通学路にて
2人で通学路を歩き進めると、ちらほらとうちの学校の生徒を見かけるようになってきた。しかも、俺らのことが視界に入った生徒達は必ず2度見、3度見してくる。
そりゃ、七海は有名だし、もし七海や俺のことを知らなかったとしても、登校中にここまでべったりしている生徒なんてそうそういないので、いやでも気なるのだろう。まぁ、俺が危惧していた嫌な視線がまだ少ないだけまだましか。
「ねぇ…さっきからぼーっとしてどうしたの?」
暫く考え込んでいたせいか、七海が少し拗ねたように聞いてきた。
「ごめん、人の目が少し気になってね」
「むぅ…人の目気にするためにこうしてる訳じゃないでしょ。もっといちゃつきたいからこうしてるんだよ。だから、よそ見してちゃ、や、だよ?」
至近距離で七海が顔を覗き込んでくる。ほんとにあと少しで唇がくっついてしまうぐらいに。
「俺も出来るだけいちゃつきたい。けど、気になるものは気にな……」
そう二の句を継ごうとした瞬間、先程まで近くにあった七海の顔が更に近くなり、唇がくっついた。ちょっと触れるような優しいキス。唇が離れると七海が、
「けど、じゃないの。いい?分からないようなら、またキスするよ?」
「わかった、俺の負けです…」
流石に道のど真ん中で、しかも同じ学校の人がいる中で、またキスするのは、今後の学校生活が関わってくるので、負けを認めるしかない。
「んふぅ、分かればいいのです、分かれば。じゃあ行こっか!」
そう言って学校に足を進める。
隣にいる七海の顔は見えないが、組んでいる腕と握っている手が少し力んでいる、それだけで七海が恥ずかしがっていることが伝わってくる。
暫く歩いて、もう少しで学校に着くと言うぐらいで、翔太を見かけた。翔太もこちらに気づいたようで、こちらを見て手を振ろうとする。すると俺の隣にいる七海を見て、目を見開き、振ろうとした手を止め、こちらに駆け寄ってくる。
「よう、翔太おはよう」
「お前、よう、おはよう、じゃないだろ!え?どうなってんの?マジで、お前昨日、俺が片瀬さんの話振った時、僕、興味ありません。みたいな感じだったよね⁉︎」
「まぁこっちにも事情があってな」
「どんな事情だよ!」
「え?とゆうか本当に片瀬さんなの?無表情の無の字もなく、顔ゆるっゆるなんだが?」
「うん、本物だよ」
翔太と会話していると、横から、組んでいる腕を引っ張られる。彼女は少し頬を膨らませながら俺に喋りかける。
「ねぇ、私を放置しないで構って?」
「ごめんな、じゃあ行こうか」
そう言って翔太を置いて校門を抜ける。ふと、後ろを見ると、翔太が口を開けて固まっていた。
あいつには、悪いことをしたな。後で謝って、事情を説明しよう。そう思いながら、俺は教室のドアを開けた。
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