第6話 本当の正体は①



目の前の光景に思わず、

疑ってしまう



「…………」


豪華なテーブルにズラっと並ぶ

美味しそうな食事に色んな種類の飲み物…


よだれが出そう…


ジンジャー「さあ、遠慮なく

いっぱい食べて下さいね」


「あのっ…そんな…私は」


ルクシ「おねえちゃん せっかくだし

食べなよ! みんな おねえちゃんの為に

作ったんだよ 食べないなんて失礼だよ」


「……う…失礼…なのかな

うん…せっかく用意してくれたのに

そうだよね じゃじゃあ… 」



【ここは…シラトス城の中にある客室】



この部屋に案内された時は覚悟をした。


私の想像では必要な書類を書き、

ルクシ君をジンジャーさんに引き渡し


ルクシ『おねえちゃん 僕、幸せになるね

今までありがとう さようなら』


『ルクシ君!幸せになってね 絶対だよ!!』


…という風に感動のお別れになるはず……


……だったんだけど……




この部屋に入った瞬間、

何故か、シラトス城の従事者の方々から

おもてなしをされて、今に至る。


ジンジャー「オーロラさん嫌いな物があったらすぐ言ってくださいね」


従事者1「おススメ料理の魔獣の炭火焼も是非!召し上がれ」



…何故こうなってしまったのか、

分からない……


特に何もしていないのに…

何故、私はおもてなしをされているんだろう


キュルルル…(オーロラの腹の音)


「……しっ失礼しました」


ルクシ「……………」


お腹の音が鳴るのは無理もない

……朝から何も食べていないんだった


※領主様のドケチさにより、

朝ご飯が1人分しか無かった為、

それを全部ルクシにあげた。


もう…空腹の限界…

考えるのは後にしよう


領主様、奥様…

申し訳御座いません


もし、支払い請求されたら、

私の給料から引いて下さい


「いただきます!」


ついに我慢できず、

私は食事に手をつけた。



……………………………………………………


……………………………………


…………………




食事が終わりお腹が満たされた頃、


ジンジャー「では、さっそく ルクシ君の

新しい住処の手続きを始めます


まず、オーロラさんは手続きの書類を

書いて頂きたく存じますので、

別室で……」


「はっ…はい!」


ジンジャー「ルクシ君は…この部屋で

書類が書き終えるまで、

オーロラさんを待っててくれるかな?」


ルクシ「わかった」


ジンジャー「オーロラさん、使いの者が

別室へと案内を致しますので、

その方について行って下さい

頼みましたよ」


そう言ってジンジャーさんは

ドアの側にいる執事服を着た方に

目を向けた


従者2「承知致しました

では、オーロラさん、ご案内いたします

行きましょう」


執事さんはにっこりと笑い、

私の荷物を持ち、誘導を始めた。


なんて…ジェントルマン!

配慮も完璧だ…私もメイドとして見習いと…


「あっ…ありがとうございます

じゃあ ルクシ君!行ってくるね」


ルクシ「行ってらっしゃい

僕 いい子で待ってるね」



「うん!いい子で待っててね」


ルクシ君に手を振り、

私はそっとドアを閉めた。



………………………………


…………………………


オーロラが部屋を出て数分後…


オーロラの気配が感じなくなった所で

ジンジャーは、ルクシに問いかけた。


ジンジャー「さてと……

我々もお話しましょうか

聞きたい事が山ほどあるので

ねぇルクシ君………



……いや、『シルク魔王様』?」


シルク「………流石、ジンジャー

結構自信があったのに

あっさり見破られるとは…」


ルクシ…いや、シルクは苦笑いをして

元の姿に戻った。



…………………………………

………………………


オーロラが別室で書類を書いている最中


ジンジャー「やはりあなた様でしたか…」


ジンジャーはルクシ…

いやシルク魔王の姿を見て

ため息をついた。





…………………………………


…………………………


※ここからシルクとジンジャーの

会話となります。


ジンジャー… ジ

シルク魔王…魔王


ジ「…言いたい事がいっぱいあります

まず…今まで何処に居たんですか!!

しかも2週間!! 」


魔王「えーと……体力消耗して、

落ちた場所がダジュナール家の

屋敷付近だったので、

そこに居候してました」


ジ「体力消耗ね…へーほー…

魔王様でしたら、たった2日で

全回復しますよね……何故、2週間も?」


魔王「ダジュナール家の悪事をこの目で

確認する為だ!!」


ジ「堂々と嘘つかないで下さい!!

別の理由ですよね絶対!!

ほらっ ちゃんと吐きなさい!」


魔王「……オーロラとの生活が楽しくて

もう少し一緒に居たくて…

気づけば2週間立っていました…」


ジ「一緒に居たくてって…

オーロラさんの事好きなんですか?

性的な意味で……」


魔王「ああ、女として好きだ 愛している

早く僕の妃になってほしい…」


ジ「そうですか…やっと魔王様に

春が来てとても嬉しいんですよ 俺は…


でも魔王様…オーロラさんって

たしか…年齢は17歳と成人ですよね」(にっこり)※この世界の成人は16歳から


魔王「そうだか…それがどうした?」


ジ「まさかですけど…彼女との生活で

子供のお姿のまま一緒に寝たりとか

身体に触れたりとか…

お風呂に入ったりとか……

着替えを覗いたりとか

そんなふざけた事していないですよね?

ねっ?!」


魔王「……………全部しました

あっでもお風呂は一回のみだぞ」


ジ「…………」(ブチっ!!)


魔王「あっ…やばっ…

ジンジャー…一旦、落ち着い……」


ジ「貴方って人はぁぁ!!

なんて事したんですか!

只でさえ彼女に迷惑かけているのに!

身体を触った?!一緒にお風呂?!

発情するんじゃなぁぁい!!」


魔王「すまない…己の性欲には勝てなかった」


ジ「もうこれ以上、オーロラさんに迷惑

かけられません!共同生活はおしまい!!

このままだと彼女の貞操が危ないですし!」


魔王「……そんなっ…唯一の楽しみがっ…」


ジ「なので、彼女へのアプローチは後日、

魔王様ご自身で正々堂々と行って下さい!

俺もちゃんと協力するんで!!


今からオーロラさんに話をしてきます

もう世話はしなくて良いって

魔王様はここで待ってて下さい!

行ってきます!!!」


魔王「待ってくれ!!

もう少しこのままで居させてくれ

オーロラの事もそうだが…

ダジュナール家の悪事も本当の事なんだ

証拠収集の為にも頼む!!」


ジ「……ダジュナール家の悪事……

それは本当なんですか?

魔王様の虚言では……」


魔王「嘘じゃない 本当だ

これが物的な証拠の1つだ」


ジ「…!!これはっ……!! 分かりました

共同生活を許可しましょう

魔王様…頼みますよ」


魔王「あぁ…まかせろ」


ジ「あと……好きな人に触れたい気持ちは

分かりますが、あまりガッつき過ぎないで下さいね」


魔王「触れるなとは言わないんだな…」


ジ「魔王様…では触れないで…」


魔王「無理!!!」


ジ「…でしょう そう言うと思いましたよ

さあて、そろそろオーロラさんも

書類を書き終えた事ですし、

一緒に様子を見にいきましょうか?」


魔王「そうだな、あの因みに

オーロラに何を書かせているんだ?」


ジ「知りたいですか?

オーロラさんには自身の事と得意技、

職務経歴を書かせています」


魔王「……なるほど…さすがジンジャー

仕事が早いな…」


ジ「魔王様にすべて任せると

危ない方向になりそうですからね

誘拐とか監禁とか…

それを防止する為です」


……………………………….………………………………


…………………….……………………………


………………………………………



ジンジャーの言葉に苦笑いしつつ、

シルク魔王は子供の姿になり、


シルク「危ない事はしないよ……多分」


…と口を尖らせ呟いた。




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