伝説の魔剣、略してデンマ!? 伝説の魔剣だか電マだかわからないけど、キノコ型の振動するヤツで異世界をイきヌきます!!! ~電動マッサージ機は伝説の魔剣の夢を見るのか~
ヤバい! ドラゴンだ! 伝馬! ダイブ! 電マ使って幼女を守れ!
ヤバい! ドラゴンだ! 伝馬! ダイブ! 電マ使って幼女を守れ!
朝が来た。
日の出と同時に伝馬とネリネは起床した。二人はイジュを起こさないように支度をした。支度を終えると、
「テンマ、イジュをよろしくね」
「任せて! そっちも気をつけてね」
伝馬はネリネを見送った。
それからしばらくして起きてきたイジュに、
「イジュ、予定が変わった。ネリネは先に行ったけど、僕たちは一旦村に戻ることになったんだ。さ、そこにある朝食を食べたらすぐ支度だ」
イジュは頷いた。相変わらず、伝馬の言う事なら素直に聞いてくれる。
朝食を食べ終え、支度を終えたあと伝馬とイジュはすぐに山小屋を出た。昨日来た道を戻り始めた。
二人とも、ちょっとしたピクニック気分だった。雲ひとつない晴天が広がり、空気も清らか、鳥のさえずりも心地良い。二人は適当な雑談をしながら洋々と山を降りてゆく。
が、村まであと一時間というところでにわかに曇り始めた。風も出てきた。
(山の天気は変わりやすいって本当だね……)
伝馬は楽観視していた。もともとが楽天家だし、それに村まであと少しだ。道もわかりやすくくだりやすい一本道。不安な要素は皆無。たとえ嵐になったとしても、
(多少遅くなるかな……)
程度にしか思っていない。
ところが、
「テンマ、なんか、嫌な魔力がする……」
イジュが言った。声が震えていた。
「嫌な魔力?」
イジュの顔を覗き込む伝馬。表情が不快げにこわばっている。
伝馬は魔力を感知できない。だからこそ、伝馬はイジュの言葉を信用している。
(僕には何もわからない。けど、イジュがそう言うなら、きっとそうなんだろう)
昨夜、ネリネが言ったことが、ふと頭に浮かぶ。
(イジュが感じている嫌な魔力って、ひょっとして闇の魔力か……? 『闇堕ち』が近くにいるってこと……!? なら、僕がイジュを守らないと!)
伝馬は腰の電マを抜いた。危険を感じると突然電マを取り出す男、それが伝馬。
決してトチ狂った変態男ではない。なぜならこの世界で電マはとっても強いから。絵面はともかく、騎士が姫を守るために剣を抜くのとなんら変わりない。
雨が強くなってきた。風も勢いを増してきた。空は更に暗くなり、不気味だ。
「テンマぁ、怖いよぅ……」
何かを感じ、恐れ、伝馬にしがみつくイジュ。
「大丈夫だ、僕がついてる」
イジュの小さな肩にそっと手を置く伝馬。その片手には電マ。これでも異世界では心温まる光景なのだ。
そのときだった、
空からとてつもなく大きな唸りが聞こえ、辺り一面に鳴り響いた。
(こ、これはッ……!?)
空を見上げる。雷ではない。伝馬には聞き覚えのある唸りだった。初めて異世界に来た直後、伝馬はこの唸りを聞いた。
「く、来る……!」
伝馬は空を見上げた。曇天は突然切り裂かれ、そこから真っ直ぐに降り注ぐ陽光とともに、それが姿をあらわした。聞き覚えのある咆哮とともに。
「ドラゴン……!」
鱗の肌、鋭い爪、巨大な牙、雄大な翼を持つそれは、伝馬とイジュ目掛けて一直線に、猛スピードで降りてきた。
(デカっ! ヤバっ! コワッ!)
伝馬はめちゃくちゃビビった。チビりそうなほど。二度目の邂逅だが、そもそもクマだろうが、トラだろうが、何度遭遇しても恐いものは恐い。無理もない、伝馬は電マを持っている以外は、ただの一般男子高校生なのだから。
しかも今回のドラゴンは、最初に出会ったやつよりも一回り以上デカかった。
「テンマぁ……!」
イジュは伝馬よりビビっていた。泣きそうな顔で伝馬にすがりついた。ネリネやマロニエに匹敵する魔力の持ち主といっても、所詮まだまだ子供。
怖がる少女の存在が、電マ少年を奮い立たせた。
(イジュを守れるのは僕しかないんだ! 僕がビビってどうする!)
伝馬は五人の姉に守られて育ってきた。年長者が年少者を守るのは、この電マ少年にとってはアタリマエのこと。
「大丈夫だ、僕がいる!」
伝馬が微笑む。イジュは頷く。かっこよくて、頼りがいのある微笑みに、イジュは安心と同時に胸が熱くなった。こんなときに、いや、こんなときだからこそ、イジュは伝馬に強く男を感じたのかもしれない。
直後、ドラゴンが超低空飛行、伝馬の頭上わずか数センチを飛びすぎ、宙返りした。巨体の威圧感と凄まじい風圧が二人を襲う。
イジュを気にするあまり、伝馬は電マでガードすることを忘れてしまっていた。
「きゃあっ!!」
「うっ、ひぃぃぃッ……!!!」
イジュよりもはるかにくっそ情けない悲鳴を出してしまう伝馬、イジュを抱えながらごろごろ転がった。さっきのかっこよく微笑んでいた伝馬は一体どこへ消えた。
宙返りしたドラゴンはまた急降下、今度は伝馬の頭上数メートルのところで翼をめいっぱい広げて急停止、ホバリングに移行した。ホバリングの風圧も凄まじい。吹き飛ばされそうになる二人。
「くぅっ、そうだ、
伝馬はようやく電マを思い出した。カチッとな。
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
激しく振動する電マ。片手で風上に向かってかざす。振動が風をなんとか打ち消すも、わずかに遅かった。電マが遅れた分、御しきれなかった猛風がもろにイジュを襲った。凄まじい風が電マ少年の手からイジュをさらってゆく。
「きゃあ――――」
吹き飛ばされるイジュ。風はその悲鳴すらかき消す。
「イジュ!!!」
伝馬の声も風に消され、イジュの耳に届かない。二人の耳にはもはや風の音以外何も聞こえない。
背後でイジュが、木の根本につかまったのが見えた。小さな体で風に耐えている。しっかりしたもので、手にはまだ杖がちゃんと握られている。イジュの口がパクパク動いていた。
テンマ、助けて。
そう言っていた。
(小さな子どもが助けを求めているんだ! いかないわけにはいかないでしょーーッッ!!!)
伝馬は駆け出した、というより風でほとんど転がっていた。ころんころん風で転がりながら、伝馬はイジュの元へと向かった。
わずか数メートルまで近づいたとき、
「―ンマ、―げ―!」
イジュの叫びは風に消され、伝馬の耳に届かない。
「大丈夫! 僕が絶対に守る……」
伝馬、イジュの上へとダイブ。他意はない。イジュを風から、そしてドラゴンから身を挺して守ろうとしただけ。あくまでも善意。
電マ少年がイジュに覆いかぶさろうとして、とっても危険な絵面になりかけたそのとき、
伝馬の背後直ぐ側に、巨大な影が迫っていた。
ドラゴンだ。その鋭い爪が、幼女に飛びかかる変態、もとい伝馬の背を襲った。
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