番外編『初めての家族旅行』

第68話。

「来たぜ――」


「「「「「「「伊豆!!」」」」」」」


 と、12/31の年末。私達はあの最低なクリスマスを払拭する為に伊豆半島に来ていた。今年はこの地で年越しです!


 では! 黒船来航の地――いざ参らん!!



「おぉ! ここがあの社会の授業で出てたペリーの道!!」


 予約したホテルに荷物を置き、まず最初に訪れたのはペリーロード。小・中学校の歴史でお世話になったペリー提督が実際に歩いたとされる道だ。直近の授業で習ったのか九々少女がはしゃいでおります。


「では問題。この道を歩いたマシュー・カルブレイス・ペリー提督は何処に向かったでしょうか? そして何しに向かったでしょう?」


「ぅえ!? えーと……開国しろって脅しに……徳川のお城まで?」


「違いますよ。正解は日米下田条約締結の為に了仙寺に行った――が正解です」


 淳兄さんが出題した問題に斜め上の珍回答を答える九々少女と、それを正す帯々少年。過去の遺恨が綺麗サッパリ無くなって、本来在るべき二人の関係に戻っています。


 あらあらまあまぁ、なんともまぁ微笑ましい光景ですわい。


「木がさみしいね」


「そうだね? 来るのがちょ~と遅かった」


 木が枝だけの状態を”木がさみしい”と表現する九々少女。未来の詩人さんかな? でも彼女が言う通り川に沿って植えてある木々は裸木の状態で、パンフレットに添付されていた浮世絵離れした景色は残念ながら見られなかった。


 でも――見られなかったのなら見れる時期にまた来ればいい。


「なら葉が付いた時にでもまた来ようか?」


「! うん!!」


 九々少女は冬の寒さとこの閑散とした風景に負けない元気で頷いた。



「うおぉぉぉ! イルカだぁぁ!!」


「ちょっと九々!? 身を乗り出さない!!」


 次に訪れたのは入口で大きなウミガメが迎えてくれる下田海中水族館。施設内に入って不安定な足場を抜けた先に居たイルカさんにこれまた大はしゃぎする九々少女。しかもイルカに触ろうと柵から身を乗り出そうとして帯々少年が慌てて止めに入ります。


 あらあらまあまぁ、ヤンチャな妹を持つとお兄ちゃんは大変だぁ。


「帯々兄ぃ! オレ、イルカに触りたい!!」


「えぇ!? よ、よーし……」


 急な妹のお願いに戸惑うお兄ちゃん。困りながらも久しぶりの妹のお願いを叶えようと近くにいたウェットスーツを着た従業員さんにイルカに触れるかを質問しに行った。


 ――すると何故か大慌てで戻ってきては「ちょっと待ってて?」と言い残して何処かへ消え、数分後に戻ってきた。


「行こう!」


 と、戻ってきて早々九々少女の手を引いて先ほどの従業員さんの元まで走る。


「――! あぁこれか」


「?」


「定員8名のイルカとのふれあいイベント。丁度この時間からだ」


 そう説明する二宮君からこの水族館のパンフレットを受け取り、開いてあるページを見てみると確かにイルカの餌やりや握手、プチトレーナーにもなれるイルカとのふれあいイベントの事が書かれていた。


 成程ね? だから慌ててチケットを買いに行ったと……やるじゃん。


「立派にお兄ちゃんやってんねぇ」


「ホントにな?」


 と、笑い合う二人の兄的存在の私達。楽し気にイルカと触れ合っている二人を近くにいたペンギン達と共に見守った。

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