『天から祝福されているか?』
やましん(テンパー)
『天から祝福されているか?』
『これは、フィクションです。しかし、内容は、ギャグでもあり、ホラーでもありますが、いずれ、このような行動は、けして、してはなりません。』
ぼくは、ついに、結論に達した。
ぼくは、天から祝福されていない。
西欧で、まず資本主義が発展できた背景には、カルヴァン派などの、ベルフス・イデーがあった(職業召命観と申します。)、とされる。
と、いうのは、社会学者、マックス・ウェーバーさまが見抜いたところだ、と、学校で教わったような気がする。
いささか、倒立した話にはなるが、ならば 長きにわたった職業生活で失敗し、周囲からは、受けいれられなかったまま、社会から身を引き、奥さんとも別居している自分は、天から祝福されているとは、言えないのに違いない。
しかし、最後に試験を受ける価値くらいは、まだあるかもしれない。
あの、『釜茹での崖』、から飛ぶのだ。
生還率は、4割弱とも言われる、きわどい崖である。
もし、生き残ったら、祝福はされていないが、否定はされていない、と、ならないだろうか。
まあ悩んでいては、ことも進まないから、すでに、ぼくは崖っぷちにある。
暗闇が近いが、まだ、周囲は見渡せる。
美しい、とまでは言えないけれど、人によって、ひどく汚染されてもいない場所だ。
下には、むろん、誰もいない。
崖の下が、釜のような形に見える。
が、こうしていても、後ろから声を掛ける人も現れない。
もちろん、華厳の滝から飛んだ、藤村氏のような、万人が認める、有意な人物にして、ついに助けは入らなかったのだが、それとこれとは時代も、訳も違う。
そうではないのだ。
これは、あくまで、ただ、役立たずな個人の問題である。
天から祝福されていたい、いや、関係ない、とか、認識するのは、個人のありかたであろう。
ぼくは、もう一度、下を見た。
すると、地の底から、無数の真っ黒な集団が駆け上がってくるのだ。
しかも、背中に、なにやら、背負ってるのもいる。
アンテナらしきも見える。
『人食いごき軍団だ!』
新しい時代を画策する、ごき軍団の精鋭である。
冗談じゃない、連中に喰われては、かなわない。
ぼくは、駐車場の自動車に逃げ帰った。
間もなく、連中は、大挙して崖を占領し、頑として動かない姿勢であるだけでなく、こちらに迫ってくるように、わざと威嚇しているらしい。
そうして、闇が支配する直前、あのカージンゴが、フロント・ガラスの前に降りてきて、あほかー、と鳴いて、飛び去った。
どうやら、ぼくは、天から祝福されているとは思えないが、なんだか、地の底からの救いの手が伸びた、のかもしれないと、感じたのだ。
電話が鳴った。
『はやく、帰れにゃ。』
と、ねこママが、あっさりと言った。
辺りには、キリが立ちこめ始めていた。
ぼくは、少し、ほっとしたような感じもあり、殺伐とした意識のなか、車を走らせて、山から降りてきて、小さな川沿いの公園のほとりを町に向けて走っていた。
何台かの乗用車にすれ違ったが、この辺りには住宅もかなりあり、あまり気にはしなかったのだ。
ねこママに、なにか感謝とか、言わねばならぬ、とは思うが、果たしてどんな顔して帰るのか。
そこは、かなり、問題である。
ゲーテ氏や、ベルリオーズ氏も、自殺を考えた瞬間があった。
しかし、懸命(賢明でもある。)にも、我にかえり、行動はしなかったという。
結局、夜半過ぎに自宅に帰り、店にはゆかずに横になった。
なにかが、周囲にいるような感じがしたが、電灯はつけたままだったし、なにも見えはしなかった。
テレビでは、深夜のオカルト番組をやっている。
もし、いま、感情をさらけ出したら、きっと危ないのではないかと、自分ながら思ったりもしていた。
人食いごきではない、通常部隊のごき兵が、室内の要所にかくれて観察しているなど、思いもしていなかった。
びーちゃんは、今夜は来ない。
だから、この晩を狙ったのだし。
夢の中で、派手に泣いた。
❇️
いつの間にか、寝てしまっていた。
ねこママも、人食いごきも、これは、もちろん、夢の中のお話しであるに違いない。
それにしても、いったい、どのくらい、どう寝たのか分からないが、時計を見れば、昼はとっくに過ぎてしまっている。
スマホを掴んで、片目で、新しいニュースを見た。
『けさ、通称、釜茹での崖で、飛び降りたとみられる遺体が発見されました。何かに食べられたような形跡があり、警察では慎重に調べています。』
😸ニャンハ、キラワレテモイキル❗
『天から祝福されているか?』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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