空き教室にて

「えっと、何か?」


 とぼけてみるが、100%七海関係だろう。


「まぁ、わかってると思うけどさ。七海ちゃん関連だよ」


…七海ちゃん?


「それで?用件は?」

「まぁ、そうカリカリしないでくれよ。僕は噂の真相を知りたいだけだよ」

「噂?」

「結局君が七海ちゃんと付き合ってる人なのかい?」


 もう否定する必要もないので少し警戒しつつ肯定する。


「あぁ、そうだよ」


 よく見ると後ろには取り巻きみたいな連中が何人かいる。

なんか怖いな。


「そうか…、いつから?」

「言う必要ある?」

「分かったよ、じゃあもう1人の当事者聞くとしよう。おい、お前らよろしく頼む」


そう言われると取り巻きの連中が何処かへ行った。


「ッ!手を出したら」


するとかぶせるように言ってくる。


「ちょっと近くの空き教室に来てくれないかな?来ないと、分かるね?」

「…分かったよ」


 一体何をする気だ?

 そう言って木村の後をついていき、着いたのはもう使われていない教室だった。人がこなさそうな雰囲気が醸し出されていた。少しすると、教室が開いた。

 そこにはさっきの取り巻きと七海がいた。


「七海、大丈夫か!」


 俺は慌てた様子で七海に駆け寄る。


「へ?なんで?」


 一方、七海は俺の質問にきょとんとそう答えた。


「ん?こいつらに脅されたりなんかされなかったのか?」

「え?何でそうなるの?だってこの人達は」


パァン


 七海が何か言いかけたときに何かが弾ける音がした。俺は少し身構えたが、特に何も起こらない。

 おそるおそる目を開けると、音の正体はクラッカーだった。

え?なんで?


「せーの」


「「「「「お付き合いおめでとう!!!」」」」」


まって、脳の処理が追いつかない。


「どゆこと?七海」

「いや、私も事態が読み込めてない」

「ちなみに木村との関係は?」

「あれ?話してなかったっけ?木村くんは私の従兄弟。それでよく最初の頃、恋愛相談してもらってたんだよ」

「この取り巻き連中は?」

「小学校からの木村君の友達」

「まじかよ…よかった〜。すごいあせった〜…」


 一気に体の力が抜ける。まじでびびった…心臓に悪いって。


「いやね、去年の冬頃に付き合ったっていう報告はしてもらったんだけど、それが誰か言ってくれなかったからね。あの噂が流れた時、これは教室に行って確認しないとって思ってたんだけど、偶然トイレで会って今に至るってことかな?」

「じゃあなんであんな態度だったんだよ?普通に聞けばよかったろ」

「それじゃ、面白くないだろ?あと、七海から聞いてはいたけど、君がどんな人か気になってね。いや〜申し訳ない」


 そう俺らが話していると、七海が話に入って来る。


「ねぇ、何?木村くん達、明人に迷惑かけたの?」


 そういう七海の目にはハイライトがない。


「いやそうゆうつもりは、「迷惑かけたの?」…はい」

「もう知らない。明人に危害加えるような人は敵だから」


え?

木村達もぽかーんとしている。

まて、これ俺が止めなきゃいけなくね?


「まって、七海」


そう言って七海を抱きしめる。


「きっと彼らは七海が心配だったんだよ。七海がどんな奴と付き合ってるのか、気になるのも当たり前だろ?だから許してあげてくれ」

「…まぁ、明人が言うなら許してあげる。けど次はないから、分かった?」


「「「「はい!」」」」


 そう木村達が勢いよく返事する。少しうちの彼女はヤンデレの気があるのかもしれない。

 そうこうしているうちに、予鈴が鳴った。急いで教室に戻らなくては授業に間に合わない、そう思い、俺は七海と一緒に教室に戻った。

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