クリスマスイブデートの始まりにて
そしてデート当日、12月24日。世間ではクリスマスイブと呼ばれる日。
町はカラフルに彩られ、行き交う人々はみんなお洒落な服装で身を包んでいる。かくいう俺も前に買ったお揃いの服に、精一杯のお洒落をして駅前で彼女が来るのを待っていた。
携帯で時間を見ると、まだ約束の時間にはかなりの余裕がある。流石に寒かったので待ち合わせの場所が窓から見えるカフェに入った。窓側に座り、コーヒーを頼む。ぼんやり外を見ながら、コーヒーを飲んでいると、七海がやってきたのが見えた。彼女は、待ち合わせの場所に行く前にちょうど俺の座っている席の窓の前に立つ。こちらに気づいたのかと手を振るもこちらを見ずに窓の前で髪をいじっている。俺は、窓をコツコツと叩くと、彼女は気づいたのか顔を赤くして慌てた様子で店内に入って来る。
「おはよう、七海」
「お…おはよぅ…」
彼女は顔が赤いまま、対面に座って小さくなっている。
「ねぇ…見てたよね?」
「髪整えてたとこ?」
「やっぱりみてたぁ…」
俺の返事を聞くと彼女は机に突っ伏して項垂れる。
「んぅー、まだ来てないと思って油断した~!」
「カフェにいるって先に言っとけば良かったね。とりあえずそうだな…パンケーキ奢ってあげるから許してくれない?」
「…食べ物で釣ろうと思ってない?」
「いやいやぜんぜん」
「まぁ、奢ってもらうけど…」
そうして期間限定の小さめのパンケーキを頼む。パンケーキは頼むと直ぐに運ばれてきた。七海はパンケーキを前にすると、ぱぁと顔を輝かせる。
「美味しそう!頂きます!」
「どうぞ」
七海は黙々と食べ始めるが半分ぐらい食べ進めた所で、食べていた手がピタッと止まる。
「どうしたの?」
「いや、なんか一人で食べるのは心苦しいなって」
少し申し訳なさそうに眉をへの字にして、こちらを上目遣いで見つめる。
「そんなの気にしないでいいのに…」
俺はそんなコロコロと変わる彼女の表情に笑う。
「も~、なんで笑ってるの?」
「いや、何でもないよ」
「ん!一口あげる!」
そうして彼女はこちらへ一切れのパンケーキを口元に持ってくる。俺は彼女が差し出したパンケーキをそのまま食べて味わう。味はイチゴの酸味とパンケーキの甘さでとても美味しかった。
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
俺たちはパンケーキを食べ終えてカフェを出ると、手をつないで駅へ向かった。
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