伝馬、電マに気付く!
さて、イジュがいなくなった。すると今度は伝馬が電マを弄る番だった。イジュに触発されてしまっていた。
(さーって、じっくり楽しませていただきますか……!)
伝馬の顔がなんだか怪しい感じだが、ただ電マの先っちょを触るだけである。
まず指先で触れてみた。
「おっ……」
いい感じだ。スベスベとなめらかで、適度に柔らかい。曲線部をなぞると、またそのラインが気持ちいい。
(こんなにいい感じだったのか! ふむふむ、なるほどなるほど。イジュが夢中になるわけだ……)
なにがどうというわけじゃないが、とにかく気持ちよかった。伝馬はひたすら触った。握ったり、てのひらで包んでみたり、撫で回したり、こすったり、つまんだり、弾いたり、滑らせたり……。
早朝から野外で電マをいじくり回す男子高校生。異世界だからまだセーフだが、リアルにいたらかなりヤバいヤツ。
(ふ~ん……)
だが、数分後には飽きてしまった。というより物足りなさを感じた。それはそうだ。電マはそういうものじゃないのだから。
(
いじくり回したおかげで伝馬、電マの真の能力に近づきつつある。
伝馬はスイッチに指を置いた。
しかしためらった。恐怖もあった。
ネリネやマロニエ、そしてアラカシとモブ一人、これら四人が緩みきった顔をしてくにゃくにゃと崩れ落ちるくっそ情けない様を見ている。自分も同じ末路を辿る可能性があることを思うと、簡単には手は出せない。
「むむむむっ……」
しかし、スイッチを入れてみたい。電マを見ていると、スイッチを入れろと語りかけてきているような錯覚さえある。だけど、怖い。
伝馬は激しく葛藤した。葛藤が彼の顔を凄まじくした。朝っぱらから納屋の前で電マを凄まじい顔で見つめるとんでもないヤベーヤツになっている。元の世界なら通報不可避だが、ここは異世界、そこは安心していい。元の世界でも事件性がなければ職質で済むだろうが。
(ええい、ままよッ!)
伝馬、電マの誘惑に負けた。おもむろにスイッチを入れた。
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
唸る電マの先に触れる。ビビる伝馬、が、
(あれ……?)
危惧したようなことは起こらなかった。ただ振動が電マから伝馬の手に伝わってくるだけだ。
(なぜだろう……? ま、いっか。変なことにならなくて良かった。さっきのアラカシみたいなことになっても困るしね。ふふっ)
思わず、思い出し笑いする。
あのときのアラカシ、アホ面晒して、快感に身を捩らせ、バテたカエルのようにひっくりかえる様子は、今思い出しても面白い。
しかしなかなか凄い振動だ。触れる指先がとっても気持ちがいい。
(あの柔らかで優しい手触りに振動が加わると、こんなに気持ちがいいのか! う~ん、なんとなく癒やされるような……)
当然だ。今はじめて伝馬は、正統かつ真正な使用法を実践しているのだから。
癒やし効果の程度を確かめるべく、伝馬はさきほどウォーターショットガンを食らい、まだかすかに痛む部分にそっとあてがってみた。
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
「お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」
変な声が出た。そしてと~っても気持ちが良かった。
接触点がじんわり温かくなる。温かさが波のように全身へと波及する。振動を伴った温かさが、患部だけでなく、全身の疲労感すら癒やしてゆく。
しかし一番は接触点だ。電マが触れるその部分が、何より一番気持ちがいい。
(あぁ……なんてことだ……あんまりにも気持ちよすぎる……)
身体の凝りや疲れが解れると、思考まで解れてしまっていた。今、伝馬はほとんど何も考えられなかった。考えたくもなかった。ただ電マの快楽をその身で享受し続けたかった。
今の伝馬は、傍から見るとアブないヤツだった。快楽に呆けた顔、愉悦に半開きの口の端からよだれがのび、全身は茹でた素麺みたいに緩みきっていた。そのくせ電マを持つ腕だけが、
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
ヴヴヴヴヴイイイィィ~~~~~~ンンンンンン……………!!!!
電マだけが、忙しなく全身を駆け巡っている。
電マが走るごとに肉体を駆け巡る快感に夢中になる伝馬。もう目の前にアラカシとモブ一人を運び終えた四人が帰ってきていて、恍惚となっている伝馬を不思議そうに見下ろしていることにも、ちっとも気付かなかった。
「あの、もどりました……」
そのうちの一人に話しかけられて、
「あ、あ? あ! ああっ……!! お、お、おかえりっ!」
ハッと正気を取り戻した伝馬、慌てて電マのスイッチを切り、腰に差し込んだ。
「ご、ご苦労さまです! あ、結構時間経っちゃいましたね! さあっ、遅れないように早く始めましょう!」
伝馬、恍惚の表情を見られたのがやけに恥ずかしかった。電マで一人、快楽に耽溺しているところを見られたら、誰だって恥ずかしいものだ。それをごまかすために、農作業を始めるよう促した。
「は、はぁ……」
四人は一瞬顔を見合わせたが、それだけだった。この四人は、まさか伝馬が早朝から野外で電マを使い、意識が飛びかけるほど快楽を貪っていたとはつゆほど思わなかった。
伝馬の電マ遊びはここで一旦お預けになった。
ほどなくして四人の男たちによる農作業実習が始まった。農作業はなかなかハードだったが、
(結構きつい作業のはずなのに、あんまり疲れないなぁ。それになんだか身体が軽い……
伝馬、ようやく電マの本当の力に気づいた。
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