第5話 新規採用

 目的地のラグアナは、アランデから二つ惑星を越えた先にある。

 港を離れればあっという間で、出港から三十分で、もうラグアナの緑が見えるポイントに到着した。

「ロクに世間話をする間もなかった。三十七番ポートだったな。港の管制に連絡して誘導してもらおう」

 私はやっと機嫌が直ったテレーザに頷いた。

 テレーザが無線交信をはじめ、そのやり取りは当然ながら、インカムでやり取りを聞いていた。

「ラグアナ管制、こちらBBJX-488ヘビィ。客先から指定された三十七番ポートに誘導を頼む」

『BBJX-488ヘビィ、こちらラグアナ管制。現在、海賊と交戦中。しばらくそのポイントで待機してくれ』

 特に慌てている様子もなく、管制から答えが返ってきた。

 私は速力計を見ながら逆噴射をかけた。

 この星は様々なものを取引する市場があるため、海賊との戦いなど日常茶飯事だった。

「手伝おうかな…」

「やめておけ、邪魔になりかねん」

 私の声にテレーザが笑った。

「それもそうだね。待ちますか」

 どうにもこの仕事は待ちが多い。

 私はコミュニケーターで砲手席を呼び出した。

『はい、分かっています。主砲を準備して待機中です』

 ロジーナが笑った。

「了解。そのまま待機して」

 私はコミュニケーターのスイッチを切った。

「ロジーナの事だ。もうIFFで敵と味方を識別しているだろうな」

 テレーザが笑みを浮かべた。

 IFFとは、お互いに電波で呼びかけ合って、返答があれば味方、返事がない場合は敵を示すという、仕組み自体は単純なものだった。

「だろうね。さて、なにがあるか…」

 私が呟いた時、小さく警報がなって、正面スクリーンの表示がグルッと回転し、後方の様子が映し出された。

 そこに映し出されたのは、時代遅れも甚だしいサリー級砲艦だった。

 黒く塗装されて見えにくくしているが、ユイの情報修正能力に掛かれば、その姿がハッキリ見えた。

「別働隊か。そこそこ大きな海賊団だね。まあ、あんなの…」

 私の言葉を遮ってコミュニケーターのウィンドウが開き、すでにヘルメットの遮光バイザーを下げた後方を向いたシノが、全部で十隻ほどのサリー級砲艦をロックオンしたと告げてきた。

「親分がいないね。多分、隊長船みたいなのがいるから、そっちも探して!」

『はい、射撃管制レーダーで探っていますが、怪しい反応が一つあります。IIFに反応がありません。ステルス性が高い船ですね』

 私の声にシノが小さく笑った。

「そこそこ力がありそうな海賊団だね。その親分船を沈めちゃって。IIFに反応しない時点で、敵対しているとみなしていいから」

『分かりました。攻撃を開始します』

 正面スクリーンの輝度が下がり、対閃光モードに切り替わった。

 ここから攻撃は見えないが、遠くで派手な閃光が走った。

『目標撃沈。サリー級が慌てて逃げはじめました』

「殲滅して。色々ウザいから」

 私はゼルマの声に答えて背後の光景を確認し、そこここで爆光が上がるのを見つめた。

『敵を完膚なきまで叩きのめしました。引き続き、警戒を続けます』

 ゼルマの声と共に正面スクリーンがグルッと前方に戻り、テレーザがラグアナとの交信を続けていた。

「ローザ、ラグアナから救援依頼だ。敵にバクラーダ級戦艦が混ざっているみたいでな。固くて面倒だから撃沈して欲しいとの事だ」

 テレーザが笑った。

「バクラーダ級って、またボロ船だねぇ。固いだけが取り柄じゃん」

 バラクーダ級はすでに退役して二十年の、骨董品のような大型戦艦だ。

 恐らく、軍の横流し品を手に入れたのだろうが、二十年の歳月は大きく、就役当時は最強といわれたようだが、当時一才の私が知るわけもなく、今になってみるとガタクタ同然だった。

「テレーザ、手はずは整ってる?」

 私は笑った。

「無論だ。ラグアナの戦闘艦は全て待避した、あとは撃つだけだ」

「分かった。ありがとう」

 私はコンソールのキーを叩いた。

「操船を一時的に砲手席に委譲。ロジーナ、ゼルマ。任せた」

 これで、砲手席の操作で船が動く。

 最適な射撃体勢を取るためだが、ガラクタ同然とはいえ戦艦となると強固な装甲に守られているし、生半可な攻撃は効かない。

 しばらくして船が動き出し、私は射撃管制モニターのウィンドウを開いた。

 これで、敵船との位置も距離も分かるし、操船しているロジーナの考えも読める。

「うぉ、撃ってきた!」

 その間に、バラクーダ級から無数のレーザが放たれ、ロジーナが常に展開している結界壁に阻まれ弾き飛ばした。

 そのお返しといわんばかりに、船を敵船と斜めに向かう形にして、前方と後方の両砲塔一斉射撃という、なかなかえげつない攻撃をした。

「うわぁ…。これはキツいな」

 私は苦笑した。

 この砲撃には耐えられなかったようで、防御シールドを展開した痕跡はあったが、抵抗虚しく、敵艦は跡形もなくガス塊になって消え失せた。

 短く警報がなって、操船が戻ってきた事を告げると同時に、ラグアナからお礼と三十七番スポットへの着岸を許可された。

「さて、荷下ろしだね。ハンスのオッサンなら、もう手配してるだろうけど!」

 私は笑った。


 ラグアナ港の牽引装置に任せて三十七番スポットに到着すると、私は船の降着脚をおろして船をスポットに泊め、シャッターが閉じてスポットの与圧が完了するのを待った。

「荷下ろしに何時間かかるかねぇ。よし、久々に地面を踏もう。ここなら色々な市場もあるし、息抜きになるでしょ!」

 私は笑った。

「分かった、ならば全員に声をかけよう」

 テレーザがコミュニケーターで各所に呼びかけた。

 すると、いい機会なので航行中はできない重力発生装置とGキャンセラーの点検をすると、ガボを中心とした機関士三人組が答えてきたので、それ以外の全員が下船してラグアナの地上に降りる事になった。

 起動エレベータは貨物専用のため、私たちはスポットの分厚い気密扉を開け、ランチと呼ばれる小型艇乗り場に向かった。

 旅客ターミナルと違って本数は少ないが、ちょうど客待ちをしていた十人乗りのランチに乗って、シートに座ってベルトをしめた。

 私たちを乗せたランチの扉が閉まり、港側の扉も閉まるとゆっくりと発進した。

「小船に揺られるのも悪くないね。普段、デカいから!」

 私は笑った。

「…操縦したい」

 テレーザがブツブツいいはじめた。

「やめなって。シミュレータで何度チャレンジしても、大気圏突入で大爆発を起こすんだから」

 私は笑った。

「それはそうだが…。私に小型艇を買ってくれ。やっぱり実地じゃないと本気が出せん」

「…どこに置くの?」

 私は笑った。

 ランチはそのテレーザが苦手な大気圏に突入し、窓の外が赤く染まった。

 それはほんの数秒で終わり、久々に緑が茂る地上が迫ってきた。

 大概の事は船で出来てしまうため、滅多に地上に下りる事はない。

 しかし、ここはテラフォーミングされて居住可能になった星で、無数のものが扱われている巨大な市場があるため、下りる価値は十分にあった。

 三十分程度でラグアナ地上港に到着したらランチは、私たちを吐き出すとそのままま港に向かって上昇していった。

「さて、市場に行こうか。なに買おうかな…」

 私は笑みを浮かべた。

「私は食材です。確か、ここでしか手に入らないものがあったはずです」

 メリダが笑みを浮かべた。

「そっか、それは楽しみだね。そういえば、厨房ってメリダが一人でやってるでしょ。辛くない?」

「はい、今は作る量が少ないので大丈夫ですが、欲をいえばもう二人か三人は欲しいです。下ごしらえなど、どうしても手間が掛かる時に、助っ人が欲しいです」

 メリダが笑った。

「じゃあ、求人出してみる?」

「いえ、大丈夫です。負担はかけられません」

 私の問いにメリダが笑みを浮かべた。

「そっか、無理ならいってね」

 私は笑みを浮かべた。

 私たちは地上港の発着場からターミナルに入り、その先にある市場を目指した。


 ターミナルを出ると、すぐに屋台が並ぶ市場に出た。

 はっきりいって、この星には自然と市場しかないので、この市場外にでれば美味しい空気が吸える。

 もっとも、この市場から出るのは大変だし、外に出るには特別許可が必要なので、今回はパスである。

「はい、ランチから持ちだしたいい加減なマップではなく、私が正確なマップを描きます。みなさん、はぐれないように!」

 ジルケが生き生きとしてノートを取り出したが、さっそくテレーザがフラリとどこかにいってしまった。

「ああ、ダメです。私の晴れ舞台が!?」

 ジルケが半泣きになった。

 ロジーナとゼルマが小さく笑って、ジルケに張りついた。

「はい、いきましょうか。メリダはどうしますか?」

「もちろんついていきます。ゼルマと一緒なら、はぐれる事はないでしょう」

 ロジーナの問いに、メリダが笑った。

「私もついていくよ。この人混みじゃねぇ」

 私は笑った。


 いきなりだが…はぐれた。

 市場の中で取り残された私は、腕時計形のコミュニケーターで呼び出しをかけてみたが、大勢の人が使うようで、『busy』とういう表示が出るだけだった。

「あーあ、どうしようかな…」

 私は人混みを掻き分けながら進み、適当な屋台でリンゴを買って囓ったり、はぐれたならはぐれたなりの楽しみ方をしていた。

 市場の片隅にはタクシー乗り場があり、帰りに困ったらそこにいって地上港を目指せばいい。

 そんなことを考えていると、いきなりコミュニケーターの呼び出し音がなった。

「やっと繋がったか」

 私は苦笑して、コミュニケーターの応答ボタンを押した。

「今はどこにいる?」

 虚空に開いた小さなウィンドウに向かって、私はジルケに向かって問いかけた。

『はい、市場の中心付近です。シャルウッドの森という喫茶店でお茶していますが、分かりますか?』

 ジルケが笑みを浮かべた。

「マップにもないし、そんなピンポイントな場所を指定されても分からないよ。一時間後にタクシー乗り場で!」

 私はコミュニケーターのスイッチを押し、満足して歩みを進めた。

「それにしても、賑わっているね。ここは、いつきてもそうだ」

 私は笑い、市場をつき進んだ。

 己の方向感覚を信じて進んでいくと、徐々に人混みが途絶え、引き返すかと思った時、いきなり背後から押さえられ、口に薬品臭がする布を押し付けられた。

「…しまった」

 それが最後に呟いた言葉で、私の意識は暗転した。


「…」

 頭痛で目を覚ますとどこぞの洞窟のような場所で、首輪と鎖で岩盤に繋がれていて、同じ境遇にある人たちが二十名ほどいるのを確認した。

「この数…人買いか」

 悲しい事に、この商売だけはなにをやってもなくならない。

 ここは獲物の収集地点らしく、見張り役が一人で無線交信をしていた。

「はい、大分溜まりました。回収をお願いします」

 電灯の明かりで見える肌の色が薄黒い…ダークエルフだった。

「…また、面倒だな。こいつら頑丈だから」

 私は呟き、改めて見回すと実にいい加減で、コミュニケーターすら外されておらず、手足は自由だった。

「…なんだ、素人?」

 私は笑みを浮かべ、呪文を唱えた。

 前方に突きだした私の手から、純白の光りが吐き出された。

 宇宙ではなにが起きるか分からないので、攻撃魔法の使用が禁止されているが、安定している惑星の上なら問題なかった。

「光りの矛!」

 飛び出した光りは矛の形になり、驚き顔のダークエルフを蒸発させた。

「ふぅ…。さて、みなさん。脱出の時間ですよ!」

 私は魔法で首輪を外し全員を自由にしたあと、ツアーガイドのように先頭を進んでいくと、完全武装のテレーザとジルケがやってきた。

「やっと、コミュニケーターのログ解析が終わりました。ローザの反応がここで消えていたので、すぐに分かりましたよ」

 ジルケが笑みを浮かべた。

「よし、問題ないな。ちょっと大所帯だが、洞窟の掃除は終わっている。ダークエルフとは、また面倒なヤツらだったぞ」

 テレーザが笑った。

「ありがと。さて、いかないと…」

「はい、この洞窟はグネグネしてはいますが一本道です。航法士的に問題ありません」

 ジルケが笑った。

 そのジルケが先頭に立って洞窟を出て、迎えにきてくれた時に使った様子のトラックがの荷台に全員を乗せた時、空からランチが下りてくるのが見えた。

「フン…下らん」

 テレーザが空間ポケットから筒状の武器を取り出し、そのランチに向かって構えた。

 ガーガーいう電子音が響きピーとなった時に、テレーザがなにかを発射した。

 オレンジ色のロケットエンジンの光りがランチに向かいモロに命中すると、ランチはコントロールを失ったようで、明後日の方向に吹っ飛んていって地面に激突して真っ赤な炎が上が上がるのが見えた。

「まあ、旧式の地対空ミサイルも、こういう時は役に立つものだ。真似はするなよ」

 テレーザが笑った。


 トラックに揺られて市場に入り、車が通れるように整備された車寄せの端にテレーザが駐めた。

「さて、お疲れだと思うから、とりえあえず私の船で休んで。荷下ろしもそろそろ終わっているはずだし…」

 私はコミュニケーターでユイを呼び出した。

「どう、終わった?」

『はい、今は機材の片付け中です。あと十五分もあれば、スポット内に入れますよ』

 ユイの声に、私は笑みを浮かべた。

「ちょうどいいね。みなさん、料金は持つからタクシーで移動しよう!」

 私が笑み浮かべた時、テレーザが荷台に乗ってきた。

「バカ者、なぜ無駄な金と手間をかける。このまま、トラックで三十七番スポットに行くに決まってるだろう。その前に健康チェックするだけだ」

 テレーザが笑い、ロジーナが笑って荷台に乗り込んできた。

「はい、ロジーナと申します。これから私が簡単に診ますので、安心して下さいね」

 ロジーナはまず私のチェックをして、問題ないと診断され、あとは助けた二十名ほどの人たちを診察していった。

「はい、若干衰弱が見られる方がいますが、問題ありません。私たちは不審な人物ではありません。このローザが経営している船会社の船員です」

 ロジーナが私を立たせ、頭の後ろをそっと押してお辞儀させた。

 それで、どうにも緊張していた様子のみなさんが、息を吐いて笑みを浮かべた。

「また勢いでやったでしょ。ちゃんと自己紹介くらいしなさい」

 ロジーナが笑った。

「いけね…。これからどうしようかな。思い出したけど、パトロール艦隊がウロウロしているから任せるか…」

「パトロール艦隊は、違反の罰金を取るだけで当てになりません。しかるべき場所まで送るのが筋でしょうね。ちゃんと、ここの警備隊から依頼書とお金を受け取っています。ここまでしないと、今度はこちらが人さらい扱いされません」

 ロジーナは画判が押された依頼書とお金を、私に手渡してきた。

「それもそうだね。うっかりしてた」

 私は頭を掻いた。

「全く…。それでは、いきましょうか」

 ロジーナはこのまま荷台に残るようで、テレーザが荷台から飛び下りて運転席に戻ったようだった。

 トラックが走りだし、車寄せから各スポットへのランチ乗り場に向かっていった。


 三十七番スポットへのランチ乗り場に到着すると、まずは救出した人たちを宇宙港に送り出した。

「このトラック、実は新車なんだ。またレンタル屋が融通が聞かなくてな。せっかく買ったからこのまま船に乗せたい。いいか?」

 テレーザが問いかけてきた。

「いいよ、ずいぶんゴツいモデルだね。代金は経費で落すから。領収書ちょうだい!」

 私はテレーザから領収書を受け取り、携帯端末を操作して会社の資金からテレーザの口座に入金した。

「これでよし。早く貨物用の軌道エレベータにいって」

「分かった、そのまま上るから、先にいっててくれ」

 テレーザがトラックを運転して、ちょっと離れた場所にある軌道エレベータの搬入口に向かっていった。

 ちなみに、軌道エレベータとは地上から宇宙まで昇降する便利な装置で、チューブ状のエレベータシャフト内はちゃんと与圧されている。

「さて、私たちはランチでいこうか。一緒にいければ簡単だったんだけどね」

 私は笑みを浮かべ、みんなと待機していたランチに乗った。

 貨物用軌道エレベータには規則があり、原則として人は乗り込んではならない。

 例外は車両などの運転手が必要なもので、最低限の人数なら乗っていい事になっていた。

「メリダ、船に着いたら食事の準備をしてね。美味しいもの、食べたいだろうから」

「はい、分かっています。腕によりをかけますので」

 メリダが笑った。


 ランチでスポットに到着すると、救助した二十名がポカンと船を見上げ、先に着いていたテレーザが運転してきたトラックが、開放されたままのカーゴベイに船のクレーンで積み込まれている最中だった。

「ようこそ、ジュノーへ!」

 私は笑った。

 なにしろ、普通の貨物船とは姿形がまるで違う。

 驚くのも無理はなかった。

「では、船内に案内します。ついてきて下さい」

 ロジーナが笑みを浮かべ、二十名の救出した人たち引率して、船内に導いていった。

「さて、みんな乗るよ。ハンスのオッサンがこのスポットを十二時間借り切っているから、ゆっくりでいいんだけどね!」

 私は笑った。

 なぜそんな事が分かるかというと、スポットの耐圧扉の上に、『貸し切り 十二時間』と表示されているからだ。

 そういうチェックは怠らない私だった。

「そうだな。あと六時間は余裕がある。ゆっくりしよう」

 トラックから降りたらしいテレーザが、腕時計を確認して私の横に立ち小さく笑みを浮かべた。

「では、私は先にいきます。料理を作らないと」

 メリダが元気よく笑みを浮かべ、タラップを上っていった。

「よし、私たちもいこうか」

 残ったテレーザとゼルマ、ジルケに声をかけ、私はタラップを上って船内に入った。

『ロジーナです。みなさんを食堂に案内しました。まずは食事をと』

 コミュニケーターでロジーナから連絡があった。

「うん、分かった。メリダがいったから、すぐに食事になるよ」

 私はロジーナに返し、整備しているはずのカボたち機関士三人組を呼び出した。

『はい、カボです。整備が終わって機関室にいます』

 確かに、コミュニケーターの光景は機関室だった。

「分かった。手が空いているなら、食堂に集合!」

 私は笑った。


 滅多に使わない食堂だったが、ユイがオートクリーナーを使って毎日掃除してくれるので、ゴミや埃が溜まっているような事はなかった。

 キッチンというか厨房ではメリダが一人で食事を作り、手空きの機関室三人組がそれを配膳していた。

「みなさん、改めて。私はローザ。この『ギャラクシー・エクスプレス』の社長兼操縦士兼船長です。みなさんをこれからセントラル港まで案内します。ここであれば、いけない星はないので」

 私は声を張り上げ、軽く一礼した。

 セントラル港とは、宇宙に浮かぶ巨大ステーションで、あらゆる旅客船や貨物船が寄港する、まさに真ん中にあるハブ港だった。

 念のため、ロジーナがみんなにアンケートを取り、どこに帰るのか確認して回った。

「ローザ、五人を除いて全員アラベトです。いっそ、このまま連れていった方が早いですよ」

 ロジーナが笑みを浮かべた。

「そうなんだ、団体旅行だったのかな…」

「はい、買い物ツアーの最中にさらわれてしまったそうです」

 ロジーナが笑みを浮かべた。

「そっか、ならアラベトにいくか。残り五人は?」

「はい、旅客船の船員だったそうですが、この港に停泊中にさらわれ、挙げ句の果てには会社が倒産してしまい、船も没収されてしまったとのことで、ここから動けないところだったとの事です」

 ロジーナが笑みを浮かべた。

「そっか、悲惨だな…。って事は、行く場所がないの?」

「はい、そのようです。雇って欲しい、乗せてくれる船が欲しいとの事ですが、面接しますか?」

 ロジーナが笑った。

「そりゃ面接するしかないでしょ。連れてきて!」

 私はテーブルを動かして食堂の片隅に面接スペースを作り、ロジーナが五人を連れてきた。

 テーブルを挟んで向き合うと、椅子を引っ張ってテレーザがやってきた。

「うん、一応副社長だしな。改めて、私はテレーザという。よろしくな」

 テレーザが笑みを浮かべた。

「さて、まずは自己紹介いこうか。誰からでもいいよ」

 私が笑みを浮かべると、向かって一番右の人が椅子から立ち上がって一礼した。

「そう堅苦しくしないでいいよ。同じ捕まった身でしょ」

 私は笑った。

「は、はい。私はパウラ・テレスと申します。前の船では、航法士をやっていました。よろしくお願いします」

 ペコリと頭を下げた。

「航法士ね。ジルケが認めればだけど、航法士は二人いないと辛いはずなんだよね。給料は安いけど、採用するよ。ところで、関係ないけどエルフ?」

 私はパウラの細く尖った耳をみて問いかけた。

「はい、そうです。年齢は聞かないで下さいね」

 パウラが小さく笑った。

「うん、やめとく。機関士のカボもエルフだし、珍しくないから安心して。さてお次は…」

 私が声をかけると、その隣の女の子が立ち上がった。

「リア・アレンです。前の船では厨房で働いていました。その癖でここの厨房をそっと見ていましたが、一人で切り盛りするのは大変かと…」

 リアが笑みを浮かべた。

「そうなんだよ。基本的には一人で大丈夫っていってたけど、メリダは時々もう二人くらい欲しいっていうんだよね。採用。さっそくだけど、厨房に入ってメリダのお手伝い!」

「は、はい!」

 リアが慌てて厨房に飛び込んでいった。

「はい、次は?」

 リアの隣に座っていた極端に身長が低い女の子…ホビットだとすぐ分かったが、そっと立ち上がった。

「初めまして、スージー・カオレットと申します。見ての通りホビットなので、なかなか採用してもらえなくて。リアと同じ厨房で働いていました。よろしくお願いします」

 スージーはペコリと頭を下げた。

「はい、採用。急いで厨房へ!」

 私は笑った。

「えっ、はい!」

 よほど驚いたか途中で転んでしまったが、スージーも厨房に飛び込んだ。

「ローザ、ありがとうございます。料理が早く出来ますよ」

 カウンターの向こうで、メリダの笑い声が聞こえた。

「うん、よかった。さて…ま、まさかと思うけど、コモン・エルフ?」

 透き通るような白い肌に、額にエルフの唯一神エラドの紋章が描かれた彼女は、ニコニコと頷いて立ち上がった。

「よく見逃されるのですが、なかなか見る目がある方のようで安心しました。私はヴェラと申します。前の船では、自衛用の火器管制を務めていました。お役に立つようでしたら、採用して頂けると助かります」

 ヴェラは笑みを浮かべた。

 コモン・エルフとはエルフの中でも上位に当たる、数が少ない種族である。

 魔法が得意で狩猟も得意。見かける事自体、珍しかった。

「そ、そう…配置場所はあるんだけど、ロジーナが納得するか…頭がカボチャ並みに固いからなぁ」

 私が呟いた時、いきなりゴスッと頭になにか落ちた。

 見るとカボチャを抱えたロジーナが、小さく笑った。

「誰がカボチャ頭ですか。確かに、眠る事が許されない部署なので、交代要員を探していたのは事実です。採用ですか?」

 ロジーナに聞かれて、私は笑みを浮かべた。

「採用に決まってるでしょ。ロジーナが嫌がらないって事は、もう腕を見抜いたんでしょ?」

「見抜くもなにも、分からない方がおかしいです。私は砲手室のロジーナです。お話ししましょう」

 ロジーナがヴェラの手を引いた。

「えっ、砲手。貨物船ですよね!?」

「社長の趣味で重武装なんです。ご飯を食べながら説明しましょう」

 ロジーナがヴェラの手を引っ張って、食事が並びはじめたテーブルに向かった。

「ふぅ、これで少しは楽になるかな」

 私は笑った。

「さて、最後だよ。油のニオイで分かる。機関士でしょ?」

 私は最後に残った女性に声をかけた。

「はい、機関士のテア・コンウェルです。エンジンの調整なら任せて下さい!」

 テアが笑みを浮かべた。

「エンジン調整ねぇ。この船、EB-567を二十発積んでるけど大丈夫?」

 瞬間、テアが固まった。

「な、なんと…」

 まるでお守りのように、テアが持っていたレンチを握りしめた。

「最高の職場環境です。高速戦艦でも八発程度なのに、それを二十発も…。腕が鳴ります!」

 テアが笑った。

「よし、よくいった。採用。カボっていうのが機関室を取り仕切っているから、あとで紹介するよ」

 私は笑った。

 こうして、新たに五人の乗員が増え、私は笑みを浮かべた。

「これで、少しは余裕がでるかな」

「そうだな。今まで、よくこの人数でやっていたもんだ。さて、ゆっくりメシにしよう。滅多にないからな」

 テレーザが笑った。


 やっと開放されたからか、ご飯は賑やかなものになった。

 話しを聞くと、最大で二ヶ月半も閉じ込められ、その間に与えられた食事はパンと具のない冷めたスープだったそうだ。

「全く、ろくでもない…。それにしても、よく場所が分かったね。洞窟の中だから、コミニュケ-ターの電波もろくに届かなかったと思うけど」

 私はちょうどそばにいたテレーザに問いかけた。

「魔力探索だよ。お前の人並み外れてサイケデリックでアバンギャルドな凄まじい魔力は、監視衛星でも捕捉出来るほどだったんだ。かえって分かりにくいほどのな。それで、近所までトラックでいったら、洞窟からいきなりドバッと白い光りが吹き出たから、ああやったなって思って、あとは適当にな」

 テレーザが笑った。

「なんだ、頑張らなくてもよかったか」

 私は苦笑した。

「捕まっても黙ってるお前じゃあるまい。さて、そろそろお開きの声をかける頃だな。あと四時間ほどだが、仮眠にはちょうどいいだろう」

 テレーザが笑った。

「そうだね。たまにはベッドで寝るか。みんなを部屋に誘導しないといけないしね」

 私は笑みを浮かべた。

 テレーザが救出した二十人を居住区画にある数百人分の部屋を一つ一つ割り当てていく作業を担当し、私は新たな仲間に部屋割りを書いた紙を手渡し、カードキーを渡した。

「まあ、船に乗っていたなら分かるだろうけど、あまり使う事はないと思うよ。私物置き場に使って!」

 私は笑った。

「あの、さっそく機関室を確認したいのですが…」

 テアがそっと呟いた。

「うん、あとで取りまとめ役のカボに聞いて。今は寝た方がいいよ。航海がはじまったら、寝場所は機関室の簡易ベッドになりかねないから」

 私は笑った。

 結局、みんな一度部屋に引っ込み、しばしの休息を取る事にした。

 トラムで居住区画にいくと、私たちは自分の部屋に引っ込んだ。

「はぁ、こうしてベッドで寝っ転がるのはいつぶりだろ。操縦席もフルリクライニングにすればベッドみたいになるんだけど、熟睡はできないからね」

 私は小さく笑った。


 二時間ほど軽く寝て、私はベッドの上に起き上がった。

「さて、操縦室にいくか…」

 私は欠伸を一つしてから部屋を出て、ちょうど止まっていたトラムに乗り、操縦室に向かった。

 程なく第三エアロック前に到着し、操縦室の扉を開けて中に入ると、ジルケとパウラが額を突き合わせてなにかやっていた。

「あれ、なにしてるの?」

 私の問いに二人が笑った。

「二人でアラベトまでの最短航路を考えていました。私は航路468を使って転送航路に入った方が近いと思ったのですが、この船の性能であれば航路外を航行した方が早いという話しで…」

 パウラが苦笑した。

「そうだね。急ぐなら航路外をすっ飛んだ方が早いね。468は幹線航路だし、混んでて大変だよ」

 私は笑って操縦席に座った。

 貸し切り終了まであと四十五分。そろそろ、チェックを開始する時間だった。

 私はコミュニケーターで、まだきていないテレーザを呼び出した。

『どうした、時間か?』

「うん、あと四十五分くらいだよ」

 コミュニケーターのウィンドウに表示されているテレーザが、なにやら困った顔をした。

『タイミングが悪かったかもしれんな。今は全員で風呂に入ってる。注意を促すが、変に揺れると危ない』

「分かった。時間は時間だから出るけど、そっちの様子をみるのは任せたよ。目を離しても大丈夫な感じになったら、操縦室にきて!」

 私はコミュニケーターの画面を閉じ、ユイに話しかけた。

「ユイ、全システム起動。カーゴハッチ閉鎖をチェックして」

『承知しました。全システム異常なし。カーゴハッチ閉鎖を確認。与圧問題なし』

 ユイの答えに満足し、私は笑みを浮かべた。

「あら、もう一人?」

 パウラが辺りを見回した。

「違う違う、この船を管理している搭載AIだよ。今は船を動かしながら新しく乗員になった五人をスキャンしてるけど、それは許してね」

 私は笑った。

『はい、好奇心旺盛なんです。ちなみに、パウラさんの苦手な食べ物はピーマンの肉詰めです』

 ユイが笑った。

「あら…すごいですね」

 パウラが苦笑した。

「あれ美味しいのに。まあ、いいや。やっておくか」

 私は船内放送の受話器を取った。

『お待たせしました。本船は間もなく出港します。旅客船と違って、貨物船の牽引は手荒なので、揺れる事が予想されます。お近くの手すり等にお掴まり下さい』

 私は受話器を戻して笑った。

 次いで、私はインカムをつけ、港の管制に繋いだ。

「こちら、三十七番スポットに停泊中のBBJX-488ヘヴィ。出港の許可を求める」

『BBJX-488ヘヴィ、こちらラグアナ管制。出港を許可します。牽引しますので、準備を』

「BBJX-488ヘヴィ。了解した。なお、警備隊からの要請で旅客がいる。なるべく丁寧に牽引を」

『管制了解。警備隊から依頼書が届いています。慎重に牽引するため時間が掛かかかります。それは問題ないでしょうか?』

「問題なし。よろしく」

 管制との連絡を終えると、私は正面スクリーンの画像を背後に向け、様子を覗った。

 音は聞こえなかったが、シャッターに『減圧中』と表示されていたが、程なくそれが消えてシャッターが開いた。

 コンソール上の黄色いランプが点灯し、船はゆっくり牽引されて後退を開始した。

 確かにゆっくりで、なるべく衝撃がないように丁寧に牽引されている事が分かった。

「やればできるじゃん。いつもこうあって欲しいよ」

 私は笑った。

 まあ、貨物船は時間が命ということもあるので、どうしてもドッカンバッタンするのは道理だった。

 船が完全にスポットから出ると、私は降着脚を格納し、正面スクリーンの画像を前方に戻して、牽引が終わるのを待った。

 私はコミュニケーターを操作して、機関室のカボを呼び出した。

「カボ、いくよ。大丈夫?」

『はい、問題ありません。今はテアの勉強を兼ねて、テレーゼとティアナが一緒に三人でメインエンジンをチェックしています。今のGキャンセラーなら問題ないとは思いますが、念のために座席に呼び戻します。百二十秒下さい』

 カボは普段通り、優しい笑みを浮かべた。

「了解。今回はメインエンジンをフル稼働二秒で足りるでしょ。テレーザもいないし、しばらくサブエンジンで加速するから」

 私は笑みを浮かべた。

 当然といえば当然だが、馬鹿野郎な推力を誇るメインエンジンだけでは小回りが利かないので、サブエンジンが四発積んである。

 これは、本来はこの船に標準装備されている当たり障りのないエンジンだが、速力調整に重宝していた。

 船は牽引されるままスポットを出て、たっぷり時間をかけて方向転換した。

 ここで牽引が切れたので、私は管制に礼を述べてからサブエンジンを起動した。

 どのみち、メインエンジン使用禁止圏内から出るのに、しばらく時間がかかるので、その間にテレーザが帰ってくるのを待てばよかった。

 船が航行をはじめてしばらく経つと、私は船をフルオートモードに切り替えた。

「ローザ、アラベトまでのルートですが、航路外をショートカットでいいですか?」

 ジルケが聞いてきた。

「うん、その方が到着が早い。ルートの入力をよろしく」

 私はシートの背もたれに身を預けた。

「はい、分かりました。パウラさん…いえ、パウラ。やり方を教えますね」

「分かりました、お願いします」

 航法士席でジルケとパウラが並ぶ姿を見て小さく笑い、私は進行方向を見つめた。


 船が進んで間もなくメインエンジン稼働禁止圏内から出ようという頃になって、操縦室にテレーザか入ってきて、操縦席に座った。

「そっちは片付いた?」

「まあ、大体な。全員風呂から上がって部屋の中だ。安全ベルトをしめておくように指示をしておいた。なんで私が引率役なんだかな」

 テレーザが笑った。

「いいじゃん。チョコバーちょうだい!」

「やらん。私が食う」

 テレーザはいつも通りチョコバーを囓り、シートに座ってベルトをしめた。

「ケチ…まあ、いいや。そろそろメインエンジン可動だよ。ルートは自分で確認して!」

 私は笑みを浮かべた。

 テレーザがチョコバーを口に咥え、コンソールのキーを叩いた。

「うん、なるほどな。航路外をショートカットか。メインエンジンの稼働時間は二秒に設定されているが、四秒の方がいい。海賊が近寄れん速度で抜けるぞ」

 テレーザがオートプログラムを修正した。

「まあ、アラベトを通り過ぎなきゃいいけど。航行時間は二十分くらいか」

 私は笑みを浮かべた。

 

 船はメインエンジン可動禁止圏内を抜けると同時に、全機フル稼働で一気に速度を上げた。

 前は強烈な重力加速度が全身に襲い掛かってきたものだが、今は特に派手な事はなく軽い衝撃とGキャンセラーの甲高い音が響くだけだった。

「あれ、拍子抜け…」

 私は苦笑した。

「まあ、善し悪しなんだが、積み荷の事を考えればこの方がいいだろうな。よし、四秒でサブに切り替わった」

 メインエンジンの豪快な加速が終わり、私は機関室のカボにコミュニケーターで呼びかけた。

「メインエンジン稼働は終わったよ。勉強したかったら今だよ」

『はい、分かりました。テアが感激して泣いちゃいましたよ』

 カボが笑った。

「そ、そこまで…。まあ、いいや。あとはサブエンジンだから、安心してね!」

『はい、一応点検しておきますね。それが仕事なので』

 カボが笑みを浮かべ、コミュニケーターを切った。

「まあ、異常はないと思うけどね。点検するなら、逆噴射のあとなんだけどな」

 私は苦笑した。

「まあ、そうだが点検しておいて損はないだろう。そろそろアラベトの管制区域だ。コンタクトしてみよう」

 テレーザが無線交信を開始し、私は改めてオートプログラムを見直した。

 自動的にメインエンジンの逆噴射で急激に速度が落ち、サブエンジンのみでアラベトへの接岸コースに入った。

「アラベトには閉鎖式スポットが一つしかない。それも、本来は中型船までの作りで大型船の収容は考えられていない。開放式スポットだな」

 テレーザが確認するように呟き、コンソールのキーを叩いた。

 開放式スポットとは、ドッグのように閉鎖されるスポットではなく、アームのような連絡通路とドッキングするタイプのものだ。

 アラベトは農業中心の素朴な田舎惑星なので、港が小さいという事は知っていた。

「アラベトから接岸許可が出た。あと五分もあれば着く」

「よし、開放式スポットでしょ?」

 私はテレーザに確認した。

「いや、それがな。輸出する農産物が増えて、最近になって大型貨物船も停泊できる閉鎖式スポットを作ったらしい。ついでに、仕事も頼まれたぞ。カボチャとジャガイモの輸送だ」

 テレーザが笑った。

「インカムを外してた。そうなんだ」

 私は笑った。

「バカ者、インカムはつけておけ。閉鎖式なら楽だな」

 テレーザが笑みを浮かべた。


 管制の誘導と牽引に従って真新しい閉鎖式スポットに船を進め、シャッターが下りると与圧が開始された。

「さて、着いたね。これで、一仕事終わったか」

 私はシートに座ったまま伸びをした。

「よし、私がお客さんを誘導してくる。お前はスポットに下りていろ」

 テレーザがシートから立ち上がって、操縦室を出ていった。

「ユイ、システムをアイドルモードに。カーゴハッチを開けておいて!」

『承知しました』

 機械音が響き、カーゴハッチオープンの表示がコンソールのディスプレイに表示された。

「よし、いくか!」

 私はシートから立ち上がり操縦室を出た。

 一番近いエアロックではなく、トラムで居住区画に近いエアロックに向かうと、ユイが船から下ろしてくれたステップを使ってスポットの床に下りた。

 しばらく待っていると、テレーザに誘導されて救助した二十名のみなさんがステップを下りてきた。

「お疲れさま!」

 私が笑顔で出迎えると、みんな一様に礼をいってくれてからスポットの外に出ていった。

「よし、今度は荷物だね。カボチャとジャガイモなんてここらしいね」

 私は笑みを浮かべた。

「まぁな。さて、荷積みだ。オートでやるらしいから、私たちは船内に待避しておこう。危ないからな」

 テレーザが笑い、私たちはステップを上って船内に戻った。

 たまにはこういう事もある。

 旅客船ではないので乗り心地はよくなかったかもしれないが、誰も文句をいわなかった事から、それなりに快適だったのだろう。

「さて、次はどこだ」

 トラムに乗りながら、私は笑ったのだった。

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