僕たちは無限鏡界の彼方へ愛の言葉をおくる
卯月
第1話 とある科学者の苦悩
どうしてだれも信じてくれない!
こんなはずではなかった!
そんなつもりで作ったのではないのだ、もうやめてくれ!
私はこれ以上もないくらいに
この私が人生のすべてをかけて生み出した発明は、まぎれもなく今世紀最大の価値を持つ。
あれが正常に動き続けるかぎり、我が国は永遠に
あの力は絶対だ、何者にも
数え切れないほどの悲劇を他者に押し付け、血と涙を
そして私はあれを生み出した世紀の天才発明家として、あるいは宇宙に
冗談じゃない、そんな使い方をするための物ではないのだ!
はるかな昔、スウェーデン国のアルフレッド・ノーベル(ノーベル賞の生みの親)という人物は、ダイナマイトという爆発物を開発して巨万の富を得たという。
だが一方で彼は『かつてないほど大勢の人間を殺す道具を生み出した死の商人』だと
今の私がおかれた状況はノーベル氏に似ている。きっと彼は同情してくれることだろう。
私は
真実から目をそらし、自分たちだけに都合のよい幸福をむさぼる国民たちも許せない。
そして何より、こんな狂気の時代を生み出してしまった自分自身を、絶対に許すわけにはいかないのだ。
だから私は今日も
私が発見した
狂ってしまった世界をあるべき姿に戻すのだ。それがせめてもの
私はあえて、この国を乱す反逆者となろう。
残念なことがあるとすれば、私に残された時間はもうわずかしか無いということか。
最後まで見届けることはできそうもない。
若者たちよ、未来を頼む。
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