評判最悪男、魔女になる

出雲大吉

第1章

第001話 追放されたら仕返しだ!


 俺はご機嫌である。


 なぜなら、今日のダンジョン探索で、レアアイテムを手に入れたからだ。

 

 きっかけは、仲間が少し、休んでいこうと提案してきたことである。

 俺はさっきも休んだのに、早いだろと思ったが、優しいことに定評のある俺は、仲間に気を使い、近くにあった小部屋で休むことにした。


 その小部屋に入ると、小部屋の中央にゲームなどで良く見る形をした宝箱が置いてあった。

 俺は嬉々として、その宝箱を空けると、そこには黒い結晶が入っていたのである。


 俺はこの結晶が何か知っていた。


 それは≪帰還の結晶≫と呼ばれるダンジョンから即座に帰還できるアイテムであった。

 そして、≪帰還の結晶≫は高値で取引されるレアアイテムでもあるのだ。


 ≪帰還の結晶≫を手に入れ、ご機嫌になった俺は、予定より少し早いが、今日のダンジョン探索を終了することにした。

 

 ダンジョンから帰還後、俺はこれを売った金で何を買おうかと妄想していたら、俺のご機嫌を地に落とすアナウンスが聞こえてくる。


『ダンジョン学園3年3組の神条しんじょうルミナ。至急、支部長室に来なさい。繰り返す…………』


 俺は面倒くせーと思いつつも、呼び出されることに、多少の心当たりがあったため、渋々、呼び出しに応じることにした。


 呼び出された支部長室には、当然、その部屋の主である支部長がいた。


「来たか………神条しんじょう。何故、呼ばれたかわかるか?」

「ランクをBに上げてくれるとか?」

「…………お前をもうこの川崎支部に置いておくことは出来ない」


 はい?

 何でだよ。

 あと、スルーすんな。


「急に何を言ってんだ? 俺がこれまで川崎支部にどれだけ貢献してきたと思っている?」


 俺はCランクである。

 ギリギリ、高ランクとも呼べなくもないランクだ。

 このランクが証明するように、俺はこの川崎支部で多大な貢献をしてきた。


「ああ、確かに貢献してくれたな。私もお前の良さはよくわかっている。しかし、これは決定事項だ」

「じゃあ、いいじゃねーか。ってか、俺は学生だぞ。ここを追い出されたら、どこに行けばいいんだよ」


 俺はダンジョン学園と呼ばれるダンジョン探索者を育成する学校の生徒だ。

 そして、同じクラスの友人で組んだ6人パーティーのリーダーである。

 

 今日もいつも通り、仲間とダンジョンを探索したところで、この仕打ちだ。


「もうすぐ2月も終わる。あと少しで3学期も終わるだろ? 春休みになったら、出ていけ」

「出ていけって……じゃあ、他所の高校に編入しろってことか?」


 ひどくね?


「そうだ。お前の実家は東京だろ? そこにでも行け」

「俺はここがいい」

「ダメだ。先程も言ったが、お前にはここを出ていってもらう」


 一体、俺が何をしたというのだ!

 何故、俺を追い出す!?


「あんたとは長い付き合いになると思ってたんだがな……」

「ふぅ……私がここの支部長に就任して2年か……私はお前の才能も実力も買っていたよ」


 だったら、追い出すなよ!

 まさか、上の人間に無理矢理、命じられているのか!?

 じゃなきゃ、こいつが俺を捨てるなんてあり得ない!!


「何でなんだ……俺はあんたのために…………」

「そうだな……これまで良くやってくれたよ。この前も素敵な贈り物をありがとう。だが、これは受け取れない」


 支部長は俺が贈った菓子折りを俺に返してくる。


 何で?

 何でなんだよ!?


「足りなかったのか?」

「…………そういうことではない」

「もしかして、税金の事を気にしているのか? だったら商品券に変えるが」


 もしかして、高値で取引されるポーションとかの方が良かったのかもしれんな。


「なあ、神条、お前は中学生だろ?」

「何を今さら」

「とても、そうは思えんよ」


 支部長はやれやれと首を横に振る。


「まあ、中学生でCランクなんて、俺以外にいないしな」


 俺、すごい!


「そうではない、そうではないんだ、神条」


 支部長は俺を諭すように言う。

 

「じゃあ、なんだよ?」

「中学生はな、自分が起こした不祥事を揉み消すために、賄賂なんて贈らないんだよ!」


 賄賂なんて直接的な言葉を使うな!

 心付けと言え!


「貴様はなぜ追い出されるかわからないと言ったな? 逆に聞きたいが、なぜ追い出されないと思う? この2年間、散々、問題を起こし、挙げ句の果てには、支部長に賄賂を贈るだぁ!? 貴様、私を舐めてるのか!?」

「あん? お前が金を受け取れば、皆がハッピーじゃねーか。お前は金を貰える。俺はこれまで通りに真面目にエクスプローラをやる。ノープロブレム!」

「神条、先程も言ったが、私はお前を高く評価していた。しかし、もう無理だ。この話はお前の親御さんにも伝えてある。今日、この後に来られるから自分で話せ」


 え!?

 親、来んの?

 ってか、チクったの?


「支部長、私、反省しました。賄賂はダメですよね。もうしません」


 俺は開き直りをやめ、支部長に頭を下げた。

 

「当たり前だ。そして、その反省は親御さんにしなさい」


 嫌でーす。

 助けてー。


「支部長って、カッコいいですよね?」

「ありがとう。お前は本当にバカだな」

「てめー、ハゲのくせに何てことしやがる! 俺が親に散々、小言を言われてんの知ってるだろ!?」


 俺は悪くないのにー。


「せいぜい、反省しろ、バカ」

「クソが!!」


 俺は支部長に毒づき、支部長室を出ていった。

 

 そして、支部長が毎週末に洗車している愛車のタイヤをパンクしてやった。


 ざまあみろ!!



 その後、俺はパパとママにちょー怒られ、本当に川崎支部を追い出されてしまった。


 

 世の中、間違ってる!

 みんな、大人が悪いんだ!

 盗んだ何かで走り出してやるー!!





攻略のヒント

 ダンジョン内で死亡しても、パーティーが全滅しない限り、復活できる。

 例えば、3人パーティーの内、2人がダンジョン内で死亡しても、残り1人がダンジョンから生還すれば、死亡した2人も復活し、帰還できる。


『はじまりの言葉』より

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