　そうしてやってきた文化祭。

　俺たちは出し物の最後の準備、確認をしていた。女子は先に着替えており、もうちらほらと教室に和装の女子が見られる。

「じゃあ、男子もそろそろ衣装に着替えようか」

　出し物の最後の調整を終えて翔太がそう号令をかけた。俺も着替えようと空き教室に向かうべく、教室のドアに手をかけたその時、後ろから袖をぎゅっとつままれる。体をひねり、掴んだ人のいる方へ向ける。そこには予想していた通り、七海がいた。俺は目を合わせて微笑んで彼女に語り掛ける。

「大丈夫だから、隣の教室で待っていてくれ」

　俺はそう言い、七海はその言葉にコクリと頷いて手を繋いで一緒に教室をでる。俺は着替えのための教室へ、七海はさっき俺が言った通りその隣の教室に入った。俺はそのまま着替えを済まし、きちんと身嗜みを整えてから隣の教室に入った。

「七海〜、着替えたぞ」

「あきと！すごい似合ってるよ！カッコいい…」

　七海はバッと顔を上げて、キラキラとした表情で俺のことを色んな角度からしばらく見たあと、ちょっと顔を曇らせた。

「どうしたの？」

「明人がかっこいいのは嬉しいけど。できればこれを1人占めしたかったなって。これで明人に人気が出ちゃうと思うと少し複雑な気持ちになっちゃう…」

　俺はドアが閉まっているのを確認してからそんな愛らしい彼女を抱きしめる。そのまま、セットされている彼女の髪を崩さないようにぽんぽんと撫でる。

「安心して、俺は七海しか見えてないから。ね？今だけは独り占めしていいから」

「うん…。あと少しいい？」

「いいよ」

　そのまま何分だろうか、しばらく抱き合った後、みんなとは少し遅れてから教室に戻った。

「お！戻ってきたか。あと30分ぐらいで店開けるぞー」

「了解」

　開店に向けてみんな、配置につく。すると文化祭の始まりを知らせる放送が流れた。

「よっしゃ！じゃあみんな頑張ろうぜ！」

　そうして俺たちの文化祭が始まった。

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