第4話「友達……?」



「はぁ〜〜、食った食った!」


子牛の香草焼きステーキ、若鶏の丸焼き、子牛のフィレ肉のポワレ、アボカドとエビのカクテルソース、オニオングラタンスープ、鴨肉のコンフィ、ムール貝の白ワイン蒸し、いちごの乗った生クリームのケーキ、アイスクリームを添えたチョコレートケーキ、木苺のソースのかかったチーズケーキ……好きな物をお腹いっぱい食べられて幸せだ。


正規の料金一人前の金貨三、四枚だって言ってたし、僕が人の倍食べたとしても代金は金貨六、七枚だ。


そんなはした金、侯爵である父なら余裕で払えるさ。


そうさ、僕だってその気になれば金貨の六枚や七枚を簡単に払えたんだ。今日はその……たまたま持ち合わせがなかっただけで……。


腹も膨れたし次は宿だ。


父が怒っているから今日は家に帰りたくないな。


そうだ! 友人の家に泊めてもらおう!


あいつらには今までさんざん食事を奢ってやったんだ。一日ぐらい泊めてくれるだろう。


「エアハルト伯爵家と縁を切られた?

 最悪だな!

 エアハルト伯爵にお前と友達だと思われたくないんだ、二度と家に来ないでくれ!」


「エアハルト伯爵家の令嬢に婚約破棄された?

 アーク、お前との友情も今日限りで終わりだ」


「エアハルト伯爵家に縁を切られたお前になんの価値があるんだよ?

 しっしっ! さっさとどっか行けよ!」


ヨーゼフ、マルク、ルーカスの家を訪れたが立て続けに泊まることを断られた。


それどころか門前払いされ友達を止めると言われた。


ヨーゼフは子爵家、マルクとルーカスは男爵家の令息だ。


たかが子爵家や男爵家の令息が偉そうに!


ヴェルナー侯爵家の嫡男である僕が泊まってやるって言ってるのに、なんだあの態度は!


あんな奴らはこっちから絶交だ!


四件目、子爵令息のサミュエルの家を訪ねた。


「エアハルト伯爵令嬢に婚約破棄された? アークには今まで食事を奢ってもらったから宿代は出すよ。

 だからこの金を持って消えてくれ。

 それから二度と家に訪ねて来いでくれ。今後は学校ですれ違っても他人のふりをするからな」


サミュエルにそう言われ金貨十枚を渡され門前払いされた。


何なんだ? どいつもこいつも手のひらを返しやがって!


しかし金貨十枚か、これだけあれば娼館に行ける!


娼館で遊び、次の日そのまま学校に行こう!


今日はハメを外すぞ!


このときの僕は破滅の音がすぐそこまで近づいていることを知らなかった。




☆☆☆☆☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る