第14話 シラトス城の舞踏会

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ここはシラトス城の大広間…


天井からは宝石のように輝く、

シャンデリアがぶら下がっていて…

床は白く輝く大理石…


横長のテーブルには

豪華な食事が並べられ…

どれも美味しそう


そして、周りを見ると正装に身に纏った

人々が優雅に談笑をしていた。


私には縁もゆかりもない物だと思っていた。


でも、周りを見て、

着飾っている自分の姿を見ると…


「……本当に私も舞踏会に

参加しているのね」


心に思っていた事が

思わず溢れてしまう…


今の私の姿は…


華やかに化粧され、青空色のドレスに、

ダイヤモンドのネックレスとイヤリング

髪はハーフアップにして巻いている。


……裁縫と同様…

メイクや化粧は不器用な為…

シラトス城の着付け係の方が

全てやってくれた。


着付けのお姉様方

本当にありがとうございます!!

この恩は近いうちにお返しします。



アッサム「オーロラさん…何だか

こういうの初めてだから緊張するね…」


私の隣にいるアッサムさんは

不安そうに辺りを見渡した。


「うっ…うん…でも

私達なりに楽しもうよ

折角の舞踏会だし…ねっ!

ほらっ、美味しい食べ物だってあるし

それにアッサムさんは……」


ちらっとジンジャーさんの方を見た。


すると、彼女は、

一瞬にして頬を赤く染めた。


そう…アッサムさんの

舞踏会のパートナーはジンジャーさん


なんと、ジンジャーさんが、

アッサムさんに申し入れたのだ。

『俺のパートナーになってくれませんか』って


アッサム「……うっうん ジンジャー様と

舞踏会のパートナーになれるなんて

夢みたい…」


恥ずかしながら嬉しそうに

はにかむ


そんなアッサムさん見て、

羨ましく感じた。


片想いの相手とパートナーになって

一緒に行動して、踊ったりするなんて…


いいな…


私はどうなんだろう……


そうだ、私には…ルクシ君が

いるじゃない


ルクシ君はいるかな?


キョロキョロと辺りを見渡し

青みかかった黒髪の少年を

探したけど…


何処にも居なかった。


まだ、来ていないのか…

がっくりと肩を落とした所…



カツン カツン カツン……


カツン カツン…


乾いた靴音が響いた。



靴音がした瞬間、

談笑がピタリと止まり、


人々は急いで端により

全員、真っ直ぐに立ち、整列をした。


私達も見よう見まねで、

端により、整列をしたけど…


どうして、皆んなが その対応をしたのか、

全く分からない…



アッサム「オーロラさん!あのお方っ」


「…………!!」


アッサムさんの声とともに

足音がする方向を見ると

先程の対応の理由がやっと理解出来た。


青みかかった黒色に、

宝石のように輝くダークグリーンの瞳


人間でもわかる禍々しいオーラを放つ…


シラトス王国 の頂点に君臨する

魔王 シルク・クリアラン


そっか…魔王様が

お見えになったから、

皆んな 畏まっていたんだね…

横にはジンジャーさんと屈強な兵士が

魔王様を守るように歩いている。


私も失礼がないように ちゃんとしないと!



魔王様はカツ カツと祭壇へと登り、

辺り一面を見渡した後、


舞踏会の挨拶を始めた。



魔王「この度は我が行方不明になって

すまないーーーーーーーーー(略)


以上だ 皆の者、楽しむように

では、我はこれにて失礼する」


2~3分ぐらい挨拶をして、

魔王様はひるがえし、

カツカツと音を立て歩き出した。


出口へ歩き出す魔王様に対して、

人々は再び頭を深く下げる、


もちろん私とアッサムさんも

見よう見まねで頭を下げる


カツ カツ カツ


カツ カツ カツ


このまま魔王様が退出するんもんだと

思っていた。


だけど…


ザワザワ ザワ ザワ(響めき声)



ジンジャー「魔王様?

あーそういう事ですね…」


突然、魔王様は立ち止まり、

じっとある方向を見ていた。



えーと…この方向は…

…………えっ?!私?!

私を見ているの??何で?!


…いやいや、私!自意識過剰すぎるよ


周りにご令嬢もいるし、

私じゃないよね絶対に…


でも……

あのダークグリーンの瞳が、

私を捉えているような…


すると…


魔王「……………」


魔王様はふっと笑みを零した。

ルクシ君と同じあの色気が半端ない

大人の微笑みで…



「…………っ」


彼の微笑みは…


気のせいじゃない

君に向けて微笑んでいるんだ…と


言葉の代わりの意思表示だった。



……………………………………………………


……………………………………


……………………………………


数刻前…魔王様の微笑みを見て、

少し前から私の脳裏にある方程式が

確実なものに近づいていった。



『魔王様=ルクシ君』



「……………………」


……いやいや、ありえない

何度も言うけど無理があるよ私、


確証がある訳じゃないのに、

勝手に決めつけたら駄目


それに…招待状に書いてあったじゃない、

魔王様は舞踏会に参加しないって…


うん、そうだ

絶対そうに違いない


第一、私と関わっても、

魔王様になんのメリットもないし

逆に時間が勿体ないデメリットだよ


………私の気のせいだ!


さっさぁーて…ルクシ君が来るまで、

豪華な食事を頂こうかな?


そうしよう!


うんうんと勝手に判断して、

私は一直線に食事が置かれている場所へと

歩き出した。


移動中、ふと辺りを見渡した。


みんな パートナーと楽しそうに、

ダンスを踊ったり、談笑したりしていて


アッサムさんもジンジャーさんと

お互いに照れながら、会話をしていて

2人だけの世界


「……いいな……(小声)」


……みんな…楽しそうだな


なんだか、私だけ心細くなってきた

…美味しい食事で気を間際らそう


トボトボ…と食事の場所につき

皿を手に取り、食事を装う


テーブルに着き、椅子に座り

手を合わせ…


「いただき……」


いただきますと途中で言いかけた所、

物凄い勢いで誰かに腕を引っ張られ

立たされた。


えっ…何事?!


びっくりして振り返ると、

知らない男性が2名いて

その内の1人が私の腕を掴んでいた。


捕まれた腕はギリギリと音を立て

とても痛い…


この力は人間じゃない…魔族かな…


それより私はこの2人を知らない

赤の他人なのに どうして?

怖いっ…誰か助けて!!


「誰かっ…もがっ」


助けを求め、大声を叫ぼうとしたけど、

相手の素早い行動により、

口に手を塞がれ、声が出せない


バイヤー①「この女だな 今回の奴隷として売るのは?」


バイヤー②「ああ、もう1人赤髪の妖精もそうだが、シラトス城のお偉いさんがずっと側にいて、攫う事が出来なかった

今回はこの女だけにしよう」


バイヤー①「そうだな、それにしても可哀想に…まさか使用人まで売るなんて…

あそこの夫妻は鬼畜だな…」


「…………………っ」


…2人の会話を聞いて、

寒気がした。


……売られるってどういう事?

奴隷…として売るって……私を…


……人身売買だ


私、奴隷として売られる


いや…やめて……


…また奴隷になりたくない


叩かれるのも ひもじい思いをするのも

嫌だ


誰かっ……助けて!!!


目をギュッと瞑り、

暴れようとした瞬間、


いるはずのない方の声がした。


魔王「汚い手で触るな オーロラは我の女だ」


声がしたと同時に、肩を抱き寄せられ


「まっ魔王様?!」



目を開くと私は魔王様の腕の中にいた。



魔王「……シルクって呼んで」


「えっと…はい…あっあの…シルク様?!」


今の状況に色々と聞きたい事があり、

魔王様の方へ振り向いたら…


魔王「…………」


整った顔が至近距離にあって…

カチッと視線が合わさった。


この瞬間、まずいっ!と思った時は

時は既に遅し…


私に顔を背ける隙を与えず、

ガッと勢いよく両手で私の頬は掴まれ、


「………へっ…あっ…んぅぅ…」




何を思ったのか 魔王様は いきなり

私の唇に自分の唇を押し付けたんだ。



ちゅっ…ちゅく…


角度を変え、リップ音を立てて

熱い口付けが交わされる。


舞踏会の中、みんなが見ている前で……


みんな…談笑やダンスをやめ、

こちらを凝視している。



「シッ…シルク……っ様……やめ…」


……あの予想は置いといて……


なんで?!私達、今が初対面ですよね!!

…私のファーストキスが……


そう、ファーストキス、

結婚式で好きな人に初めてを捧げるって

夢を見ていた……


いっ息ができない…

ごめんなさい魔王様っ…!!



バンッ!バン!!


呼吸がくるしくなり、

必死に抵抗しようと 手を魔王の胸に

叩いても、押してもビクともしない


顔を必死に背けようと力を入れるが、

動かない。


そればかりか、頬に触れられている手は

固定が強まり、否定は許さないと、

さらに口付けは激しくなった。


もう、我慢ができなくなり、

空気を入れようと口を少し開いたら



魔王「やっと…口を開いた」


「……!!…むぐっ……むぅぅ

……………っ」



ガクンッ!



恥ずかしさと息の苦しさ


あまりに激しい口付けで、

目の前が真っ暗になった。

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