第46話 判定はオウンゴール
ミーナちゃんの身体を借りた私と魔帝陛下は――
収容所にて治療台に横たわる『彼』を静かに見下ろしていた。
念のため、私の周りには三体のSTAINLESS (K)NIGHTが身辺警護している。
『簒奪王ルシフ。地下19階層にてダンジョン罠にかかり、同士討ち敗北する』
「判定、ルシフはオウンゴール! カミラたちの勝ち! にゃっはーっ!!」
『そうね……』
魔帝陛下との会話の通りであった。
私たちは簒奪王ルシフ率いる、ベリアル魔王国最強の討伐隊を下した。
「うふふ、それでどうしようかな」
『というと?』
「ミーナちゃんは復讐を願ったの。でもカミラ的にはどうでもいいの。カミラは舞い落ちる火の粉をぱぱっと払っただけ。ルシフに恨みなんてないし。今となっては勇者一行の動きのほうが気にかかるし。絶対この騒動で忍び込んできてるのよ」
『そうね。ルシフサイドも、まさかミーナの身体に
「陛下はちっちゃい女の子が大好きなのよね〜」
『大好きよ。コンコンと眠るミーナを手厚く可愛がってあげてるわ』
「にゃあ♪ 優しくしてくれてるの」
『うう、わかってなさそうなところに罪悪感が。好き放題できる幼女とか……』
「にゃ?」
『な、なんでもないのよ。今度、カミラも朕とイイコイイコしましょうね』
「うん!」
『ホ、ホントにしちゃうからね?』
「うん!」
それはともかく。
「とりあえず、ルシフが負った傷は全回復させたの。でもまだ催眠によって眠らせてるの。うーん、勝ったのはいいけど、彼をどうするかは特に考えてなかったー」
『何はともあれ、吸血とエナジードレインをしておけば?』
「にゃあ。そうするの」
私はルシフの腕に右手で触れて、軽く吸血する。王族の血は高貴と言うけれど、さてお味の方は――普通に可もなく不可もなく。肩透かしを受けた気分になる。
気を取り直してエナジードレインする。
見たところ彼のレベルは4000に達していた。どうやら同士討ちでレベルを上げてしまったらしい。まあ、パーティ内最強がフルパワーで殴ればそうなるだろう。
と、いうわけで。
ミーナちゃんの初期レベルが100程度だったので彼にもそのようにしてやろう。
3900レベル頂きまーす。にゃっははー。めっちゃ吸うよ!
これで私のレベルは9000近くとなった。
見た目は可愛い吸血鬼の幼女だけど、完全に亜神クラスとなってしまった。
小国程度なら単身ですべてを更地にできる力を得たと考えて良い。
『今度ムシャクシャしたら、人類相手にやってみるといいわよ。伝説に残るかも』
「みゅー! そんな危ないこと、しないもん!」
『うふふ。カミラが可愛いのでつい、いぢわる言っちゃた。ゴメンね?』
「もー! 闇の神様に言いつけちゃうもんねーっ」
「あらあらまあまあ♪」
そ、それはともかく。
血の試食もしてそれから力も奪ったし、ルシフも収容所の治療台に寝かされると思考力も奪われる。更には吸血鬼の魅了もよく掛かる。そろそろ話しかけてみよう。
気持ちを『女王ミーナ・イシュター・ベリアル』に変更する。
「簒奪王ルシフよ! とく、起きよ!」
「う……ん……? よ、余はどうなっている……?」
「簒奪王ルシフ。または僭王ルシフ。その方は正当なる王位後継者たる我が織りなす魔王ダンジョンに膝をついた。完膚なきまでに敗北したのだ!」
「お……お前は、ミーナ」
「いかにも。我は女王、ミーナ・イシュター・ベリアルである」
「……」
「賢くも、我が直々に尋問してやるゆえ、覚悟するがいい」
「……わかった」
「まずは問おう。なぜゆえに裏切りを起こして王位を奪おうとしたか」
「先ベリアル王のやり方では、いずれ国が滅ぶと判断したがための決起だった」
「ふむ、続けよ」
「人類はあるとき、内乱の果てに神に選ばれた国とやらを新しく掲げた。それは聖国と自称した。彼らは我々を悪と見做し、ばかりでなく異世界より勇者を召喚しその者を背後から操る聖女を名乗る狂人を据え、我が国に宣戦布告無しの戦いを挑んてきた。最悪にも、やつら勇者どもは異世界のチートなる力で殺しても死ななかった」
「何をしても死なぬのか」
「知っているはずだ。殺すには殺せると」
「うむ」
「だが奴らは死んだ瞬間に転送され、奴らが信仰する光の神の、最寄りの教会に飛ばされる。聞くところ、持ち金の半分を犠牲にして死亡者全員が蘇るという」
「で、あるな」
「結果、理論上は殺せても実際は殺せぬ。最悪なのは奴らは死を前提に作戦履行したことだ。最初は特に酷かった。四人全員が禁忌の爆裂方術を抱えて敵陣に」
「自爆でデスルーラを繰り返し、力を貯めた、と。なるほど狂気である」
「そうするうちに先王の戦法では手がつけられなくなった。奴らの最高限界レベルは人ゆえにどれだけ足掻いても1500。しかし、死に戻りが攻撃手段の間口を広げる」
「その方としては、内心ではどうするつもりでいたのか?」
「外聞には打ち倒すと公言していたが、捕らえ、封じる以外に方法はないだろう」
「なるほどの」
「うむ……」
「ところで、その方は女児が好きなのか?」
「……質問の意味がわからぬ」
「つまり、だ。幼き我を一人の女として、性的に見ておるのかと問うている」
「そんなわけがない。子を身籠れるようになるまでは生かしておくつもりでいたが」
「なるほど、血か。主筋の血だけか」
「忌々しいが、主筋と傍系では血筋の隔たりはあまりに大きい。ゆえにお前だけは生かしておく必要があった。血のため、お前には俺の子を孕ませる予定だった」
「ふむ。またぞろ、実は女児への嗜好性を患っているなら少しは考えてやらねばと思ったが、それも必要ないとわかった。その方は、正しく簒奪者だった」
「すべては国のため、国民のためであった」
「ああ、そういうのは良い。それを考えるのは我の務め。その方は罪人として幕を閉じる。断頭台の露に消えるまでは労働でもして、迫る死に恐怖すると良い」
「……」
「今は、眠れ」
私は簒奪の罪人ルシフとの会話を終えた。
色々思うところはある。
ベリアル王家の不首尾。国を憂いた傍系王族。凶行に走る。謀反が起きる。
内乱罪の刑罰は、前世日本だと首謀者は死刑か無期刑となる。が、ここは異世界。
前世日本ほど法治国家として成立していないだろう。王家主筋を殺しているし。
まず、死刑が順当となろう。
ふにゃあーん……。と私は声を漏らした。
もし、仮の話。簒奪王ルシフが実はロリコンで、それで可愛いミーナちゃんに懸想してお断りされ、恋破れての凶行だったらまだ考えたのだが。
これは、ダメだ。ガチでした。
ガチでクーデターの首謀者。
ただのロリ助だったら、どうかしてミーナの下僕になるようせしめたのだけど。
ざーこざーこ、ロリコン変態オジサン♪ ほら、馬になりなさい。私がまたがってあげる。感謝なさい。この私の股が下着越しにオジサンの背中に接触することを。
足蹴にされ、尻敷にされ、罵倒され、ときに優しくされて。それでいて基本はロリに命令されて歓ぶくらいのほうが、変態な分だけ扱いやすいのに……。
『状況さえ受け入れられれば、幼女に飼われるのも案外幸せかも?』
「にゃあ。コレはコレで業深い嗜好なのー」
『行きましょう。取り敢えずは処理は後回しに。
「うん。今日はこれまでなの。あ、待って待って、闇の神様で思い出したの」
『えっ、本当にさっきのを言いつけるつもり?』
「にゃあ。違うの。お祈りしてちょっと許可を貰いたいというかー」
『……?』
その後――
私たちはダンマス業務を終了し、ダンジョンコアの警備システムに後を任せた。
【お願い】
作者のモチベは星の数で決まります。
可能でしたら是非、星を置いて行ってくださればと。
どうぞよろしくお願いします。
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