第39話~公園での再会・Part1~
俺は四十代を日々楽しんでいる一人のサラリーマンだ。
普段は会社で営業部長をしており、取引や営業活動など、仕事としては大変だが、それほど裕福な生活をしている。
しかし、俺には昔一人の愛する女性がいた。
その女性とはたまたま知り合いのバーで出会い、そのまま交際・結婚へと発展したのだが、お互いが会社のかなり重要な役職を務めていたため、すれ違いとなり、結婚三年目で離婚届けにハンコを押した。
そこから、もう二年は経つが、未だに彼女のことを忘れたことはない。
今は元気にしているのだろうか。幸せな日々を送れているのだろうか。そんなことが頭に過りながらも、今日は公園で一人コンビニ弁当を片手に、ベンチで食事をしていた。
すると、近くから自分を呼ぶ声が聞こえた。
ふと目線を向けると、そこには前の妻である〈百合子〉が立っており、こちらを微笑みながらも見ていた。
「百合子、なんでここに」
どうやら、この近くにお得意様の会社があるらしく、そこに用事があったため、この近辺を訪れていたのだと言う。
こんな偶然があってもいいものだろうか。いや、これは偶然ではない、奇跡だ。
最近まで百合子のことを頭に過りながらも生活をしている矢先に、こんな奇跡の再会が訪れた。
これは嬉しいと思いながらも
「元気してた?」
と聞くと、百合子は微笑みながらも頷いた。
そこからしばらくベンチで隣同士になりながら、世間話をし始めた。
どうやら、離婚したときから彼女は独身であり、彼氏も作らなかったと言う。
彼女はとても優しく、とても社交的な女性でもあるため、こんなことを言うのもあれだが、既に彼氏は出来ているとばかり思い込んでいた。
だが、彼女も彼女で仕事が忙しく、あまり恋をしている暇もなかったのだが、最近になり、経理部長から出世をしたらしく、昔みたいにかなり忙しくはなくなったため、今は再び恋をしてみようと考えていると話してくれた。
それを笑顔で話す彼女を横で見ながらも、俺はついポロリとこういった。
「やり直さないか?」
それを聞いた彼女は、驚きながらもこちらを見た。
「俺さ、ずっと百合子のことが心配でさ、ちゃんと食べているのだろうか、ちゃんと寝ているだろうか。あの時はお互い忙しくて、ほぼ楽しい生活なんて出来なかった。こんなこと言うのもバカかもしれないけど、俺、百合子のことが忘れられなくてさ。いつかまた会えると思っていた矢先だったんだよね」
だが、こんなことを言ったところでどうにもならない。俺たちは一回離婚をしているため、言っても無駄だと思い
「ごめん、今の話忘れて」
そう言って立ち上がろうとすると、百合子は俺の腕を掴んできた。
これで分かった。恐らく彼女も寂しかったのだろう。これで全てを理解した俺は、彼女の手を握ってから
「もう離さないから、もう百合子の傍からいなくならないから」
しばらく経ってから、俺たちは再婚した。
~終~
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