やりたきゃやる

シヨゥ

第1話

「年を取ると重くなるのは何も体だけじゃない」

 そう言って課長は自分の胸を指差す。

「ここも重くなる」

「そりゃあ胸にも脂肪が」

「違う違う。心が重くなるんだ」

「心ですか?」

「そう。経験や知​​識、記憶が蓄積された分心が重くなるんだ」

 そう言って腕を下ろす。

「昔は勢い任せでできていたことが今はできないってことあるだろう?」

「そんな課長みたいな冒険野郎じゃないんで」

「たしかにそうだったな。でもそういうのが判断の邪魔になることぐらいあるだろう?」

「邪魔と言うか、判断材料にはなりますね」

「もしそれがなかったら一か八か掛けてみようと思えていたかもしれない」

「それは、たしかにあるかもしれませんね」

「だろう? だから、たまにはやりたいかやりたくないかで判断してみるのもいいと思うんだ。全てから自由になってただ心の赴くままに」

「ストレスたまってます?」

「そりゃあなぁ。まあそれは置いとくとして、特に挑戦するときはやりたいかやりたくないかで決めたらいい。失敗したら失敗したで経験っていうリターンがあるしな」

「そんなもんですか」

「そんなもんだ。うだうだ悩んでないでやりたけりゃやってみろ。俺からのアドバイスはこれぐらいだな」

「ありがとうございます」

「どう転ぶにせよ応援してるからな」

 強く肩を叩かれた。気合いを入れているつもりだろうか。まあそれでも気持ちは固まった。

「話してよかったです」

「そうかそうか」

 あとは動くだけ。心なしか体が軽く感じるのだった。

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やりたきゃやる シヨゥ @Shiyoxu

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