泰山は土壌を譲らず、故によくその大を成す(V.1.1)
@MasatoHiraguri
第1話 日本拳法第35回東日本学生個人選手権大会 観戦記
泰山は土壌を譲らず、故によくその大を成す(V.1.2)
泰山不譲土壌、故能成其大。
河海不擇細流、故能成其深。
王者不却衆庶、故能明其徳。
泰山は土壌を譲(ゆず)らず、故によくその大を成す
河海は細流を択(えら)ばず、故に能くその深をなす。
王者は衆庶を却(しりぞ)けず、故に能くその徳を明らかにす。
太山(泰山)は、ひとかけらの土壌をも惜しんで積み重ねたからこそ、あれだけ大きな山になったのであり、
黄河や海なども、いかなる細流をも受け容れるからこそ、あれだけ深い流れになったのであり、
王者は衆庶を退けないからこそ、その徳を天下に明らかにすることができる。
「泰山」は標高1545メートルとそれほど高くはないが、奇観に富み、中国を代表する名山として知られている。
日本で言えば、富士山にあたるかもしれない。
○「中国古典名言辞典」諸橋轍次 講談社学術文庫
○「中国の古典名著 総解説」 自由国民社
https://ats5396.xsrv.jp/5725/
今大会、男子では明治大学の選手たちが目立ちましたが、それは単に出場選手が多いということだけではない。大山・大河・大海という目に見える存在(感)には、それなりの(目に見えない)理由があります。
もちろん、今年度リーダーの指導・統率力もあるでしょうが、過去から連綿と続くこの大学の組織力(組織と思想が有機的につながり、合理的に機能している)に拠るところが大きいのではないか。
そして、それは少なくとも、私自身が大学生であった40年前頃より始まっているようです。
あの頃というのは、どこの大学でも監督・コーチ・指導員といった、現役学生をサポートするスタッフ・サイドを構築し始め、いわばラインとスタッフという組織作りの黎明期であったのですが、この時の各大学における思想性(再現性を追及する科学的な心)・ポリシー(公明正大で一貫した理念)のあるなしが、40年後の今になって、その具体的な成果を現し始めた、ということでしょうか。
単に「監督・コーチ・指導員」という器だけで見る者は、40年経っても100年経っても成長しない。変わらないのではなく、進歩がない。
一方で、これを(単なる器ではなく)道として把握していた組織は、行くべきところまで進んでいる。
私自身が次の段階まで見ることは難しそうですが、器と道、思想とその現実化という関係を、これまで実際の事例で目にすることができたのは行幸でした。
AAA. フェイズから見た明治の拳法
① クライシス・マネジメント(危機管理)
どんな状況下でも正しく対応できる体制(持続的・統一的な仕組み)
② フォルト・リダンダンシー(失敗に対する冗長度)
どこまでを失敗とするか。正しい認識力
③ フォルト・トレランス(失敗に対する耐性)
どこまで失敗の損傷・苦痛に耐えることができるか
④ リスク・マネージメント
危険性の予知・身に迫る危機に対する態勢(一時的・部分的な身構え)
更に、「明治の木村」位になると
⑤ プロバビリティ・アナリシス
相手の移動位置と態勢を予測、もしくは誘導し、そこへ向かって攻撃(対策を立て実行)する。
→ 「ジョジョの奇妙な冒険」ボスのスタンド「キング・クリムソン」か !
予測というよりも、未来のその場所その態勢に相手を追い込む。 → これは超能力ではありません。早い話「明治の木村」は、誰よりも自分から攻めて相手を追い込んでいる、ということです。
BBB. 次元から見た明治の拳法
① 問題解決のための日本拳法
社会生活でぶち当たるであろう様々な現実の問題といかに取り組み、どう解決していくか。問題に対する分析力・アプローチの仕方・解決へのprocedureといった、未来の自分のための「問題解決法の雛形」を自分の中に作り上げる。
現実に殴る・蹴るを通じて、問題に対する取り組み方・解決のための方法を見出し、それを(強い意志によって)水火の中でも実行するという一連のプロセスを自分の中に作り上げる。
② 多様性を支える共通性
一人ひとりが自分に合った問題解決法を自分で作り上げ、自分で鍛錬する。
しかし、そのための基礎は皆で一緒に行う毎日の練習にある。
(逆説めいていますが)みんなで同じことを一緒に(拍子を合わせて)行うからこそ、個人個人の独自性が生まれる。 → 同じ血の縄文人同士だからこそできる。
CCC. 明治大学日本拳法部・テクノクラート集団
これら「明治の日本拳法」を支えているファンダメンタルズの一つが、監督・コーチ陣を中心とした、強力なテクノクラート(技術官僚)集団なのです。
(続く)
V.1.2
2022年6月14日
平栗雅人
泰山は土壌を譲らず、故によくその大を成す(V.1.1) @MasatoHiraguri
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