第6話

 幼い頃から可愛いものに目がなかった。

ズボンよりスカートが好きだし。

車のおもちゃより着せ替え人形が欲しかった。

両親や周囲の人には理解してもらえなくて、一人ぼっちになることが増え。

これはダメなことなのかと悩み。

みんなに合わせて男性らしく振る舞う技を身につけた。

それでもやめることはできなくて。

留守番の度に母の洋服や化粧品を借りて着飾った。

大人になって一人暮らしを始めた時は解放された気がした。

もう好きな服を好きなように着ることができる。

部屋にぬいぐるみを飾ることもメイクも誰にも怒られない。

仕事が終わると帰り道のトイレで着替え、街を散策するようになった。

美しく着飾っている間は、上司に怒られるばかりの気弱な男は影を潜め。

世界が俺に微笑んでいる。

雨の中どうしようもなく座り込んでいたナミちゃんは

あの時の俺と同じような希望を失った目をしていた。

自分の人生がそんなに悪くないなと思えるまでの

どこか少しだけでも肩代わりできれば良いのに。

やっぱりそれまでの間は白雪が男だということは秘密にしよう。

もう少しだけ。

一緒に過ごす時間が長くなればなるほど

手放してしまうことが怖くなるけれど。

今はまだ。

この幸せを失いたくない。

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