闇を照らす光の君ー静樹ー

三愛紫月

出会い

私は、同性愛者だ。


仕事上、メイクをするけれど、普段は男の格好だ。


職を転々として、28歳の時にここのママに拾われた。


あれから、12年…。今もここで働いている。


私にとっては、天職だと思ってる。

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あの日、私は導かれるように貴女に出会った。


いつもは、行かないbarだった。


「静樹、駅前の新しく出来たエリってbar素敵らしいわよ」


お店の、愛ちゃんが話した。


「そんな普通のbarに、私たちみたいなのが行ってどうすんのよ」


「そうだよね」


「そうよ」


私は、21歳の誕生日に愛する者を失った。


「静樹、明日帰ってきたらすごいプレゼントをあげるから…。」


「どんなプレゼント?」


「いいから、いいから」


「気をつけて、行ってきてね」


「うん、じゃあね」


交際したのは、高校の卒業式の後すぐだった。


女の子が、好きだった彼に一度だけ抱かれたいとお願いをした。


彼は、最初はとても困っていたけれど、やってみるよと言ってやってくれた。


私も初めてじゃなかったから、あんな大胆な事が言えたのだと思う。


それから、二年が経ち。


彼は、私の誕生日に実家に帰っていった。


なかなか、帰ってこなくて苛々とモヤモヤが募った。


ピリリと携帯が鳴り


「もしもし」


と電話に出ると、


「……車ごと海に転落しました。ただいま、行方を探しています。」と声の主は私に告げた。


次の日のNEWSでも、取り上げられていた。


まるで、神隠しにでもあったように彼は、この世界から消えた。


彼の痕跡が、生々しく残る部屋で私は生きるしかなくなったのだ。


通夜、葬儀には、呼ばれる事はなかった。


そもそも遺体なき葬儀に出席するつもりはなかった。


私は、ここに残った彼の亡霊と共に生きると決めた。



「お疲れさま」


「お疲れさまでした。」



店が終わり、私は電車に乗るために駅までやってきていた。


駅前の新しく出来たbar。


普段は興味なんか持たないくせに、この日は無性に興味が湧いたのを今でもハッキリと覚えてる。


カウンターに座った女は、なっこと呼ばれていた。


「いらっしゃいませ、何飲まれますか?」 


「ビールで」


「少々お待ちください。」


私は、引き寄せられるようになっこの隣に座った。


「お待たせしました」


「ありがとう」


暫くすると、なっこに珈琲が渡される。

 

「なっこちゃん、飲みすぎだよ。はい、珈琲」


「ありがとう」


珈琲を受け取ると、何の躊躇いもなくお砂糖を一瓶珈琲にいれた。


いつもの事なのか、店員も気にもとめていなかった。


私は、隣に座るなっこに声をかけた。


暗く深い目をしていた。


彼女も、大切な者を亡くしたのがすぐにわかった。


私が話すと、その目は深い悲しみの色の目にかわった。


私は、一瞬で彼女に心惹かれた。


まるで、初めから出会う運命だったように…。


彼女は、壊れる程に泣いた。


落ち着いたなっこに、私は話した。


「もっと、体大切にしなさいよ」


「うるさいな」


「ダメよ。こんなんばっかり飲んでたら」


「これはね、寝る前のご褒美なの」


彼女は、砂糖中毒の不眠症だと私は気づいた。


もしかすると、味覚を感じられないのかもしれない。


「あー、なっこちゃん。気をつけて帰るんだよ」


「はーい」


立ち上がった彼女を追いかけずにいられなかった。


「すみません」


「はい」


「これで、足りるかしら?」


「大丈夫ですよ」


私は、なっこを追いかけた。


「タラタラタララ。会いたいよー。」 


なっこは、泣きながらタクシーに向かって歩いている。


私は、本気でなっこを支えてあげたかった。


「待って」


腕を掴んだら、なっこはビックリしていた。


「明日、仕事?」


「休みです」


「そうなら、来て」


私は、この日初めて彼との思い出の家に人を招き入れた。



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