2章

第25話

「中一男子拾いましたのよ」


 これがわたくし――六出梨の帰宅後の第一声ですの。


「おー」


「へェー」


「んー」


 そしてこれが中一男子の肩を借りながらの私の発言を聞いた淳お兄様、麻紗お姉様、二宮棗の反応ですの。

 淳お兄様は読書を、麻紗お姉様はワインを片手にスマホを、二宮棗は私がお願いしていた料理の温め直しを継続中。


 が、数秒後。


「「「What?」」」


 と、3人は『こいつマジ?』といった風の隠しきれない驚きと疑惑の視線で私と私を支えながら「えっ? ええっ?」と、切らしていた息を整えながら右往左往する小動物の様な愛らしい魅了を持った中一男子に向けましたの。


 なので私――六出梨は私なりの説明を述べてみましたわ。


「あらあらまあまぁ、学校の屋上でお投身お自殺をしようとしてたところをお投身お自殺の先輩である私が茶々茶の茶と茶々を入れてしまいましたの。そしてなんやかんやはなんやかんやあって、拾ってまいりましたのよ? まぁ結果としてこのように肩をお借りして私が逆に拾われた風に見えますが――私がッ! 拾ってッ! まいりましたのよ?」


 投身自殺はダメ絶対! の信念の元、とあるV〇uberの影響でお心にお嬢様を宿したままご説明。しかし――、


「「「肝心な部分のご説明がお抜けになっていて意味が分かりませんわー! あらあらまあまぁですわー!!」」」


 と、私同様にお心にお嬢様を宿した御三方に首を傾げられましたわ~。


 ――てなわけで遡る事、2時間前。


「おはようごぜぇます」


 そう言ってわたし――六出梨は何故か憩いの場のベットにて目を覚ます。頭がボーっとしたまま誰が聞いてるかもわからない目覚めの挨拶をすると、ベットを囲う仕切りのカーテンに人影が現れてはカーテンをずらし、そこから四季先生が現れた。


「はいおはようごぜぇます。……って、うわっ! 眼つきヤッバッ!! あれだけ寝たのにまだ寝たりねぇってか?」


「あ、はい――……あん? どうして私はここに?」


 思った事をそのまま口に出す。すると四季先生は大変呆れたご様子になった。


あーたあなた一限目どころか登校して席に付くなり爆睡したんだと。そんでそれを見かねた棗君が一限目が始まる前にここに連れてきたんだよ」


「――フッ。寝るためにだけに登校したと? それはヤバい」


 今日の私。寝るためだけに学校に登校なう。絵面だけみると相当ヤバい。ヤバいと言うより学校という教育機関様を相当舐め切ってる。


「あー梨君よ。最近どうした? 棗君も言ってたが家に居る時と学校にいる時の温度差が露骨に激しいぞ? 最早メリハリってレベルじゃない」


「え? そんなに?」


「あぁ。まぁ髪を短くして、今まで前髪カーテンで読み辛かった喜怒哀楽の表情が読み取れるようになったせいってのもあるとは思うが……それにしたってここ最近の楽しそう家にいる時つまらなさそう学校の温度差がスッゴイ。あとたまに口調がおかしくなるし、本当にどうしたの? 悩み事でもあるのかい?」


「はぁ悩み? 悩みですかぁ……」


 私はそっと目を閉じて記憶に残っている思い出を振り返ってみる。――すると私はとある真実にたどり着きました。


「あー悩みは悩みでも贅沢な悩みでぇ……最近やる事なす事全てが楽しいんですよね何故か」


「……」


「ん? どうなさったので?」


 ありのまま思った事をそのまま口に出した結果、それを聞いた四季先生の表情が苦悩に歪んでしまう。それはまるで――”無理だと分かった上で、それでもお外で遊びたい”と、願った子供末期患者に『ごめんね』を言った時のよう。


「あ、いや! ……気づけてやれなくてスマン」


「? まぁお気になさらず。気づく云々、なーんてそんなしょうもない過去は忘れましょう。今が楽しければ良いのよねっ……てね?」


 と、私はにこやかにほがらかに言う。そうして気を使ったおかげで四季先生の表情は幾分か柔らかくなった。


「そうかい。ちなみに時計の解体と料理以外での最近のトレンドは?」


「トレンド? トレンドと仰りまして?」


 はい! 突如としてわたくしのお心にお嬢様がIN。四季先生は「ん?」と、困惑の表情を浮かべながら首を傾げ、私はそんな四季先生に百点満点の笑顔を届けようとお嬢様スマイルを向けながらご質問にお答えしましたの。


「お裁縫に色々なお料理動画にFPSにFPSを含めたおゲーム実況に、3日前からV〇uberにもドハマり中ですわ~!」


「そ、そりゃ寝不足にもなりますわー。ヤッベェですわ~」


 えぇ、ヤッベェですの! あらあらまあまぁですのよーッ!!

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