勉強会にて

 次の日。

 俺達は近所の図書館に来て、お互いに向かい合って座り合っていた。机には授業で配られたプリントと教科書、ノートが広げられていた。


「じゃあ、なにから勉強しよっか?」

「じゃあ取り敢えず英語からでお願いします」

「じゃあ、取り敢えずプリントの問題をやろっか」

「了解」


 俺達は周りに迷惑にならない程度の声で話した。しばし、二人とも黙々と問題を解く時間がやってくる。

 問題を解いていると、


「チラッ…チラチラッ……」


俺がうまく解けているか気になっているのだろうか、何やら前から視線を感じる。


「七海、どうかした?」

「ふぇ!?いや、何でもないよ」

「そ、そっか」


 それからというものの、何度も何度も見られては目を合わせようとすると、目を逸らされるということを繰り返された。

 チラと七海の問題を覗いてみると、まだ一問しか解けていなかった。


「七海?大丈夫?まだ全然解けてないっぽいけど…」

「んぐ!?大丈夫!そろそろしっかり集中してやるから」


 それからしばし問題を解き、お互いに答え合わせをしようという話になった。


「じゃあ、用紙交換しよっか」

「うん…」


 そう言って俺の用紙を渡すと、七海は少し慌てたように用紙を俺に渡す。


(えっと一問目は…)


 一問目を丸つけて次の二問目を見る。すると二問目以降には、薄い字で


『あきととイチャつきたい…』

『抱っこしたい…』

『テスト早く終わらないかな…』

『あきと大好き』

『キスしたい』


 他にも用紙の色んな所に先程のような事が書かれていた。


「えっと七海?」

「え?どうかした?」

「これなんだけど」


 そう言って用紙を七海に見せる。

すると、七海は一気に顔が赤くなり、


「えっ?それ消したはず…。え?」

「確かに少し薄いけど全然読めるよ」

「……」


 七海はそこから暫く俯くと。突然、机のものを全部勢いよく鞄の中に詰め込むと、すぐに腕を掴まれて図書館の外まで連れていかれる。ある程度人が来ないところまで来ると。いきなり止まり、こちらを振り向いて抱きついてくる。


「やっぱ無理!」


 そこから抱きついた体勢のままで頭だけ俺の顔にむけて、そう言ってくる。


「やっぱり、あきとが隣にいたら無理だよ。すぐくっつきたくなっちゃう…。ごめんね」

「いや、嬉しいよ」

「え?」

「正直、勉強はなんとかしなくちゃだけど、自分の可愛い彼女にここまで言われて嬉しくない彼氏はいないよ」

「あきとぉ…!」


 てっきり俺に少なからず怒られるかもと、考えていたのか七海は俺の話を聞いて安心したらしく、抱きしめる力を強めた。

 俺達はそのまま、位置は少し変えたがくっつきながら家に帰った。

 勉強なんとかしないとなぁ…。

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