈り物の中にナイフがあったの。


 私は弟の手を握り、急いで家に戻ったわ。だって神様からのナイフだよ?とんでもないナイフに違いないわ!!


 私はいつものように開け辛い箱を、拳でこじ開け中を見たの。


 そこには箱と同じ素材で出来た鞘があった。これはどうなの?と思いつつも、手に取り鞘からナイフを抜いて眺めたの。


 見たことのない素材で作られた厚みの無いナイフ。刃渡りは15cmほどで、なんでも切れそうな鋭い刃をしていた。


 ウットリするほどの綺麗な波紋。


 私はもうこのナイフに釘付けになった。


 ふふふ、これがあれば私は勝つる!!


 何故か怯える弟を横目に、今までで最高の笑顔になる私であった。


 神様、服とお菓子もありがと!!

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