話外 皇后のマリーのほうが強いって? 前編

 最近のロイヤルファミリー(私とマリーと上皇陛下ママ)の噂について。

 魔帝たる私ことカミラより皇后のマリーのほうが強いのではないのかという噂。

 なお上皇陛下ママと私とマリーとの関係は至って良好です。えちえちしちゃうくらい。


 ともあれ。


 魔族は強さをまず是とする種族である。


 噂の原因は南方連合国家バンドオブヴァンズとの侵略と逆侵略の一件だった。


 私は直下の魔帝騎士団10万人を動員し、広域移動用ダンジョンゲートを生成、妻のマリーとかの連合国軍を迎撃するためガロー辺境伯領へと向かった。


 その後、私は勇者と対決したのだけど。


 うん、たしかに対魔族特化チート持ちの彼ら勇者を私はケチョンケチョンにした。

 あと彼らの背後にいた女神を捕まえてある種の交渉し、こちら側につけさせた。


 だけど人々はもっと視覚的に分かりやすいものを求めるものだった。


 帝王政治哲学。


 民は個人レベルでは賢くても、集団となった民は愚者となりやすい。

 ゆえ、民は自分たちで解釈のしやすい、要するにわかりやすさを求める。


 皇后マリーは元祖の吸血鬼としての奥義、ブラッドレインでバンドオブヴァンズの兵たちを全員一気に吸血鬼化させ、我が軍へ強制的に寝返らせた。


 敵だった軍隊が、瞬時に丸ごと味方に。

 このインパクトの大きさ、言葉を重ねずとも即おわかりになられるだろう。


 その後、連合国盟主国へ彼ら寝返り吸血鬼を投入、大戦果を得たのだった。

 もちろん命令を下したのは私だ。しかし寝返らせたのはマリーの力によるもので。


 ふむ。


 別に治世が安定するならどうでも良いけれど、帝国最強ゆえに魔帝となった私としては存在意義を問われる事案となろう。それがどうしたという感じでもあるけど。


 さて、さて……。


 私とマリーはよくあるように、自室のベッドで百合百合していた。

 お互いにスケスケな白の超えっちぃべビードールを着て、ちゅっちゅである。

 下着はつけず、そして素足。触れ合う身体。さらさらとした触感。


 これが燃え上がるのよ。スケスケはえっちくて正義!


 もちろん側室たちはいない。


 マリーとの営みはマリーだけでちゅっちゅする。たまに上皇陛下が混じることもある。が、私は少なくとも側室は呼ばない。これが私としての筋の通し方だった。


 事後。


 二人手を繋ぎ、シーツの乱れたベッドで仲良く並んで寝転んで。


 スッとこちらに抱きついたマリーは私の耳たぶをほぷっと口に含み、囁いてくる。



「カミラのほうが圧倒的に強いのに、この状況は災いの種が芽を出しかねないわ」

「この状況って?」


「私のほうがカミラより強いって」

「尻に敷かれるくらいが夫婦として円満」


「……うん。それも真実かもだけど」


「にゃふふ♪」


「もー。わかってるの、カミラ」

「じゃあマリー、第五代魔帝になるにゃし」


「……カミラ?」

「ごめんにゃさい」


「もー。罰としてお口を開けて舌を出して」

「うん。マリーの唾液、甘くて好き」

「私もカミラの唾液、甘くて好きよ。ん、ん……はあ、はあ、ん……」

「マリーの舌、みゅ……えっちな動き……ちゅっちゅ……」



 罰じゃない、罰を受ける。こんな罰ならいつでもウエルカム。

 ただの百合百合ちゅっちゅである。ここだけの話、ベッドの下にはセラーナが。


 そうやって心行くまで事後の百合ちゅっちゅを楽しんで。



「……何か打つ手はないの?」


「あるよ。というか意図していたからね。魔帝のお嫁さんもつおいって」


「えっ、まさかの想定内なの?」

「うん。そしてこれに繋げていくわけ」



 私は空間収納に手を突っ込んでゴソゴソとあるものを探した。そして取り出す。


 手にあるのはとある企画書だった。



「……魔帝杯、帝国最強バーリトゥード?」

「お祭りの企画ね。にゃあの治世一周年記念を祭りとして計画しているの」


「バーリトゥードって、何?」

「何でもありの闘技会だねー。ノックアウト、棄権、または相手を殺害で試合終了」


「うわぁ、過激。いかにも魔族らしいけど」


「まあ殺害しても死なないけどねー」

「というと?」

「まず会場全体をダンジョン化させるから」

「えーと……?」


「致命傷を受けたら即時救護施設へ強制転送されるの。で、肉片からでも復活」

「な、なるほど。ダンマス権限を使うと」


「優勝者は栄誉に加えて賞金とその者が使う系統のエンチャント武器を下賜する。あと、にゃあとエキシビジョンマッチができるにゅ。勝てばそいつが五代目魔帝!」


「勝てたら……ね?」

「そうそう、勝てたらね。みゅふふ」


「正直なところ、優勝者がカミラと戦う権利を得てもそのヒトが勝つ確率ゼロよね」

「宝くじの一等賞を10連続で当てるくらいの確率でワンチャンあるかなー?」



 そういう企画書なのだった。

 そして実は、既にこの企画は内々に実行されていて。


 予算の制定から始まり、新たな宿泊施設、挑戦者トレーニング用ダンジョン、警備計画などなど、様々な準備が水面下で着々と動いているのだった。



「ちっとも知らなかったわ……」


「もう少し形になってから言うつもりだったのよ。ある程度形にならないと面白くもなんともないもん。こういう類ってともかく準備準備のまた準備だからねー」


「皇后としては初めから知りたい気持ちよ」


「純粋にお祭りを楽しんでもらいたかったから。今度からは初めから言うにょ」


「うん」



 そんなこんなでお祭り当日。え? 展開早いって?

 だって準備を話し出すと……話が終わらなくなるからね……。



『カミラ・マザーハーロット・スレイミーザ四世杯、帝国バーリトゥード闘技大会』



 優勝者は栄誉と賞金と特性に合わせた神器相当武器を魔帝自らがの生成、下賜するのは先に語った通り。魔帝とのエキシビションマッチ権も同様。希望者には魔帝直下の騎士団に爵位つき入隊も可能とする。ちなみに爵位は最低でも騎士爵となる。


 なお、魔帝カミラが招待した各世界の主神があなた方の戦いをご覧になられます。


 大々的に喧伝したら、すごい反響だった。


 帝都内の宿泊施設は期間中帝国が借り上げて食費を含めて全て無料。

 闘技会は一勝するたびに賞金が出る。

 死んでも特別施設に瞬時に移送、完全復活できる。なので安心して戦って欲しい。

 予選を勝ち抜き、ベストエイトからは好みの特性を複数付与したアクセサリを授与。なお、勝てば勝つほど付与深度が上がり、高性能化する。単一特化も可。


 大盤振る舞いなので反響がないはずがない。開催1週間前(宿が無料になる)から大入りのお祭り騒ぎ。治安維持に私の想像魔法『STAINLESS (K)NIGHT』を一万体ほど出動させるほどだった。なお、騎士のレベルは平均2500万なり。


 しかも各世界の神さまも呼んだもんね。

 遊びに来てねって。


 神さまたちには連絡したら二つ返事で承諾を得、特にS48896世界の神さま……と言ってもわからないかもなので詳しく話すと、以前、使徒同士の戦いに私が勘違いで暴食でペロリと食べてしまった折にやたら世話好きな雷神さまがおられまして。


 その神さまは私のエメス星にある世界の隣の世界の主神さまで、本来なら何かと世話してやろうと待っていたらしくて……まあちっとも私が頼ってこないので。



「カミラよ、なんでワシに頼って来んのじゃ。ワシ、ずっと待ってたのだぞ!?」


「なるべく自分たちで悩んで、苦労したほうが被造物に愛着湧くかなーって」


「たしかにな! でもワシ寂しい!」


「ゴメンね」


「うむ!」



 あまり細かいことは気にしないおおらかな神さまだった。で、ロイヤルシートというかゴッドシートに各世界の神さまたちがズラリ。これには上皇陛下ママもドン引き。



「娘よ。そなた顔が広すぎやせんか……?」


「神さまたちはちょー優しいよ?」


「あ、うん……」



 この時点で皇后マリーは確実に強いが、魔帝カミラは異次元にヤバい! 神々を招待しててヤバい! ようじょ強い! 皇后マリーよりヤバい! となっていた。


 目的は達されたのも同然だけど、それだけでは終わらせない。


 優勝者を圧倒的力で彼我の差を見せつけないと。魔族は力こそ正義なのだから。


 闘技大会は順調だった。


 この手の催し物に必ず付随する勝利者予想ギャンブルも大盛況。

 胴元の私もガッポリ。帝国の国庫は減るどころか逆に津波のように増える。


 治安維持は兵たちの尽力と私の想像魔法『STAINLESS (K)NIGHT』によって奇跡のように守られて。ちなみに紳士な私の騎士たちは女性陣に圧倒的人気が出た。

 その他にも。

 神さまたちには飽きさせないよう、気に入った選手や気になる選手がいたら力添えを可能にしてみた。あと、神さま専用ギャンブルも同時開催する。


 優勝賞品は、私が上へ落ちる力で作った出来立てほやほやのアストロスフィアを進呈。参加賞には真なる賢者の石(銀河1個分のエネルギーを付与している)が付く。


 これには各世界の神さまたちも大興奮。


 だって支配権がそれだけ広がり、信仰を集めればまた強くなれるからね。


 闘技大会で選手たちはボカスカ対戦相手と戦い、勝ち、または負け、神々は自分が目をかけた人物にコッソリバフを掛けたり祝福したり神具を貸し与えたり。

 いよいよ混沌として大変面白い展開となりて、数日間の対戦後、ベストエイト、ベストフォーが決定、そしてついに決勝にたどり着いた。


 最後まで勝ち残った二人。


 一人は自称堕天使のアリス・ワンダーランドと名乗る若い女性。前世の迷彩服みたいな装備、銃火器、ナイフ、そして力翼と呼ばれる灰色の翼を隠し持つのが特徴。

 もう一人は魔天卿と名乗る年齢不詳の武術師。多分男性。中華風の長道着を着て手元が見えない。対戦相手をほぼ一撃で葬る二の打ち要らずの不思議な拳術を使う。


 闘技場はドーム式で10万人の観客を収容する。場外にも巨大スクリーンで対戦の様子を見せる。解説者がつくので実はスクリーンで観戦したほうがわかりやすい。



「最良の健闘を。決勝戦、試合開始!」



 レフェリーを買って出た淫魔侯爵のド・ケスベイが戦闘の開始を宣言する。


 ワッと観客から歓声が上がった。




【お願い】

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 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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