第20話 古都からの手紙 2
マコトをミツキはゲストルームから店の売り場のほうにやってきた。そのまま商品の陳列棚のほうへ歩いて行く。
陳列棚は薄暗い照明の下にあった。
ミツキが言う旧王都から距離が離れた新王都にいるケンイチと連絡を取る方法に、魔導具が必要だった。
ついでに、ロープに縛られたエリザベート王女も連れて行く。
「わたし別に部屋に残してきてもいいのに……」
「善良な管理者の義務があるので」
「ミツキちゃん、わたしを何だと思ってるの?」
「ハイリスク危険物」
「……」
ひょいとマコトが無言になった王女の顔をのぞき込む。
「リズさん、嬉しそうな顔をしてる……」
いつの間にかマコトはエリザベート王女のことをリズと呼ぶようになっていた。
これもエリザベート王女のダメ人徳のお陰であろうか。
店内には客はいない。
悲しいかな、この店にとってはそれはよくあることだった。
棚から棚へと三人は進んでいく。
「ここらへんかな」
ある所でミツキは立ち止まり、商品棚を上から下へとじっくりと観察していく。
「ミツキは何を捜してるの?」
「文字通信に使えるもの、あ、あった」
ミツキが上段の商品棚から見つけた物は、一見金属製の小鳥の置物のようだった。
ふぬけた表情の小鳥である。
「子供用のメール交換魔道具かー。
こういうの構造がシンプルだから改造しやすいって部長が言ってたわ」
エリザベートはそう言う、
彼女は魔導具を研究開発及び爆発している自主研究サークル「ブラックマジックナイツ」のリズ副部長(偽名)らしく言葉を添えた。
「ミツキ、これ改造するの?」
ほえーと上の段からミツキがちょっと背伸びして取り出している魔道具を見上げながら、マコトがそう尋ねる。
「しない。
ほら子供用の教材って、子供が投げたり落としたりしても壊れないように、構造がシンプルで丈夫な作りになってるでしょ?
だから……多少無理なことをしても大丈夫なはず」
そのふぬけた表情の小鳥の置物を手に取るミツキ。
リズはにやにやにやにやと笑う。
「……いいわーミツキちゃん。
ジャンク機器の良さがわかってきたのにねー、
将来うちの部長みたいになるかも……」
「……」
「……ショック受けてフリーズしてる」
小鳥の置物を持ったまま固まっているミツキをマコトはゆさゆさと揺らす。
繊細な少女の心に強烈なボディブローを浴びせてしまったのだから仕方が無い。
「……ごめんなさい、あまりのショックで意識がとんでたみたい」
すーはーすーはーと呼吸を整えた後、ミツキはふと何かに気づいたように、小鳥の置物を持ったまま頭を捻る。
「……ねぇ、マコトちゃん。
今、ちょっと思ったんだけど
あの王女様……アンナ様に何か違和感……いや既視感みたいを感じない?」
「?」
ミツキは不思議なことを言う。
「何か……こう言ったらこう言い返すだろうなぁと予測できるとというか……」
それアンナ様は判りやすい性格をしている。ってことなんじゃ……。とマコトはおもった。
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