ショートストーリー集「人間」
柿崎零華
第1話~満員電車~
日本には、とても面白い朝の風景がある。
外国から見れば、とても面白いというか、神秘的な光景に見て取れると思う。
しかし、我々日本人からにしてみれば、とても窮屈で言葉を悪く言えば、地獄のような時間である。
一人のサラリーマンが毎朝、最寄りの始発駅から電車に乗り込む。しかし、今日は何故だが、席が全て埋まっており、一つショックを覚えた。
いつもは普通に座れるのに、今日は座れない。一つの神様からのいたずらだろうか、そう思っても仕方がない。何故なら、いつもは座れるからである。
でもここからが本当の恐怖が始まる。
自分は、十駅数えた先に勤め先があるため、座っても座らなくてもどちらでもいいと最初は思った。
だが、この電車はとても利用者が多いため、次の駅から既に満員のような状態になる。それが一番ネックなことである。
満員電車の何が厄介かと言うと、まるで相撲の力士のように人が押し付け合う。当然苦しいため、動こうとするがそれでまた、二次被害が発生する。
自分はそれで何回スーツやネクタイをぐちゃぐちゃにされたサラリーマンを見ただろうか。
それはお察しするしか方法は無かったが、一つ気になった事があった。それはそのサラリーマンは、何事もなかったのように駅を降りて行ったのだ。
何が言いたいかと言うと、慣れたら喜怒哀楽はある意味無くなってしまう。なんでこんな思いをしなきゃいけないという怒りの気持ち、こんなことをするためにサラリーマンになったわけじゃないという哀しい気持ちなど、様々な感情になると思う。
何故かというと、早くこの場から抜け出したいという気持ちから、慣れたという感情になるときは、ほとんど無になってしまう。
ある意味それが怖いものだ。
でも満員電車を自分はいつも利用する度に、一つだけ楽しみにしていることがある。
それは人間妄想観察である。
一人のサラリーマンを見ていると、恐らくこの男性は部長に嫌ことイヤミを言われているのだろうなとか、このOLさんは、彼氏に振られて夜な夜な泣いたのだろうな
傍から見れば、変人だと思われてもおかしくないのだが、一言言わせてもらえれば、こんなことをしないと、ある意味楽しみがないのだ。
満員電車ほど、楽しみが無に近いことはない。
だが、皆様に一つだけ言えることがある。
満員電車ほど地獄だと思う状況がないと思ったあなた、この満員電車を乗り越えれば、恐らく人生でのきついことが楽に思えてくることがあるはずです。
きついのはみんな一緒、そもそも人生、みんな満員電車です。
電車に乗っている時は、困難や苦労を詰め合ってそして、早く抜け出したい、所謂降りたいという気持ちになります。
そして、電車から降りたときはみんな幸せな気持ちになります。それが人生という一つの道であり、線路でもあるんです。
それもこれも例えがおかしいと思いますが、自分はそう思います。
そう思いながら、今日はこのサラリーマンと一緒に、人生という旅を続けたいと思います。
~終~
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