初めて

タクシーで、家にやってきた。


女性と仲良くなるのは、苦手だと思っていた。


「お邪魔します。」


なっこと一緒にお酒を飲んだ。


彼の物は、まだいたる所にあって写真だけは悲しくなるからしまってしまった。


なっこは、辺りをキョロキョロしながらも、興味を示して突っ込んでもこなかった。


私は、この日初めて女性の肉体にれた。


飲みすぎたなっこは、ソファーに寝転がった。


「すみません。朝には、帰ります」


「気にしないで」


私は、寝室から薄手の毛布を持ってきた。


なっこは、すでに寝ていた。


けれど、寝ながら苦しそうに体を動かしていた。


「うーん、うーん」


私は、なっこがブラジャーをはずしたい事に気づいた。


そっと、なっこの背中に手を入れた。


「ぅ、ぅん」


私は、ブラジャーのホックをゆっくりとはずしてあげた。


「ふぁー」


っと、気持ち良さそうにした。


でも、暫くするとまた苦しそうにした。


ズボンが、窮屈なようだった。


私は、毛布を被せたまま。


手探りで、なっこのズボンを脱がせてあげた。


「はぁ、ぅん」


そう言って、なっこはスヤスヤ眠っていた。


女性の肉体に初めて、れた。


もっと、気持ち悪いと思っていた。


でも、私はなっこにれた事を気持ち悪いと思わなかった。


化粧を落とし、歯磨きをして、ベッドに横になった。


さっき、なっこの背中にれた左手を見つめる。


あの手に感じた温もりを守ってあげたいと思ってしまった。


この手でなっこを幸せにしてあげたい。


朝、起きたらなっこは、まだ眠っていた。


私は、何時に眠っても5時までに目が覚める。


彼の温もりをなくしたからか、一人のベッドでは寂しくて



「ふぁー。あーー」


「朝からうるさいわね。おチビちゃん」


私は、お味噌汁を置いた。


「パンツで寝てます。ブラも外れてます。」


「獣みたいにみないでよ。私が外してあげたけど、私はおチビちゃんの体に興味ないわ。昨夜も話したわよ。同性愛者だって」


「えっ?」


なっこは、はにゃって感じの顔をした。


「はい、お味噌汁飲んで」


「その胸は、ピアスですか?」


「あら、濃いシャツに着替えてくるわ」


「いえ、お綺麗です」


薄い白いTシャツから、ピアスがハッキリ確認できてしまっていた。


「ありがとう」


味噌汁を飲んで、なっこは泣いた。


「どうしたの?」


「味噌汁です。」


と言って泣いたのだ。


「当たり前じゃない、味噌汁よ」


「お出汁の味噌汁です」


「だから、当たり前じゃないの」


「お、お名前は?」


「あれ、また忘れちゃった?秋静樹あきしずきよ、静樹でいいわ」


「私は、若宮夏子わかみやなつこです。なっこです。」


「よろしくね、なっこ」


「よろしくお願いします。静樹」


そう言って、握手を交わした。


「玉子焼きも、食べる?」


「はい、はいはい」


昨日とは違って、私はこの日なっこの目にせいを見たのを今でも覚えている。


なっこは、私と同じように惹かれたのを強く感じた。


「玉子焼きです。」


「苦味はないの?」


「何故か、ありません。」


そう言いながら、なっこは泣いていた。


愛が欲しかったのよ。


なっこも私も…。


「ティシュどうぞ」


「涙の味がしなくなっていったんです」


「何、それ?」


「昨日は、話さなかったから」


「えぇ」


「気づくと涙の味がしなくなっていったんです。友人達が、当たり前に結婚をし、子供を授かる。私は、その出来事の一枚にも存在出来ない。それが、急に空しくなったのは30歳になってからでした。」


「わかるわ」


「嫌がらせのように、投稿されて。メッセージアプリの写真が、パラパラと変わる。私は、ずっと彼と過ごしたあの写真なのに…世界は、私だけを置き去りにして回っていく。誰にも理解などされずに、私はただ死んでいく。そう思っていました。」


なっこは、玉子焼きを口に含んで飲み込んだ。


「静樹は、同じなのですね?」


その言葉に、涙が止まらずに頷いた日を私は今でも忘れる事が出来ない。


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