第10話 凄腕料理人

 スープまで飲み干してから私はしみじみと手を合わせる。

『ごちそうさまでした』

『いえいえ』

 謙遜するタカナシさんに私は羨望の眼差しを向ける。

『とっても美味しかったです!北上さんと同じくらい!!』


 北上さんは氷川家の料理人の中で一番偉い人だった。

『それは恐れ多いですよ』とタカナシさんは両手を振る。

 けれど、すぐにイタズラっぽく笑って、

『でも、チキンラーメンはタカナシの得意料理ですからね。このお屋敷の中で一番に上手に作れる自信がありますよ』

『本当ですか?』

 私は目を丸くする。

 北上さんを筆頭に、氷川のお屋敷で働く料理人は皆一流の人たちだ。

 海外で修行した人や大会で優勝した人もいる。

 そんな人たちより上手に作れるなんて!!


『ええ、タカナシはチキンラーメンを作ってきた場数が違いますから』

 面白そうに言ったタカナシさんを私は尊敬のまなざしで見つめた。


 そう、当時、私はインスタントラーメンの作り方を知らなかった。



「あれ、でも、さっきはネギ切るの失敗したって言ってたよね?」

「…まあ、弘法も筆の誤りということで」

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