第86話 今後の計画を立てよう
※注意。今回はバイオレンス度が高いです。
転移してしまったものはしようがない。いや、思うところは沢山あるけどね。
ホント、思うことはね、沢山ある。(こぶしを握って力説)
でも、それよりも、前向きに今後を考えていかねばならない。
ふむ、初手は……と。どうするかな。脳内演算で未来展望を推移させる。
ゲーム知識と設定資料を思い返してなるべく良い手を打ちたい。
よーし、決めた。
手始めにトリュファイナを軽んじてきた使用人たちを全員奴隷身分のレッサーバンパイアに堕とそう。身の程というものを教え込んだ後で進退を決めようか。
ちなみにゲーム内のトリュファイナは主人公のライバルキャラと解説しただけあって、本来は因子を取り出したら死ぬはずがある要因によって無事で済んでいた。
なんと彼女は、聖女の対となる超強力な魔女の因子も持っていたのだった。
具体的な彼女が助かった理由としては、聖女因子を抜かれる苦しみの余り仮死状態になったこと、魔女因子が彼女の身を護ったことが挙げられる。
何より、仮死状態に気づかないまま――
エニグマ家は彼女を用済みと荒野に打ち捨てたことが一番の要因となる。
エニグマ家の思惑では狂ったユグドラシルが作り出した人類すべての不倶戴天、通称『ビースト』に、いずれは彼女の遺体を喰われるだろうと。
実際『ビースト』は人を生死を問わず喰らう性質を持っていた。酷な言い方になるが、この処理方法自体は間違ってはいない。死体がなければ殺人は問えないのだ。
が、トリュファイナはこの悪運に打ち勝った。
たまたま蒸気自動車で通りかかったアーカム魔族公爵に気まぐれに拾われて、しかも彼女の持つ因子に気づいた公爵は彼女を公爵家の養女とした。
そうしてトリュファイナは戦闘と魔女の知識、運用法を徹底的に仕込まれる。
幸か不幸か、彼女には絶大な戦いの才能があった。
主人公の持つ『聖女』『増幅』因子に負けない強烈な『魔女』の因子。
あまりにも過激な強さとエロさでうかうかしていると主人公すら喰う(性的に)ほどに。あと、五人のイケメンの友好度が低いと魔女に奪われてしまう場合もある。
……ただし、忘れてはならない事実を突きつけるなら。
大事なことなので何度でもしつこく触れる。
これは『現実の出来事であって、決してゲームではない』のだった。
そもそも私が関与してしまったため、聖女の因子を失った時点からのストーリーラインはオープニングシーンから完全に逸脱、ブツ切れになっている。
あのとき気絶でもしていればアーカム魔族公爵に拾われていただろうに。
なのでこれからどうなるかは五里霧中状態になるかもしれない。
まあ、ゲームでの主人公が現れたら聖女因子は埋め込んでやってもいい。
あとはその子に丸投げという手もある。
たぶん好きなようにイケメンとイチャイチャしつつも異変と戦うだろうし。
ガンバレ主人公!
イケメンとのスケベのためにこの世界を救え!(完全に他人事)
個別エンディングでは結婚して子どもを産んで、さらにイチャつけるぞ!
とりあえずは、元子爵級吸血鬼で現在は伯爵級吸血鬼となったエニグマ侯爵――うん、ややこしい。ともかく下僕に命じて邸内の使用人を全員当主部屋に呼ばせる。
待つ間、私は想像魔法『呪いのボンテージ』にて自らのドレスを作り、纏う。
いつも着ている深紅のドレス。足元はパンプスではなくピンヒールで。
トリュファイナは成人ゲームの宿命として一応設定上は18歳となっている。が、実際の年齢は15歳だった。例えるなら、明らかに実年齢一桁後半ロリなのにこのゲームの登場人物はすべて低身長18歳以上ですみたいなサムシングであった。
……成人指定ゲームの闇はここまでにして。
吸血鬼は鏡に映らないので、私は魔力鏡を作って自分を映し出す。
なるほど、ゲームで見た彼女がいる。
カラス羽のような黒髪、瞳は私のソレなので何も言わない。見慣れた深紅の瞳。顔立ちは私が憑依しているせいか、私の大人バージョンに雰囲気が似通っている。
つまり美人で超エロい。おっぱいもデカい。大人の私とタメ張れそう。
色々とポーズを取ってみる。グラビアアイドルみたいに。
嘆息するほどほっそりとした身体のライン。尻もいい形。幼女体の、本来の自分のボディは寸胴だからね。もちろんアレも悪くないけどね。ニッチな需要もあるし。
さすがエロゲー。よくわかってらっしゃる。わかり味が深い。
よし、待ち時間で適合化でもしておこうか。嫉妬の権能で私の大人バージョンの力を上書きしてやろう。そうすれば4015レベルは――4015万レベルにと変貌する。
高まる魔力。ビリビリと細やかな振動が。神気・魔気。気分は上々。
ドンッ、と館が揺れる。
10人いるレッサーバンパイアのフードたちは恐れおののいて蛙みたいに土下座モードに入った。エニグマ侯爵も膝をついて私に頭を垂れる。
そうこうするうちに呼び出された使用人たちが――来ない。
どうも私がテンプテーションしたせいで、弱い人間たちは神気・魔気に当てられて失神したり失禁したりゲロを吐いたりと大惨事になっているらしい。
なるほど、面倒くさい。
私はレッサーバンパイアに命じて引きずってでもこの部屋に連れてこさせる。
彼らは『ヰーッ』と、どこぞの戦闘員の皆さんみたいな掛け声とどこかで見たハイルなポーズを取って一斉に部屋を出て行き、命令を遂行し始めた。
しばし待つ。引きずられたり担がれたりして運び込まれる使用人たち……失禁ゲロまみれで失神していて酸っぱいニオイは酷いし汚いのなんの。しようがないね。
『秘密の花園』
ゲロと失禁で目も当てられないので、汚物状態の彼らを担いで運んだレッサーバンパイアも合わせて全員を丁寧に洗浄してやる。花の香りはフローラル。
「全員を起こしなさい。起きないならしたたかに殴ってもいい」
「ヰーッ」×10
フードのレッサーバンパイアたちは一斉に空手チョップを使用人たちの頭に炸裂させる。文字通りの叩き起こし。目を覚ます代わりに悶絶する使用人たち。
「お目覚めのようね、みなさん。気分はどうかしら」
「……お、おまえは」
「侯爵家に仕えている割に、口の利き方がなっていないとは嘆かわしいわね」
「――オゴぉ!?」
良くない口を利いた使用人にレッサーバンパイアたちはところかまわず空手チョップする。なんでチョップに拘るのかは知らない。が、それもまた良しとする。
「制裁そこまで。あなたたちは理解していないようなので教育しましょう。それでも理解できないなら身体に叩き込みます。具体的には真っ赤に熱せられた焼きコテを背中に焼き付けてやります。火傷はしますが死にはしません。奴隷の紋章ですので」
私は当主の座席を魔力で掴んでデスクより引っ張り出し、そこに足を組んで座す。
「侯爵、我が靴先にキスをしなさい」
「はい、御主人様」
ざわっ、と信じられないものを見たある種の衝撃が使用人たちに広がる。
エニグマ侯爵は丁寧にひざまずき、私のヒールのつま先に口づけをしたためだ。
「理解できましたか? 奴隷の焼きコテが欲しい人は遠慮せずに言ってくださいね」
静まり返る。恐怖と驚愕に目を泳がせる使用人たち。あ、また失禁してる。突然土下座で許しを請う人まで。でも、ここで許したら
「侮辱されたら殺せ。エニグマ家の家訓は当然知っていることでしょう。この侯爵家の実質的な支配者はわたしです。そして、使用人の分際でわたしを侮り続けたことは万死に値すると宣言します。ついてはあなた方をレッサーバンパイア化させます。使い捨て要員。要するに奴隷。わたしを淫売の子と軽んじた報いを受けて貰います」
私はトリュファイナを想いつつ、権能『暴食』を発動させる。
ともあれ、利用されるだけの人生だったあなたの無念を晴らしてあげる。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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