第14話 意識
紡木が家に戻ると子猫がソファーで丸くなり眠っていた。
───可愛い…………
元々飼われていた猫なのか、ちゃんとトイレを使ってくれた形跡があってホッとした。
そばに行くと紡木を見つめ「ミャー」と一声あげ、何か訴えているように見える。恐る恐る頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めた。
──猫なんて…触るのどれくらいぶりだろう……。
紡木が猫の前にしゃがみ
「お前は病気がないといいな」
笑顔で話し掛けしばらく撫でてからシャワーを浴びるため浴室へ向かった。
コーヒーを飲みながらパソコンへ向かっていると、床に座っている紡木の足の間に子猫が入り込んできた。
あぐらを組んだちょうど真ん中で丸くなったと思ったら紡木をじっと見上げている。
───……なに…?…どうしろって言うんだ……?
そっと手を差し伸べてみると顔を擦り付け、撫でられるのを待っている。
紡木が首を撫でると気持ち良さそうに目を閉じて、やめると「撫でろ」と言わんばかりに顔を擦り付けてくる……。
───可愛い…………
しばらく撫でてやっていたが目の前の仕事が出来ない。
撫でるのをやめ、パソコンに向かうと今度は「ミャー」と鳴き始めた。
「……………………」
紡木は軽くため息をつき左手で撫でながら右手だけでパソコンを操作する。
───今日は…何だか忙しないな……
直斗のことを思い出して思わず笑顔が漏れる。
──凄い焦ってたな…。まぁ…俺も焦ったけど……。
つい直斗とのキスを思い出してしまう。
───唇って…あんなに柔らかかったっけ………
少しキツめの切れ長の目に見つめられて動けなくなった…。凄く色っぽくて……意志の強そうな薄い唇をすんなり受け入れてしまった……。
紡木の頬が微かに染まっている。
───マズイ……その気になりそう……。
何故…自分にキスなんかしたのか不思議でならない。
からかわれた様にも思えない…。
でもきっと……何かの間違いに過ぎない。
──だから……忘れないと……。
時計を見ると3時近い。明日は11時に直斗の家まで迎えに行くことになっている。
紡木は撫でられて大人しくしている子猫を見て苦笑いすると、パソコンへ向かい右手だけの作業へと戻った。
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