第163話 パーフェクトグレードのガンプラのようなもの

「……お、おう。えーと、おじょーちゃんはカミラお姉さんの代理かな?」

「にゃー♪」

「がるるるるるるる……」

「てか、おじょーちゃんの背後の着ぐるみクマの人は、なんで俺様に威嚇を……?」

「パパなのー♪」

「ぐるるるるるるる……」


「お、俺様……この着ぐるみクマの人になんか悪いことしたっけ……?」

「カミラのてーそーは、パパが守るってー」

「おじょーちゃんの貞操を守る!? えっ、それって誰から!?」

「がるるるるるるる……っ!」

「ひっ!? この着ぐるみクマの人、めちゃくちゃ怖いんだがっ!?」



 皆さんこんにちは。カミラでございまーす(サザエでございまーすのノリで)。


 わりと斬新なアイデアを思いついたので、今は幼女の姿に戻っています。


 で、それで。

 フィクスおじさん指定の待ち合わせ座標で――ダンジョンを作る約束のために。


 大公領、領都、東のはずれ。小型の砦のような施設。この施設がダンジョン。


 私、パパ氏、フィクスおじさん、筋肉ラムズおじさん、あと伝説のホワイトドレイク(人化中)がそれぞれ立ち合い、顔を突き合わせているわけですが……。


 

「あのねー、カミラって年頃のおんにゃのこだからねー。せーじんだんせーの人と会うときはパパと同伴が条件だってー。貴族は平民とは違うのよー」


「待って待って。色々ツッコミどころが多くて俺様口から泡噴きそう。まずはっきりさせようや。もしかしておじょーちゃんは、カミラお姉さんの代理ではなくて、本人だったりするわけか? あのボンキュッボンでムチムチエッロい彼女が……」


「そだよー」


「ぐるるるるるるる……っ!!」


「いやいやいや、カミラパパの人、確かに言葉にアヤがあったのは認めるが、ほら、表現ってあるじゃん? こーんなちっちゃい子とあのエロい子が同一とか、ね?」


「カミラは神さまから色々と変な権能を貰っているから、にゃーって色々できるの」


「にゃーって……」


「ぐるるるるるるる……っ!?」


「ああ、はいはいっ。そうですねっ。色々とできるわけですねカミラパパの人!?」



 まともに話をしているのは私とフィクスおじさんのみ。

 着ぐるみパパ氏はフィクスおじさんをなぜか目の敵にしている――はてさて?

 筋肉モリモリラムズは腕組みをして目を閉じ、黙して何も語らず。

 あと、オマケの人化ホワイトドレイク=ストームドレイク。彼女はフィクスおじさんの背に隠れている。15歳くらいの少女の姿をしているね。頭に角生えてるけど。



「で、その着ぐるみクマの人がおじょーちゃんのパパさん」


「そだよー」


「……なんで、着ぐるみなん? おじょーちゃんのパパなら、太陽とか平気だろ?」



 ちなみに時刻は16時だったりする。この地は冬なので太陽はもうだいぶ低い。

 私は待ち合わせの時間調整のためちょっと早起きしていた。



「もちろん平気だよ。うーん、まあ、政治的配慮だにゃー」


「政治的……? ああ、帝国の皇太女と……いや待て、パパって実父? 義父?」


「ホントのパパだよ。魔帝陛下は義母なの。だからママって呼ぶの」


「あー、うん。つまりこの着ぐるみクマの人はノスフェラトゥ公爵ご本人……」


「にゃあ。大当たり。よく調べたのにゃー?」


「スレイミーザ帝国出身で、太陽光が平気な高位吸血鬼で、それで『カミラ』の名前のつく家名をわが家の調べもの好きな妖精さんに調べてもらってだな……セキュリティが強すぎて家名しか出てこんかったけど、該当の女の子は確認できたのさ」


「ふみゅー」


「そりゃあ次世代の魔帝陛下と現公爵閣下が、この国で反乱軍の親玉の俺様と一緒にいるのを有識第三者が見たら下手をせんでも国際問題に発展するよな……」


「えっへんなの」


「まあ、お互いのためってことで。しかし、ありがとうな」


「うん♪」


「……エッロい女の子のちっちゃい版は素直で良い子で、それでいて政治的配慮もちゃんと踏まえるとか違う意味で怖いな……魔国の皇太女だものな……」



 上を向くフィクスおじさん。灰色の寒空から弱弱しい陽光が落ちてきている。


 というか、話が進まないにゃ……。



「パパ……この人(?)たち怖すぎて、カトリーナ、おしっこ漏らしそう……」

「ちょ。この辺にはトイレなんてないぞ。出かける前にしてこなかったのかよ!?」

「してきたけど、カトリーナ、突然おしっこしたくなったんだよぉ」



 カトリーナは人化ドレイクちゃんの人化名らしい。なお、愛称はケイティだそう。



「そこにある新ダンジョンに、入って右側に男女別のトイレを作っておいたにゃー」

「パパ、パパ。おしっこー」

「年頃の女の子の姿で尿意をモロに俺様に伝えるのはやめなさいって」

「おしっこー。もうここでするー」

「こらこらこらっ。わかったわかったっ。どうせ俺ら以外に誰もいねえんだろ? なら、男子トイレで良いよな!? ほら、いくぞっ。漏らしたらダメだぞ!?」



 フィクスおじさんはドレイク娘のカトリーナの手を引いて、小走りで一足先にダンジョンに入って行った。まるでトイレをむずがる幼児の手を引くように。


 ……というかあの人化ドレイクちゃん。


 精神年齢が人の姿とちっとも合ってないなぁーと私は分析する。人化ドレイクちゃんは嫉妬の権能で外見は15歳の姿にしたが、中身は3歳児くらいのようだ。


 ……おしっこさせるときは、やっぱり後ろ抱きで股開きしーしーさせるのかしら。


 まあ、個室はアーマーインナーガンベスンを着ていても大用う〇こを出来るよう広く間を取った洋式トイレなので、やりようによれば幼女しーしーできるとは思うけど。



「ごたごたしていて誠にすまない」

「いいにゃ、筋肉おじさんって参謀も兼ねるでしょ。おじさんがいれば問題ないー」

「あいわかった」

「じゃあ、ついてきてー」



 私はぬいぐるみパパ氏に肩車されて、一見して小型の砦なダンジョンに入る。


 先に語ったようにこのダンジョンは大公領領都の東のはずれに作っている。

 なお西のはずれにもダンジョンはある。こちらは元からあったダンジョンだった。


 もこもこクマのぬいぐるみに肩車された私に、後に続く筋肉ラムズおじさん。出入口の階段をたんたんたんと、ゆっくり降りてゆく。総石造りでがっちり耐久性を高めて、しかも出入り口には風雨水害に遭わないよう周囲に結界を打ってある。


 地下一階層、エントランス。


 ここエントランスに限っては、ダンジョンの魔物は現れないし、入っても来ない。

 広さは大体100坪くらい。ちょっとした貴族屋敷のエントランスくらいの広さ。


 向かって正面は、ダンジョン本体部。僕たちの冒険はここから始まるってヤツ。


 右手には大人数対応のトイレコーナーがある。トイレは大事よ。漏れたら一大事。


 左手には休憩室。長椅子を20ほど置いてあるので休憩のほか、装備準備などができる。浄化された水場もあるのでここで水筒に水を補給していくのも良い。


 更にその奥には救護室。致命傷を受けたら瞬時にここに放り込まれ治癒される。なお持ち物は全ボッシュートで全裸……は可哀想なので簡易衣類を用意しようかな。


 私は着ぐるみパパ氏に肩車されたまま、筋肉ラムズおじさんに説明をしていく。


 そうして休憩室と救護室の説明を終えてエントランスに戻ると。


 あれ、トイレの前でフィクスおじさんが、ドレイクちゃんに説教してる。



「いいかーケイティ。おしっこした後は自分で股を紙か布で拭うのだぞ? 俺様が拭いたら変態になっちまうじゃん。う〇こも同じだぞ。ケツは自分で拭うのだぞ?」

「はい、パパー」

「あと、トイレの後は必ず手を洗え。病気ってのは大体が手を通してやってくる」

「はーい、パパー」


「……わかってんるだか、わかってないのだか。……おう、待たせたな」

「別に待ってないにゃ。筋肉おじさんに説明しておけば問題ないしー」


「パパー、私も肩車してー」

「年頃の女の子が義父とはいえ男に簡単におぶさろうとしちゃダメだぞ?」

「パパ、私のこと嫌い……?」

「あーもー、肩車じゃなくて横抱きしてやるよ。ほれ」

「わーい♪」



 横抱き。別名お姫様抱っこ。このドレイクの子、ずいぶんと甘えん坊のようだね。


 ……さて、ここで更に細かい現状報告! 気になる部分をまだ語ってないしね!


 まず、私は幼女の姿に戻っている。これはとあるアイデアのためだった。


 で。


 そのアイデアとはパパ氏の自立行動化だった。


 すなわち。


 幼女に戻ってサイズの合わなくなった下着の上下を、想像魔法『El・DO・RA・DO』で作った某コストコで売ってそうな巨大クマのぬいぐるみに埋め込んで魔力でコーティングし、パパ氏に協力してもらってコーティング魔力と同期する。


 すると。


 大人の私にぴったりフィットな白ブラジャー&白パンティなパパ氏は――

 着ぐるみ風のクマ姿で、自律行動ができるようになる!


 ……なぜか発声に難があって、声を出すと唸り声になるけれど。


 まあ念話ができるので私たち父娘間での会話には支障はないから問題はないね。


 ふわふわクマさんぬいぐるみなので、抱きつくととっても気持ちよいにゅ♪


 念のため、つけ加えると。


 今の私はパパ氏インナーを着けていないだけでノーパンではないからね。

 ちゃんとキャミソールと……オムツをつけてる。パパ氏の要望で。

 まだ一歳児だから、お漏らしするといけないからつけておきなさいって……。


 次。ダンジョンについて。


 私は王都側のダンジョン調整してできた余剰コストを使って、新たにダンジョンをクリエイトしていた。別に各想像魔法を並行起動して作っても良いが、それだと一から作る羽目になるので時間的に無理が出るため、出来合いで済ませていた。


 あえて言おう。カスであると!

 ではなくて。私はどこのギレン総帥なのか。


 繰り返してもいい?


 あえて言おう。このダンジョンは、ほぼ完成品状態で中古購入したパーフェクトグレードのガンプラ(ガンプラの中で最高峰のブランド)のようなものであると。

 作成の手間を飛ばし、あり余る魔力で、ほぼ完成品を買うのである!


 総階層地下159階。最終推奨レベル1600。


 地下一階攻略の推奨レベルは10。

 一階ずつ降りていくごとに10レベルずつダンジョン内の魔物は強化される。


 内部は一律、桔梗紋形式の五行循環型。要するに土地を富ませるダンジョン。

 龍脈を取り込んで魔力を精製し、土地を富ませ、かつ、ダンジョン運営をし、挑戦者のための効率的な武器防具をドロップ報酬で提供、致命傷時は回復させる。

 侵入者をひたすら殺すためだけのダンジョンではなく、挑戦者を効率的に鍛えるためのダンジョンなので、五行循環型が一番適しているわけだった。


 徘徊するダンジョンの魔物や玄室のダンジョンの魔物はちょっと強め。

 ただし経験値はかなり高め。ドロップ装備品も出やすく複数個出るようにした。

 代わりに金銀宝石類は、ほとんどお小遣い程度にしか出ない。


 一応人類最終限界の1500に更に100ほどプラスした階層にしてあるけれど、基本は地下15階でやめたほうが良いだろう。15階までは各階直通エレベーターをつけているが、そこから先は全部徒歩で降りてもらうようにしたので。


 なお、致命傷を受けたら即時回収され、救護室へ放り込まれて回復させられる。

 ペナルティは持ち物をすべてボッシュート。得た経験にはペナはつかない。



「何度も何度も繰り返すけど、貴重品は絶対に持って入らないことにゃ。致命傷を受けた際に回復させるペナルティで、全裸に剥かれるからねー」

「前も思ったんだが、なんで全裸なんだ……」

「治療で手術するときは、裸んぼが基本でしょー?」

「そ、そうなのか?」

「そうなのよー?」


「パパー。カトリーナね、パパとキスしたいー」

「空気をまったく読まない義理のドレイク娘に俺様、頭が痛いのだが?」

「甘えん坊ちゃんにゃ。将来はパパ呼びから旦那様にクラスチェンジするかもー?」


「ぐごおおおあおおおああーっ!?」


「怖い怖い! カミラのパパさんがなんか知らんが過剰に反応してらっしゃる!」

「ちゅー♪」

「ち、ちゅー」



 あらまあ、なんだかんだと甘やかすタイプなのね。

 がっつりマウストゥマウスでキスしているし。



「し、しかし……」

「んー? どしたのフィクスおじさん」


「このダンジョンができた経緯、おじょーちゃんの力が凄まじいのはいわずもがなだが、それだけに仲間たちにどう説明したもんかな……」


「ドレイクちゃんが見つけて、入り口を作ったことにすればいいにゃ」

「外見は小型の砦なんだが?」


「伝説のドレイクならその程度の奇跡もできるって」

「さすがに無理があるだろ……」


「強引に押してしまえばいけるにゃ。お前たちのため一度だけの奇跡を使ったって」

「あー、まあ。……おじょーちゃんはホント、政治家向きだよなぁー」



 甘えん坊のドレイクちゃんはフィクスおじさんの胸に顔を埋めてくっついている。

 それをトントンと肩に近い背中辺りを叩いてあやすフィクスおじさん。

 腕を組んで目を閉じ、また黙して語らない筋肉ラムズおじさん。


 なかなか面白いことになってるなぁー。


 と、思いつつもダンジョンの説明を私は彼らに続けるのだった。




【お願い】

 作者のモチベは星の数で決まります。

 可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。

 どうぞよろしくお願いします。

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