第34話 新たな協定
シンが行方不明になってから数日、国王は表面上は死刑囚が逃げたとして王国兵に探させているが、裏の世界に通じている者との話で概ね理解していた。
国王「………..」
その事についての書類を見ていると、隣にいた執事が話しかける
執事「よろしいのですか?」
国王「ああ、奴の処刑はギロチンでの斬首刑だった、それでは不満を持つ者もいると予想できたからな」
他にも怪しい動きをしている者達の情報も入って来ている
それは勇者によって汚され、精神を病んでいた者達がほとんどだった為ほぼ特定は出来ていたが、兵士の報告書だと
"特に異常は無い"そうだ
なら…….仕方ないよな?
そうして兵士の報告書通りに"成果"はなく
引き続き兵士達が捜索にあたる
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仕事を始めてから数時間後、執事が新しい紅茶を置きながら
執事「国王様、そろそろお時間です」
と告げる、国王は紅茶を一気に飲み立ち上がる
国王「わかった、行こう」
そう言って執事と共に会議室に向かった
~会議室~
ガチャ
国王「失礼する」
そう言って中に入ると、周りの兵士達が一斉に敬礼する
そして所定の位置に行き椅子に座る
国王の隣には右に執事が左には兵士長が座り扉の前には兵が2人、そして会議室の周りを多くの兵士がいた
此処までするのには理由がある、それは目の前の人物が原因だ、いや、正確には人物ではなく、魔族だ
リディア「よく我の願いを聞いてくれたな、感謝する」
国王「いや、私達とてこの様な場を設けることができ感謝している」
魔族の王、そして人間と戦争していた種族の長でもある
先日行われた人間と魔族の代表戦で決めた約束事
人間 勝利の場合
魔族の敗北を認め、領土の1部の提供
ルークの処刑
魔族 勝利の場合
人間の敗北を認め、人間軍の全面撤退
シンの処刑
大まかに説明するとこんな感じだ、そして今回の協議で条約を結び、この戦争が本当の意味で終わる
魔王の隣には息子のゾディアと先日シンと激闘をし魔族側に勝利をもたらした男、ルークが座っていた
ルーク「1つよろしいですか?」
国王「何だ?申してみよ」
ルーク「はい」
ルークは周りを確認しながら話し始める
ルーク「今回の戦争は人間と魔族の戦争です、しかも一国ではなく全ての国が参加した大きな大戦でした……….なのに何故他の国が来ないのですか?」
ルークの意見はごもっともだ、今回の件は、この国だけでなく、全ての国の問題だなのに何故他の国は参加しないのか、確かにおかしい事だ
それに答えたのは執事だった
執事「今回の件はあくまでも我々と貴方達との事です、他の国は言い方が悪いですが、見ていただけですので」
そう言って執事は頭を下げながら座る
ルーク「つまり、見ていたから今回の件は関係ないと?」
国王「……..そうだ」
そう言ってすこしの間時間が経ち、やがてリディアが、口を開く
リディア「………………よい」
ルーク「え?」
リディア「よいと言ったのだ、我々の目的は共存、その一歩と考えればよかろう」
そう言ってリディアはルークを説得する
ルーク「…………….リディア様がそう言うのなら、仕方ありませんね」
ルークは少し不服な感じだが、リディアの説得に応じる
ルーク「恥ずかしいところをお見せしてすいませんでした」
国王「いや、私達の説明不足だった、すまない」
そうして、少し時間が過ぎてしまったが、やっと本題に入る
国王「では、協議に入るのだが、他国が参加しない以上、私達の国だけどなってしまうがよろしいか?勿論出来る限り協力はする」
リディア「そうか、なら我々の要望は2つ」
リディア「1つ目は軍の全面撤退、我々魔族は元々戦争なぞするつもりはなかった、お主達から始めた戦争だからな」
国王「………わかった、他国にも連絡を入れ、断る国には容赦なく攻撃すると伝えておく」
こうすれば、魔族の恐ろしさを直に味わった者達は他の国が撤退した事により士気が下がり魔族が襲ってきたら全滅するしかない
これは簡単に叶いそうだ
リディア「次に2つ目だが、我々は人間との共存を望んでおる、その為の足掛かりとして協定を結びたいと思っておる」
国王「………..協定」
リディア「ああ、内容は簡単だ」
1.魔族は協定国に無許可で攻撃してはならない
2.協定国は魔族に無許可で攻撃してはならない
3.双方の物産を交易で交換できる様にする
4.どちらかが責められた時は必ず助ける
5.魔族領も人間領も関係なく住むこと
リディア「この5つだ、簡単だろ?」
国王「ああ」
国王(賠償金も領土の没収も植民地化もない、ただの同盟だけで終わるのだ怒らせてやっぱりは言わせない様にしよう)
それに今回の内容はこちらとしても願ったり叶ったりだ
国王「わかったそれで行こう」
リディア「わかった、ならルーク、ゾディア」
ルーク「はい、出したらこの書類に契約書を」
ゾディア「既に我が父の名は書いてあります、こちらの専用のペンでお書きください」
そう言ってルーク達は国王に書類を渡して書かせる
国王「わかった………………これでいいか?」
そう言って見せる、そこにはしっかりと国王の本名で書かれていた
リディア「ああ、これで我々魔族とお主達人間との協定はなされた、よろしく頼むぞ」
国王「ああ、よろしく頼む」
そう言って2人は手を繋ぎ、協定はなされた
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執事「お疲れ様です、国王様」
国王「ああ、人生最大に疲れたよ」
魔王達が去った後国王は緊張の糸が切れ倒れ込む
それもそのはず、目の前にいたのは
魔王とその息子、そして勇者を倒した男
この3人が本気でかかってくれば、此処にいた兵士長を含め以下30名以上は肉塊になっていただろう
人間側としての威厳を保ちつつ、相手の癇癪に触らない様に最新の注意を払いながら
協定を行った
執事達は国王に代わって何かを話したそうにしていたが、あまりのプレッシャーで言葉が出ず、結局最後までしゃべれず終わってしまったのだ
そうして僅か1時間足らずで終わってしまった今回の協議は彼らにとっては永遠に感じる程、長い長い1日となったのだった
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魔王side
ルーク「てか、なんで俺が魔族代表にいなきゃいけないんですか?俺人間ですよ?」
国王との協議が終わっての帰り道、ルークはそうやって愚痴をこぼした
ゾディア「まぁまぁ、ルークさん僕達にも理由があったんですよ」
リディア「ああ、人間として、魔族は我々人間にとって害ある存在だと思って欲しくないのだ」
ルーク「その為に俺が必要だったと?」
そう言うと2人は頷く、そもそもルークにとって彼らは命の恩人だ、元から断るつもりはないがどうしても理由が欲しかったのだ
ルーク(まぁ、人間と魔族との共存に力を貸してほしいとの条件であの力を貰ったんだ、今回のはかなり共存への道に近づいた)
それでもかなりかけ離れた道だが、一歩一歩確実に前へ進み続ければ、いつか必ず魔族と人間が本当の意味で共存できる世の中になると思う
ルーク「先ずは一国、頑張っていかないとなぁ」
ゾディア「僕も頑張ります、貴方に助けられた恩の為、そして魔族の未来の為にも」
リディア「そうだな、なんとしてでも成し遂げないとな」
ルーク「ええ、必ず成し遂げましょう」
そう言ってルークは愛する人達が待っている所へ向かう
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続く
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