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シヨゥ

第1話

​「好かれたくて生きているわけじゃないだろう?」

「まあそうだけど」​​

「なら気張らず、自然体でいいと思う」

 息苦しい毎日に耐えかねて相談するとそんなことを言われた。

「自然体のお前を受け入れられない場所ならその場所が悪い。今すぐに出ていくべきだ」

「場に合わせるのも大事だと思うけど」

「それは程度によるだろう。お前は十分に自分を殺して合わせようとしたんだろう?」

「それはもちろん」

「っで苦しいわけだ」

「そう」

「ならやっぱり出ていくべきだ。ある程度努力してもダメなら見切りをつけるべき」

「そういうもん?」

「そういうもんだ」

「そっか」

 今までの努力が無駄になったように感じられて力が抜ける。

「大丈夫だ」

「本当に?」

「場所なんて無数にある。それにこれまで努力出来た実績がある。実績は武器だ。次の場所で役に立つだろうよ」

「そういうもん?」

「そういうもんだ」

「そっか……それじゃあ、頑張ってみるか」

 言葉ひとつでこうも闘志が湧くとは思わなかった。グッと拳を握り直し、前に進もうと決意するのだった 。

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