第15話 ダジュナール家の悪事②

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※(坊っちゃまside)


ついに…舞踏会当日。

俺なりの復讐劇が始まった。



領主「コバルト!!これは一体どういう事だっ」


奥様「そうよ 私達は貴方をそんな風に

育てた覚えはないわ」


シラトス城の家来に取り押さえられる、

俺の両親…


なんで自分達が取り抑えられているんだと、

必死に抵抗して…

全く分かっていない様子だ。


「……どーもこーも お前ら2人は散々、

犯罪に手を染めたから

今の状況になってんじゃねーか


さあ、ここにいる全員に、

ダジュナール家の今までの悪事を

暴露してやろうじゃねーか


すうぅと息を吸い込んでから…


俺は両親に睨みをきかせ、

数々の悪事を口にした。


「俺はお前らに償ってほしい罪が2つある

まずは1つ目、俺達ダジュナール家は

建設事業以外に『人身売買』でも

成り立っている家系だ…」



『人身売買』と言葉にした瞬間

人々がどよめき始めた。


それもそうだろう…

人身売買はこの国では禁止にされている

最も重たい罪状だ。


もし、罪を犯してしまったら、

その人物はシラトス城の地下牢に

閉じ込められ一生外に出られない。



「そして…人身売買は今も続いている

でもな、今日でおしまいだ!!」


領主「コバルト…貴様…よくも裏切りおって…」


奥様「ここまで、愛情持って育てて

きたのに……でも良いのかしら?」


お袋が突然くすくす笑い出した。


……何か企んでいるのか…

俺では対処出来ない事だと…不味い


恐怖と緊張で奥歯を噛み締め、

身構える。



奥様「私達が捕まれば、使用人達はどうなるのかしら? それにコバルトだって

私達がいないと…ダメじゃない?

良いの?私達が捕まっても?」


「…………………」


何だそんな事か…


……聞いて呆れた

思わず、情けなくて笑いそうになった。


本当に…コイツらは

俺の事を見ていないんだな

自分の理想を俺に押し付けて…


俺の言葉なんて一度も聞いてくれなかった


「……お袋…安心しろ

ダジュナール家が滅んでも

使用人全員は新しい就職先が

決まっている 以前の劣悪な環境と

違ってホワイト企業だ」


奥様「なっ…何ですって?!

何もできない貴方が…」


「それに…奴隷にしようとした

オーロラとアッサムは、

シラトス城の使用人として

働く事になった 魔王様がいる限り、

もう…二度と掻っ攫う事は出来ない

残念だったな」


領主「何故?!その事を知っている!!

それに人間と妖精に対してそこまで

甲斐甲斐しくする必要ないだろ

出来が悪い種族じゃないか


…お前はいつ変わってしまったんだ」


……いつ変わった…か

最初っから俺は変わってねーよ

お前らが俺の演技でまんまと騙されたんだよ


「俺は最初っから変わってない

親父とお袋がまんまと騙されただけだ

…1つ目は以上だ!

そして、2つ目は……」


…そう、両親に復讐を誓った

【きっかけ】


「…3年前、メイドとして働いていた

スズ・シロガネを殺した事だ

忘れたとは言わせないっ!


彼女を毒で瀕死にさせ、

俺の目の前で崖に突き落とした…

よくもシロガネを殺しやがって!!」



領主「何言ってるんだ コバルト

あの女は死んで当然の事をした!

人間の身でありながら、

魔族のお前を誘惑した!」


奥様「そうよ!あの女がいると

困るのよ!貴方がダジュナール家次期当主になれなかったらどうするのよ」


コイツら……

好き勝手に言いやがって…

自分達の欲望の為にシロガネを

殺したのか


俺が勝手にシロガネを好きになっただけ

シロガネは何も悪くねーのに…


許さねぇ…


…やっぱり、俺の手で殺してしまおうか…

いやダメだ…殺してしまったら、

復讐にならない



コイツらに絶望を与える復讐にしないと

…俺の償いも含めて…


「……親父、お袋…俺は

ダジュナール家の次期当主にはならない

また、ダジュナール家は俺の代で

【最後】だ」


魔王「コバルト…最後とはどういう事だ?!」


ジンジャー「コバルトさん…まさかっ…

ダメです!やめて下さい!!」


「……魔王様、ジンジャー様、

協力して下さった皆さん…

ありがとうございます

そして申し訳ございません 」


俺は2人に謝ってから、

懐に閉まっていた

ナイフを取り出した。


すると どうだろうか

親父もお袋も見る見る顔が

真っ青になって、声を荒げた。


何やってるやめろだの

バカな事は寄せだの…


「俺が死ねば、ダジュナール家は滅びるし、シロガネや使用人達の少しの償いにも

なるだろう 冗談じゃねー

俺は、本気だ!!」


ナイフを持ち構え、

胸のから少し離れ場所に狙いも定める。


数十秒後に俺は死ぬ


でも、その前に…


俺は1人、1人、今日まで働いてくれた

使用人達の顔を全員見て…


「皆さん…俺のせいで、辛い思いをさせて

しまって、申し訳ございませんでした

……幸せになってくださいね

絶対ですよ」


そう告げ、目を閉じて

俺は持っていたナイフを

胸、目掛け振りかざした。



ジンジャー「コバルトさん!!」


魔王「…っ!!死なせてたまるか」


あと少しで胸に刺さる…


…シロガネ、俺もそっちにいくよ

俺は地獄に行くから君に会えるかどうか

分らないけど…


もし、会えたら、君は俺を怒るかな

なんでこっちに来たんだって…



???「やめてっ!!」


「……っ!!」


周囲が悲鳴や騒ぎ声で埋まる中、

懐かしい声が聞こえた。


いや…ありえない…彼女は

死んでいるんだぞ


恐る恐る目を開けると…


???「死んじゃ駄目よ コバルト君!!」


「…………な…んで…」


ガシャーン!!(ナイフを落とす音)


俺の目の前に…

艶やかな黒髪に 綺麗な薄黄色の瞳を持った


???「お願い…死なないで…」


3年前に死んだはずの

シロガネが涙をボロボロ流し、

目の前に立っていて…


シロガネ「やっと…やっと会えた」


そうして、呆然とする俺を

優しく抱きしめた。


「シロガネ…」


抱きしめられた瞬間、

彼女の温もりと甘くて優しい香りがして…

生きている事を実感した。


彼女が生きている…死んでない…

俺の願望や幻じゃない

本当の事なんだ

シロガネ…シロガネ!!


「………ぅぅ」


ついに…俺の涙腺は崩壊した。


「生きてて良かったぁぁ!

あの時、死んだかと思ったじゃんか

馬鹿野郎!!無茶しやがってぇぇ」


子供みたいに泣きじゃくり、

シロガネを力強く抱きしめた。


シロガネ「ごめんっ…本当にごめん

う…うわぁぁん」


シロガネもボロボロと涙を

流して続け、俺たち2人は

周りなんて気にせず大声で泣き続けた。


3年…どれだけ長かったか

どれだけ…シロガネを思ったか…


泣き続けて数分後、

思いっきり泣き続けた俺たちは

やっと落ち着いて…


俺は再び、ジンジャーさん、

魔王様達に向けて頭を下げた。


「…馬鹿な真似をしようとして、

申し訳ございませんでした」


…よくよく考えたら

ここにいる全員が俺たちを

見ているんだよな…


今更ながら恥ずかしくなってきた…


そう思うと頬がカアァと熱くなり、

自分の手で頬を抑え


シロガネ「見苦しい姿を失礼致しました…」


シロガネも俺と同様…

顔を真っ赤にして頭を下げた。



ジンジャー「間に合って…良かった

コバルトさん もう、こんな事しないで

下さいね」


ジンジャーさんはホッとした笑みで

地面に落ちたナイフを広い、


ジンジャー「これは没収します

さあ、2人とも折角の再会ですし…

別室でお話してはいかがでしょうか


後は俺たちに任せて下さい

執事さん!お2人を別室に

案内して下さい!」


パン パンと手を叩き、

執事さんを呼んだ。


シラトス城の執事「承知しました

では、コバルト様、シロガネさん

別室へ案内します」


シロガネさん?何で俺だけ様呼びなんだと

思ったら、理由はすぐに分かった。


シロガネ「ありがとうございます

先輩」


シラトス城の執事「いえいえ

良かったですね シロガネさん!

仕事の合間をぬって探していた方が

見つかって!」


…そういう事か!

シロガネはシラトス城の

メイドとして働いているのか


ビックリして、シロガネの顔を見ると…


シロガネ「詳しい事は別室でちゃんと話すね」


意図を取り、俺だけ聞こえるぐらいの

小声で話してくれた。


シラトス城の執事「ささっ2人とも行きましょうか」


執事の声と共に別室へ向かう…



けど、その前に……


俺は顔面蒼白になっている

両親を見てこう言った。


「お前達の過ちにより犠牲になった人々や

不幸になった人々に対して…

ちゃんと罪を償えよ

俺も…ちゃんと自分自身の罪を償うから」


言葉を聞いた両親は、

俺に対して何かを叫んでいたが、


俺は口答えをせず、振り向きもせず

シロガネと執事さんと一緒に広間を

退出した。




……これが、俺にとって

両親との最後の会話となった。



坊っちゃまside終わり








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