過去編にて 2

 それからと言うものの特に彼女との接点はなく、数日がたったそんなある日のこと。俺は夕飯の材料と、ついでに京に頼まれたお菓子を買いにスーパーに向かっていた。歩き続けて、スーパー近くの公園に差し掛かった時、


(今日の夜ご飯何にしようかな…京の好きなハンバーグでいいかな…?)


などと考えていると、


「にゃ〜」


公園の方から猫の声が聞こえてきた。俺は猫の声につられて公園に入り、猫を見に声のする方に近づいていく。しばらく探し、やっと猫を見つけたと思ったらそこには先客がいた。


「にゃ〜にゃ〜」

「にゃ?にゃ〜」

「にゃにゃにゃ」


 その先客は猫と会話していた。しばらく立ち尽くして見ていると、


「にゃ…にゃ〜〜?」


 その子が覗き込むように首を傾げたのだ。ただそれだけなら問題ないのだが、その時一瞬だけ見えた顔は何処か別の場所で別の場面で別の表情で見たことがあるような気がした。


「あっ!」


 その時、彼女を思い出した。そう、教室で誰にでも冷たく、無関心なように見える彼女だ。先客はその彼女によく似ている。しかし、その本人であるかは疑わしい。だって、あんな無表情な人が猫を愛でながら、こんなにも頬をゆるゆるにさせるだろうか。きっと妹か親戚かなんかなのだろう。そう自分に言い聞かせて、ここは見なかったふりをして帰ろう。触らぬ神になんとやらだ。


「ん?」


 しかし先程、驚きで声をあげたのがいけなかった。

 彼女がこちらに気づき、見ている。


「…………ジー」


 気まずくなってこくりと軽く会釈をする。彼女はクラスメイトだと気付いたのか目を丸め、顔を赤くして下を向いた。このまま去ってしまうのはどうかと思い、話しかけようとするが、


「ーーーッ」


彼女は顔を赤くしたままペコリと頭を下げて、すぐ走り去ってしまった。

俺はそのままその場に棒立ちするしかなかった。


「行くか…」


 なんか悪いことしてしまったなと思いながら、俺は公園を後にした。

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