詐欺師で勇者な俺

銀髪ウルフ  

  プロローグ

灰色の空に立ち上る黒煙。

いまだに炎を上げている村には魔物の死体がいくつも転がっている。

炎から逃れた数軒の家はよくて半壊。

崩れた家と共に破損された武具などが散乱しており原型をとどめていないものも多くみられる。

元は白かったであろう壁は魔物と人、どちらのものとも判断のつかない血痕と煤にまみれ元の色を失っている。

血溜まりができている場所など1か所どころではない。

肉片もところかまわずに飛び散っている、まさに地獄絵図。

そんな悲惨な背景の一部として人の姿がないことだけが唯一の救いだろう。

そしてそんな村の中心にある広場では最後の戦いが繰り広げられていた。



広場では人の倍以上はあるであろうう大きな影とそれを取り巻くように激しく動く3つの小さな影があった。

そしてそこから少し離れたところに立ったまま動かない2つの影。

大きい方の影がおそらくこの村を襲ったという魔物だろう。

そしてその周りの5人こそがこの世界最後の希望、

だが先ほどからどちらも決定打を決められずにこう着状態が続いている。

勇者が負けるはずなどないと信じているがそれでも遠くから広場を見つめている村人たちの顔には不安の表所が浮かんでいる。



「今だ、行け!」


激しく動いていた影の内の1人が大きな声で仲間へ合図を送る。

それと同時にその合図を待っていた影のもう1つが目にも止まらぬ速さで魔物に急接近する。


「これで終わりだぁー!」


目にも止まらぬ速さで魔物に急接近した影がそのまま剣を振りかざし魔物の首を落とす。

今まで敵の攻撃に素早い動きで対処していた魔物は少しも攻撃に反応することなく首を落とされた。


終わった。


被害がゼロ、というわけではないがこのレベルの魔物が暴れたにしては被害が少なくすんだ。

だがそれはこの村の話だ。

今回討伐した魔物はすでに国境沿いの村をいくつか壊滅させていたので国としてみれば少なくない被害が出てしまっている。

だが、これでしばらくはこの近隣に再び平穏が訪れることだろう。



こうして勇者は今日も1つの村と多くの命を救った。



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