第19話 古都からの手紙 1
自国と他国の王女三名を抱えた中古魔導具ショップ「ハロー☆マジック」では、ミツキはある決断をした。
「……ケンイチを呼ぶわ。
とんでもないバカだけど、こういう時は頼りになる」
今は国交のない隣の帝国から王女二人がお忍びでやってきて、このことを無かったことにはできそうにない状況。ややこしいと言うか、子供の手には収まらないこの状況。
そんなややこしい状況の特効薬、ケンイチ。
全ては金で解決する最低な男、ケンイチ。
悪貨で良貨を吹き飛ばすがごとく、最低な時にはより最低なものをぶつけるのだ。
「ケンイチは今は新王都でしょ? 遠いよ。
連絡とかどうするのさ」
ここから新王都まで、高速列車で三時間、竜便なら一時間の距離であった。繰り返すようだが、ケンイチは糞生意気にも新王都にある大リリアリア王立学園の付属に通っているのだ。
「方法はあるわ」
「あのー」
マコトとミツキがいるこのゲストルールにはヴァルガンド連合帝国の双子の王女、エレナとアンナはいない。
「あの、あのー」
昨日の晩から深夜バスに乗り込んだ二人は、寝付かれぬ車内で汗をかいていた。そしてそのまま店のゲストルームで休んでしまった。自分の体臭が気になるのも仕方がないだろう。
「変なことしないから、これ外してよー」
そういうわけで、現在エレナとアンナの双子の姉妹はシャワーを浴びている。
そういうわけで、現在エリザベート王女は椅子にロープでぐるぐるに縛られている。
エリザベートはぷくーと頬をふくれていた。
「ダメです」
と、ミツキ。
「さすがにノゾキは養護できません」
と、マコト。
「これ以上リリアリア王国の評判を落とさないでください」
「二人のトイレに付いていこうとしたときは流石にドン引きしました」
「それは誤解よー!
私だって生理現象はあるわよー」
がたがたがたがたと椅子が揺れる。
「まぁ、縛られるのは嫌いじゃ無いけど……。
ほらわたしってさ、王族というしがらみの虜じゃない?
だからこう物理的に縛られると逆説的に色々なものから解放される感じが……」
「そういう本気語りは反応に困ります」
ミツキは腰に手を当ててはぁーと大きくため息をついた。エリザベート王女の現在の性格が形成された過程が垣間見えたようだった。
「でさ、ケンイチにどうやって連絡を取るの?
ゴエモンヤの店舗に行って商売で使ってる高速魔法通信回線を借りたいってお願いする?」
商売には情報が大事、というわけでゴエモンヤ商会は自前で各地を結ぶ通信回線を持っているのだった。もちろん他人が簡単に使えるものではない。
「それもあるけど……
ここ中古魔道具ショップでしょ?
なにか使える物があったはず」
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