竹の家族

俺は、別に隠してるわけじゃないからさんに話し出した。


「おかんが、亡くなって一年経たずに、おとんは再婚した。再婚相手にも連れ子が二人おってな。俺より10個も下やった。おとんは、それから俺をお荷物って呼ぶようになったし。俺は、あの家族から離れるようにバイトをした。外では、あの人いい親演じるねん。家の中で、ご飯食べるのを許されてたのは部屋だけ。一緒に住める条件は、再婚相手に関わらへん事。だから俺は、二十歳なるまで耐えたよ。だって、大人にならな。色々あいつん所にいくやろ?めんどくさいやん」


俺が、そう言うと三は、ギュッと手を握りしめた。


「ごめんな。若が生きてて、俺がいななったらよかったのにな。みんな、その方が嬉しかった思うで」


「何で、そんなんゆうん?」


「ホンマの事やろ?あんな幸せな家の子が死んで、俺みたいないらんって思われてるやつが生き残って、神様っておらんな」


三の手を離そうとするけど、三は、さらに強く俺を抱き締めて、簡単に振り払われないように自分の手首を掴んでいる。


「神様は、おるよ。竹君に幸せになってってゆうてる。俺には、わかる。これから、俺と幸せになろうや。なあ?アカン?」


「三、ありがとうな。でも、ホンマは若と居たかったやろ?気にせんでええよ。」


「何で、人には、そんなに優しいのに…。自分の事は、何で平気で傷つけるん?俺ときゅうにとって、憧れやったんやで。たつくんと竹君は…。俺も九も二人とも、竹君に頭撫でられんの好きで。竹君の事大好きや。だから、自分にも優しくしたってや。」


三の言葉に、涙が流れてくる。


それは、あの時に若にも言われた言葉やった。


「竹、ごめん。酷いことしてるな。もうやめよか?」


「別にええよ。俺なんかをこんなに求めてくれるんやったら。たいした事ないのに、求めてくれてありがとうな。」


「何で、そんな俺に優しいねん。それやのに、何でそんなに自分を否定して傷つけんねん。なあ、竹。自分の事、もっと優しくしたれよ」


俺の体を欲しがってきた若を受け入れ続けた。


酷いやり方をされても、求められてるならよかった。


なのに、若は悲しい目をしてた。


「三、ご飯作るから離してくれへん?」


「いやや」


「嫌やってゆわれても、お腹すくやん。」


「じゃあ、俺の目を見て。三の為に生きるからってゆってや」


「なんや、それ」


「ゆって」


「わかったよ。」


三は、手を離してくれた。


向き合って、目を見つめる。


「俺は、これから三の為に生きるから」


嘘ではなかった。


あの空っぽの目を救ってあげたいって思ったから…。


「竹君は、人に優しすぎるねん。人に優しくするんは、必要じゃないって言われたくないからやろ?」


三は、俺の頬に手をあててくる。


「だから、竹君に受け入れてもらえたのに…。俺、ワガママやな」


「ううん、ええよ。ワガママ」


「あの男の子に、もう会わんといて。自分に境遇が似てるんか知らんけど、押しに負けて、またこんなんつけさせるやろ?」


三は、痣になったキスマークをさわる。


「ヤキモチなんか妬いてくれんの?」


三は、ムスッとした顔をした。


「当たり前やん、竹君の全てはもう俺のもんに決まってるやん」


「何かのアニメみたいな思考やな」


「そのかわり、愛したげるねんから、ええやろ?」


「やっぱり、それそうやん」


「うるさい、今、俺が聞いてんの、わかる?」


「わかるよ。俺の事は、全部、全部。三のもんやで」


「じゃあ、キスして」


「わかった」


俺は、三にキスをした。


「優しいキスで好き」


三は、俺の唇を撫でる。


「それやったら、よかった。三、カッターシャツのボタンはずさんとってくれん?」


三は、カッターシャツのボタンをはずしてくる。


「いやや。これ、ムカつく。俺が、上書きする。」


そう言って、キスマークを指でぐりぐりとさわってくる。



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