第24話
──なんだろう……。見えないところで話がどんどん進んでる気がする……。
少し前に直斗が「着替え持ってきた」とリュックを肩にかけて戻ってきていた。
零がコーヒーをいれ直斗の前に置くと
「……えっと……それは……今日も泊まってくってこと……かな…?」
直斗の頬に一瞬視線を向けてから、向かい側に座った。
「別に今日とかじゃなくて……。いつでも来れるじゃん?着替えあれば」
───そうだけど……。凄い……行動力って言うか…………。
零が困ったように笑う。
───あのほっぺも…………。もしかして……この事で親とケンカになったんじゃ……。
「なんで?俺がいたら困る?」
零の顔を直斗が覗き込んだ。
「またそういう言い方する……。困る訳ないでしょ」
零がそう言って直斗の頬にそっと触れた。
「その事で……親とケンカになったんじゃないのかな……って……」
直斗がキョトンとしてから笑いだした。
「まさか!そんな事でケンカしたりしねぇよ!ケンカどころか零のこと『ちゃんと紹介しろ』って言ってたし」
「紹介!?──俺の事話したの!?」
零が慌てて机の上に身を乗り出した。
「好きなヤツが出来たってだけね」
───なんだ……びっくりした…………。自分の子供が同性と付き合ってるなんて知ったら…………
「だから『分かった』って言ったよ。そしたらたまには帰ってこいってさ」
直斗は嬉しそうに話すが……
───それは前提として女の子と付き合ってる場合の話では……
零が再び困った様に「はは…」と笑った。
「じゃあ……そのほっぺは?どうしたの?」
零の言葉に直斗がきまずそうに目を逸らした。
「何があったの?」
零が心配そうに頬を優しく指で撫でる。
直斗は大きなため息をついてから
「……莉央と別れてきた」
そう告げ、バツが悪そうに頭をポリポリと掻いた。
「────え…………森下さんと……?」
「そう……」
「……なんで…!…」
零がつい責める様な言い方になった。
自分と付き合うにしても、直斗と莉央の間を引き裂く気など無かった。
「──なんでって」
直斗がその言葉に過剰に反応する。
「なんでってなんだよ!?」
「……だって……俺は別に……二人の仲を壊すつもりなんて…………」
零の言葉に直斗の顔色が変わった。
「お前にその気が有ろうが無かろうが関係ねぇんだよ!俺が嫌なの!お前以外……」
直斗がカッとなったまま言葉を吐いた。
「零は平気なのかよ!?」
直斗が思わず零の胸元を掴む。
「俺が──俺が他のヤツとキスしたりセックスしたりして!お前はなんも思わない
のかよ!?」
「───それは…………」
零が言葉に詰まる。
──平気なわけ無い。でも……俺は……
二人きりの部屋に沈黙が重く伸し掛る。
直斗はため息をつくと
「ごめん……」
零から手を離した。
「けど……俺は嫌だね。お前が他の奴と一緒にいるだけで」
真っ直ぐに零を見つめた。
零の顔が悲しげに歪み、それでも直斗から目が離せなくなる……。
何もかもが前と違い、どうしていいか分からなかった。
「でも……それは……」
ため息と共に直斗が口を開いた。
「俺の気持ちだから……だから……莉央と別れた事をお前が気にする必要ない。俺が零以外いらないと思ったから別れただけで……」
直斗が俯いて自分の感情を殺しているのが分かる。
「───俺以外……いらない……?」
「当たり前じゃん……。零以外のヤツに……触りたいとも思わねぇよ……」
直斗が相変わらず俯いて……少し不貞腐れた様に言った。
───そんな顔で……そんな事言われたら………
「……俺も……直斗くん以外…………触れたくないよ……」
───自分の本心を……言いたくなってしまう…………。
「それに……直斗くんが他の人に触られるのも……嫌だ」
零の言葉に直斗が顔を上げ見つめ
「言うの遅せぇよ」
照れながら笑った。
「……ごめん」
直斗が机越しに零の顎を上げキスしようとしてやめた。
「……ちょっと待って」
そう言って机を横にズラし
「よし。───零、おいで」
直斗が腕を広げる。
「…………え……」
一瞬で零の顔が赤くなる。
「ほら」
直斗が赤くなった零を見てニヤッと笑う。
「………………」
零が俯いたままおずおずと直斗の前に這っていくと直斗が腕を引き抱きしめた。
「さっきは怒鳴ってごめん。けど……本当にお前しかいらないから」
零の耳元で囁き優しく口付ける。
直斗の言葉が余計零を高揚させた。
絡まる舌が熱く感じ
「───んっ…………」
思わず喉の奥から声が漏れる。
その声に直斗は一層激しく舌を絡ませる。
零が熱くなっているのを感じ直斗が零の首筋に舌を這わせキスをする。
「───あ…………」
声と共に身体がビクッと反応した。
零が抵抗しようとした手を直斗が抑え、首にキスを続けると微かな痛みと身体が高揚する感覚に襲われる。
「……ダメ…………だって……」
零が縋るように声を絞り出す。
───やめて……ほしくない…………。
「……分かってる……」
そう言うと直斗が零の唇にキスをして強く抱きしめ
「……早くやりてぇな…………」
ボソッと耳元で呟いた。
零はその言葉にすら身体が熱くなるのが分かった。
───俺もだよ…………。
心の中で返す。
「──好きだよ」
直斗の腕が一層力を増すと
「──俺も……大好きだよ……」
零も直斗を強く抱きしめた。
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