ヤキモチ

梨寿りじゅは、まだ薬指の指輪をはずしていなかった。


ヤキモチが、とまらない。


「梨寿、私、自分がこんなにヤキモチ妬きだって知らなかったよ。もっと、あっさりしてると思っていたから」


梨寿を誰かにとられたくない。


真白ましろのヤキモチは、嬉しいよ」


梨寿は、頭を撫でてくれる。


梨寿の全てが好き。


この手も、指も、頬も、唇も、腕も、鎖骨も、胸も、お腹も…。


「真白、くすぐったいよ」


考えながら、手を動かしていた。


「ごめん。」


「由紀斗の隣に居た人にヤキモチやいたんでしょ?市木さんだっけ」


「何で?」


「何か、真白嫌いなのかなって思ったから」


梨寿には、何でもバレていた。


「梨寿が、浮気するから」


「しないよ。彼は、由紀斗のだよ。」


私は、梨寿のお腹の上に乗って押し倒す。


[お風呂が、沸きました♪]って音が、響いた。


「沸いたよ、お風呂」


「知ってる」


「んんっ、待って」


梨寿の唇をふさぐ。



「待たない」


「お風呂、入ろうよ」


「嫌だよ。」


「何て、言って欲しいの?」


「あの人には、なびかないって約束して」


「なびくもなにも、知らない人だよ。」


「約束して」


私は、梨寿の腕を押さえつける。


梨寿は、一本腕を抜いた。


「約束するよ。だって、こんなに可愛いいんだよ。」


カッターシャツのボタンを片手ではずされていく。


「梨寿、駄目」


「嫌だ。言うこと聞いてよ。真白だって。私ばっかり、ヤキモチ妬かれたくない。」


「梨寿は、妬かないでしょ?」


梨寿は、私を持ち上げて下にする。


「あのね、妬くに決まってるでしょ?」


「妬かないでしょ?」


「妬いてる。」


梨寿は、私の手を胸にゆっくり持っていく。


「鼓動の速さでわかる事だね?」


「真白を愛してる事」


「梨寿を愛してる事」


私だけが、ヤキモチを妬いてるわけじゃなかったのを感じる。


「お風呂、入ろうか?」


「まだ、ヤキモチ妬いて」


梨寿に、ヤキモチを妬かれたら嬉しい。


それだけで、身体中が熱をもつ。


「アルバイトの菅原君が、真白の事が好きってしってた?」


「何それ?変な噂でしょ?」


「湯田さんが、言ってた。」


梨寿は、ムスッとした顔をして私の手を頬に持っていく。


「可愛いよ。梨寿」


「菅原君、いつも店長、店長って言ってるでしょ?余裕なフリしてるけど、私の胸の中は、いつもザワザワしてるんだから」


梨寿は、私の指を含んで噛む。


「梨寿、痛いよ。」


「痕をつけたい。」


ヤキモチが、嬉しい。


愛されてるのを感じられる。


「梨寿、繋ぎ止めるものがないから、旦那さんから奪ってごめんね。あんなに強い絆をほどかせて、ごめんね」


涙が流れるのは、梨寿達夫婦を引き離したのが私だから。


「真白、泣かないで。いずれ、終わっていたんだよ。真白に会わなくたって、終わってた。わかるの。だって、私と由紀斗は、未来を見るのが怖かったから…。ずっと、二人で生きていく未来なんてみたくなかったから…。」


梨寿は、私の唇に自分の指を持ってきた。


「それでも、ほどけなかったんだよ。私が、現れなかったら…」


「関係ないよ。私達は、固く結ばなかっただけ。だから、簡単にほどけたんだよ。次は、ちゃんと固く結ぶからね」


私は、梨寿を持ち上げて上に乗った。


「ほどかないでくれるの?私との事」


「ほどかないじゃなくて、ほどけないようにするんだよ。」


「梨寿」


梨寿を失いたくない。


もう、梨寿以外考えたくない。


「真白、背中流してあげようか?」


「流してー。」


「じゃあ、行こうか」


「うん」


梨寿に、キスをした。



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