モテモテ!? 全裸電マ男を襲う求愛の嵐!

 ネリネが伝馬を襲っていると、


 「「「「ブルット・フルエール様~~~~!!!」」」」


 伝馬はネリネの頭越しに、遠くから四人の隊員とシオンがこちらに駆けつけてくるのを見た。四人とシオンは傷つき汚れていた。しかし走ってこれるということは、そこまで酷い怪我ではないのだろう。


 (よかった、皆無事だったんだね……)


 と、ホッとしたのも束の間、


 (あ、でもこの状況、マズくない!?)


 伝馬は裸。そこに女が抱きついている。間違いなく誤解を生む状況。


 「ちょっ、ちょっ、ネリネ! 離れて! 皆が来るよ! 変に思われるよ!?」


 その言葉に、ネリネは一瞬考えたような顔をしてから、


 「じゃ、いいじゃない。好都合だわ。既成事実、作っちゃいましょ」


 なんて言い出して、服まで脱ごうとしはじめた。


 「だああぁァァァッ!? 何してるんだ!?」


 さすがの伝馬もこれにはパニック。思わず電マのスイッチを入れ、



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 「あうううぅゥゥ~~~~~~んんんンン………………」


 強引にネリネを止めた。

 嬌声を上げ、がっくりと力なく、相変わらず幸せそうな顔でぐったりするネリネ。


 (思わずヤっちゃったけど、ヤリすぎだったかな……?)


 思わず女性に電マを当てるなど、世間一般常識では絶対にヤってはいけないことだが、異世界は世間一般常識ではないのでセーフ。

 伝馬は、とりあえずそこにネリネを寝かせておき、股間を隠しつつすっくと立ち上がり、四人の隊員とシオンが来るのを待った。

 四人とシオンが伝馬の元へとやってきた。五人は全裸の伝馬を間近で見て、目を見開き、マジマジとその肉体を舐めるように見回した。


 (うぅぅ、恥ずかしい……。やっぱり全裸って変だよね……)


 十個の瞳が伝馬を凝視する。場違いな格好に対して目で責められていると思った伝馬だが、それは違う。なぜなら彼女らの目は一様に異様な輝きを帯びているから。それは怪訝というよりも好奇心に満ち溢れていた。好奇心は好奇心でも、知的な方ではなく痴的な方の。

 そして、次の瞬間、


 「や~ん可愛い!」


 「肌すべすべで赤ちゃんみたい!」


 「触っちゃお!」


 「食べちゃお!」


 そんな言葉を吐きながら、四人の隊員たちが伝馬へと飛び込んできた。

 しかしそこは伝馬、ついさっき同じ経験をしただけに対策はバッチリだ。



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 幻の四連電マ炸裂! 相手は死ぬ。


 いや、死にはしない。恍惚になって幸せそうにぶっ倒れるだけだ。命や健康に別状はなく、むしろこのおかげで彼女らの傷は癒やされ、回復した。


 「よかったぁ、ボクはいかなくて……おかげでテンマと二人っきりだ……」


 シオンがボソッと呟いた。


 「ん、何か言った?」


 「ううん、なんでもないよ!」


 突発的かつ一時的な難聴や鈍感は主人公によくある話。


 「そんなことよりテンマ、下の小テンマが見えちゃってるよ」


 にやにや笑って小テンマを指さすシオン。


 「おぅわッ!?」


 慌てて電マで隠す。その際にやっぱりリトル伝馬の先っちょに触れちゃって、


 「おぅふっ」


 全身を駆け巡る快楽に抗いながらスイッチを切った。


 「はぁ……はぁ……」


 「あはは、めちゃくちゃ慌ててたね~」


 「あははは……」


 笑うシオン。伝馬も笑った。伝馬はもう笑って誤魔化すしかなかった。


 「ねぇ、ところで……」


 シオンの目が急に怪しい光を帯びる。なにやら訝しむような顔で、伝馬を見つめる。


 「な~んで裸なのかな~? ひょっとして、そこに幸せそうに寝てるネリネと、何か関係あったりしちゃって~……」


 「ううん、ネリネは関係ないよ。気がついたら裸だっただけで……」


 言ってる途中で、自分の言葉の奇妙さに伝馬は首を捻る伝馬。


 「え? どーゆーこと?」


 「いや、それが全然わからなくて……う~ん……」


 「まさか、ネリネに襲われてッ!?」


 「違うって、ネリネは関係ないんだよ」


 「……怪しい。なんでそんなにネリネをかばうの?」


 「え?」


 「ひょっとして、ネリネとシた!? 激しい戦いの後で未だ静まらない高揚と熱情の中、勝利を分かち合うため本能の赴くままに互いを貪りあったの……!?」


 「んなわけないじゃん……」


 シオンのおかしな妄想には、伝馬も呆れかえるしかない。


 「そんなことより『闇堕ち』はどうするの? あのままほっといていいの?」


 「あ、そうだね!」


 伝馬の数メートル後方で幸せそうな寝顔の露出狂闇堕ちへと、シオンは歩いていった。闇堕ちの両手を取ると、無数の文字が刻まれた手錠をその手首へとハメた。

 その様子を、伝馬はすぐ後ろから見ていた。


 「手錠?」


 伝馬が聞く。


 「ただの手錠じゃないよ。魔力を抑制する手錠さ」


 「へぇー、なるほど」


 魔術を使う犯罪者には、それ相応の手錠が必要なのだ。


 「さて、闇堕ちも無事逮捕したし、一件落着ね!」


 シオンが子供っぽい満面の笑みを伝馬に向けた。つられて、伝馬もにっこり笑った。


 「ありがと、テンマ。キミのおかげでボクは晴れて貴族の仲間入りが果たせるよ!」


 その臆面もない言い方に、伝馬も苦笑を隠せない。


 「お役に立ててなによりだよ」


 珍しく皮肉めいたことを言う伝馬だが、シオンには通じてなかった。シオンは満面の笑みのまま、そっと伝馬へと近づいてきて、


 「これはお礼ね!」


 そう言ったかと思うと、


 チュッ!


 不意打ちに伝馬の唇を奪った。

 剣の達人に斬られた者は、斬られたことにしばらく気付かないという話もあるが、今まさに伝馬も同じ感覚を味わっていた。それだけシオンの不意打ちは唐突で鮮やかで自然だった。芸術的な匠の技だった。


 「テンマ、ボクね、もっともっと出世するよ。出世し続ければ、いつかキミに相応しい女になれると思うんだ。そのときには、テンマをボクのおムコさんにしてあげるね!」


 「あ、そっちなんだ……」


 おヨメをもらうのではなく、おムコに行く、それが男より女性の方が圧倒的に強い世界の常識だ。


 「そのときまで、テンマはボクを待っててくれるよね……?」


 伝馬は答えない。呆気にとられて答えられない。しかし無言は時として肯定と都合よく受け取られてしまう。


 「ありがと! やっぱり私が見込んだ夫だよ! ボク、婚前交渉はしない主義だから我慢してあげるけど、でも、なんだかテンマが可哀想だから……」


 そう言うとシオンは突如、伝馬のアメリカンクラッカーを掴んだ。


 むんず、と。

 もぎゅっ、と。

 がっちり、と。


 「これがほんとの、なんてね……!」


 にっこりと笑いながら、とんでもないことをのたまうシオン。

 伝馬からすれば痴漢ならぬ痴女。五人の姉に揉まれまくってきたさすがの伝馬もこれは初体験。その顔が驚愕に引きつり歪む。

 普段は温厚な伝馬もこれにはタマらなかった。タマだけに。


 すぐに電マを起動すると、



 ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!



 セイギの鉄槌を容赦なくシオンへとぶち当てた。痴女、ダメ、絶対!


 「あややややややゃゃャャャぁ~~~~~~~~~いいィ~~んんん……………」


 シオン、嬌声を上げ、幸せそうに撃沈。痴漢や痴女は絶対に許さない、それが伝馬のジャスティス。

 しかしこれでシオンの傷は癒え、疲労もとれるので、これはこれで必要な措置だったかもしれない。

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