お前の処女を守るから俺の童貞を奪ってくれ!

倉之輔

第1話 出会い

 俺、高校二年生の月島日向つきしまひゅうがは童貞だ。

 童貞はともかく、高校生ともなれば女友達の一人や二人はいてもいいかもしれない。

 少し話を盛れば彼女がいてもおかしくはないだろう。しかし、俺には一切そういったことが無い。

 なぜなら俺は『女性恐怖症』なのだ。

 なんだよそれと思う人もいるだろう。俺の場合は女性とまともに会話が出来ない、身体に触れたりすることが出来ないなどの例が挙げられる。

 俺はこの病に数十年間苦しまされていて、女子と仲良く出来たことが一度もない。これさえ無ければ俺の学園生活はもっと華やかな物になっていたことは言うまでもないだろう。

 そんな俺は今一人寂しく下校中だ。


「……おい!いたか!?」


「いねぇぞ!どこ行きやがった!あの野郎!」


 俺の前を二人組のヤンキーが通り過ぎて行く。

 怖い怖い。あんなのと関わるのは勘弁して欲しいね。


「……ちょっと!ちょっと!そこ、どいてぇぇぇぇぇ!」


「え……って、ぎゃあぁぁぁぁぁ!」


 俺は真正面から走ってきた謎の人物に押し倒される。

 その時はパーカーのフードを深く被っていたため、顔はハッキリとは見えなかった。


「いててっ……ごめなさい!大丈夫ですか?」


「俺は大丈夫だけど。そっちは?」


「問題無いです!」


 やや甲高い声。身長は160センチは無いくらい。肉付きからして中学生ぐらいだろうか。

 俺は勝手にそう認識してしまう。


「おい!あっちに走って行ったぞ!」


「絶対に逃がすなよ!全員で捕まえるぞ!」


 今度は向こうから別の男達の声が聞こえてきた。

 これまた相当怒っている感じだ。


「うげぇ……まだ諦めてないのですか……」


「もしかして、君を探しているの?」


「そうです。あれこれ一時間近くはあの人達と鬼ごっこしてますね」


 一時間って余程のことがあったんだな。

 俺には関係の無いことだから別に良いんだけどね。


「とりあえず、早く逃げなよ」


「分かりました。押し倒しちゃってすみませんでした!」


 少年らしき人物は立ち上がり走り去って行く。


「さて、俺はどうすればいいんだろう」


 もしもの話だが、こっちにあの男達が来たら嘘を付いて少年の逃亡の手助けでもするか。

 そして後ろから足音が聞こえてきて俺は振り向く。

 しかし、そこにはさっき走り去って行った少年の姿があった。


「逃げようと思ったんだけど、殆ど囲まれちゃって。助けてくれませんか?」


「は……?俺にどうしろと?」


「とりあえず、そこの陰にでも隠れて作戦会議しませんか?」


 少年が指を差した建物の陰に俺達は一旦身を隠した。


「それで君は何をしたんだ?」


「……ちょっと、言いづらいですね」


「金盗んだとか?」


「お金は盗んでないです。盗みよりは軽いことだと思います」


 金を盗むよりも軽いことはいくらでもあるが、こんなか弱そうな子がやることなんて思い浮かばないな。


「男の君があのヤンキー達に追われる理由って――」


「……おとこ?」


「え?君は男じゃないの?」


「私、女ですよ?」


「……まじで?」


「まじです」


 そう言うと、俺が少年だと思っていたその子は深く被ったフードを脱いだ。

 そうして俺の目に映ったのは、こちらを睨む銀髪ショートヘアの女子だった。


「な、なんで女なんだよ!」


「なんでとは失礼な!女だから女なんですよ!」

 

 驚く俺を見て、彼女は頬を膨らませて顔を赤くして怒る。

 男だと思っていたのだから驚くのは当然のことだ。


「俺の勘違いを返せ……」


「あなたが勝手に勘違いしただけでしょ。私には何の非もありません」


 彼女は怒った表情のまま、そっぽを向く。


「まあ、話を戻すけど……君があの男達に追われている理由というのは?」


「あれは全員が私の元カレです。そして私に性行為を持ちかけて振られた男達でもあります」


「……は?」


「そしたらどういうわけか、一致団結して私を捕まえて犯す計画を立てたみたいなんですよね」


「待て待て」


「はい?」


「意味が分からない」


「それはそうだと思いますよ。私だって困惑しているんですから」


 俺は一旦、脳をフル回転させて状況を整理する。

 あの数十人の男達は元カレで、犯す計画を立てている、これは常識の範囲を超えているだろ。

 俺は考えることをやめて、彼女に一つ訊ねることにした。


「一応聞いておくけどさ。君って何歳?」


「私は十七歳です。高校二年生です」


「同い年かよ!?」


 見た目からして、てっきり年下とばかり思っていたぞ。

 それよりも十七歳で元カレがあんなにいるのは流石にやばいだろ。


「それは奇遇ですね。これは何か運命的なものを感じます。あなたは絶対にここで私を助けておいた方が良いですよ。今後の人生できっと役に立ちますよ、多分ですけど」


「そう言って無理やり俺に助けを求めるつもりなんだろ?」


「……バレました?」


「帰る」


「ちょっと待ってくださいよ!私まだ処女なんですよ!」


「そんなこと知ったこっちゃねぇよ!一体俺にどうしろって言うんだよ!」


「是非とも私の処女を守って下さい!」


 彼女の言葉に俺はただただ耳を疑うばかりだった。

 しかし、俺はここであることに気付く。

 こんなに彼女と話していても俺に女性恐怖症の症状が現れないのだ。


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初めまして、倉之輔です!

最初はこのくらいの長さで書きたいと思います!

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