プールにて
プールの別棟に向かうと、そこはまるで別世界だった。市民プールしか知らなかった俺にとってそこはとても目新しい場所であった。
入ると少し薄暗くて人工的な光が目一杯に広がる。慣れた目の前にはまずアスレチックが広がっていた。奥には小さいボールで満たされたプールや、先ほどの話題に上がったサーフィンが出来そうな大きさのプールがある。
「すごいな…」
「ね!どこから回ろうか?」
「手前から回っていくか」
それからは四人でずっと遊び尽くした。
「おーい。明人こっち来いよ!」
「おいちょっと待て」
「はーやく!」
「早く来てください」
「うわぁ!」
「あはは!大丈夫?」
アスレチックでプールに落ちたり、
「ほれ!」
「おっ!やったな〜」
「ぐわぁ」
「空きありです。きゃあ!」
「ふっふ。空きありだよ!」
小さいボールで満たされたプールでボールを投げ合ったり、
「おぉ!すごいすごい!」
「よっ、ほっ」
「次は俺がやるぜ!」
「転ばないように気をつけてくださいね」
サーフィン体験をした。
そんなこんなで遊んでいると、時計の針はもう6時を指していた。
「名残り惜しいけどそろそろ出るか」
「もうそんな時間か」
「そろそろちょうど良いかもしれませんね」
「私、少しお腹減った〜」
「じゃあ、駅で飯を食べてから帰るか」
そう言って俺たちはプールを後にして、駅に向かい進み出す。電車を乗って、俺たちは最寄りの駅に着くと近くにあるファミレスに入る。
「そろそろ夏休みも終わりか〜」
「そうだね。寂しいね〜」
「みんな夏休みの宿題終わった?」
「あっ…」
「翔太、まさか何もやってないのか?」
「いや、ちょっとはやったよ。まだ2週間もあるし」
「私は後、読書感想文だけで本も決まってます」
「俺も後少しで終わるな。七海は?」
夏休みの宿題の話題になってからずっと黙っている七海に聞いてみる。
「……てない」
「え?」
「やってない!忘れてた!」
「マジかよ」
「今年の夏休みが楽しくて忘れてた…。どうしよう…」
「まぁ、後2週間ぐらいありますから」
「確かに2週間あれば何とかなるか」
そんな会話をしながらご飯を食べて、二人と別れて俺と七海は帰路に着く。七海を送りに歩いて、そろそろ家に着くという時だった。
「ねぇ、明人?」
「どうした?」
「明日、暇だったりしない?」
「暇だけど…」
「宿題手伝ってください!」
「まぁ、だろうと思ったよ」
「いい?」
こっちを覗き込むように彼女は聞いてくる。
「はぁ…いいよ。来年はもうちょい早めに一緒にやろうな」
「……。ふふっ」
彼女は俺の言葉に嬉しそうに微笑むと、
「どうしたんだよ」
「いやね、来年も一緒にいる前提だったのが嬉しくて」
「――ッ。ほら、暗いから早く帰るよ」
照れ隠しで少し前を歩くと、
「ちょっと待ってよー!」
彼女が後ろから追いかけて顔をにやけさせながら俺の右手を握る。
来年もこうやって一緒に歩けたらなと思いながら俺たちは家に帰った。
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