こんな脳筋でも英雄にすることはできるのだろうか
蒼
エピローグ
エピローグ こんな脳筋みたことない
「はぁ....なんで私があの人の面倒を見なきゃいけないんだ」
白や赤のレンガで舗装された大通りとそれに沿うように立ち並ぶ木と隙間なく石積みされた家々の歩道を歩きながらため息をつく1人の銀髪の髪をし、短い髪をさらに2つ結びにまとめた明るげな雰囲気の少女が歩いていた。
「私はまだDランクの平均よりちょっと上くらいっていうだけで、頭だってそこまで良いわけじゃない。それなのになんで...」
この少女は育成という名目で1人の男の元へと向かっている最中である。
「まぁ、退屈はしないからいっか....」
軽く皮肉を込め独り言を呟きながら、ある宿舎の前に着いた。
「入るよ」
扉を開けると、奥の方に黒眼で黒髪のボサボサした髪をしたガタイのいい男が立っていた。
「お、ピア、来たか」
名をカンル・シュラルト。
こいつはどうしようもないバカである。
〜1週間前〜
冒険者ギルドから、この男に冒険者としての基本を教えてほしいと依頼がきていたため、この男につきそうことになった。
この人は実力は確かにあるが、とんでもなくバカであり、どれくらいバカなのかが垣間見えたのはポーションの買い物をするときからだった。
「まず、冒険者として基本のことは買い物。ポーションや旅の食糧、装備も整えなきゃいけない。だから、まずポーションでも整えるよ」
ポーション屋の前で、冒険者に必要な物を説明をしている時からだった。
「そうだね....まず、この回復薬を6本かな?」
回復薬は1本でおおよそ2銀貨ほどこの場合だと12銀貨なのだが、
「はい、銀貨12枚」
と言って手渡したのが金貨の12枚だった。
「待て待て、貨幣の区別ができないのか?」
「え?この一番キラキラしているのが銀貨だろ?」
「....いや、それ金貨」
どうやら、貨幣を間違えて使っていたようだ。
「え?じゃあ、これはなに?」
と、言って摘んで見せてきたのが銅貨だった。
「....お前まさか銀貨の支払いを金貨で済ませちゃっていたってこと?」
「そうかもなぁ」
と、笑いながら言ったが、笑い事ではない。
銀貨100枚で金貨1枚と同じ価値がある。
もし、今までこんな支払いをしていたらとんでもない大損をしていたことになる。
「....基本の前に、まず頭から治さないといけないのか....?」
だが、まだこれは序章に過ぎない。
支度を済ませるのにも一苦労で、ようやく集め切って時はすでに夕方だった。
「今日は支度だけで終わったな....。クエストはまた明日にしよう」
次の日にハルド森林前にある村で待ち合わせいい、その日は解散した。
そして次の日、ピアは村の入り口付近に立っていたが、カンル・シュラハトがいつまで経ってもこない。
日は高くなり、真上になったがシュラルトは来ない。
「....遅いな....もう昼食を食い終わったぞ」
それでも来ることはなく、やがて日は沈んでしまった。
「あいつまさか忘れているとかないよな?」
2人部屋の宿舎で暗くなった外を首を長くして眺め続けていた。
「えっと、ピアさんでよろしかったでしょうか?」
「えぇ、そうですけど」
「君のお連れさんが、馬車を乗り違えてこことは違うかなり南のデーガンに行ってしまったみたいで、何日か遅れるって連絡がきたよ」
「はぁ?」
どうしたら北と南を間違えるのかさっぱりピアには分からなかった。
「ちょっと....え?気づいたら普通戻らないんですか?」
「それが、村の名前だけ覚えていてそこに着いたら降りるようにしていたそうで」
「相当な距離があるぞ....まぁ、1日間待てばいいだけか」
しかし、そんな思惑も束の間、
「それが、旅先で持っていたお金を全部使ったようで、歩いてくるからもっとかかるみたいです」
「歩いてというと....」
「おおよそ一週間ですかね」
「待ってられるかよぼけ!」
・・・
ピアは街に戻り、一つの立派な木造の建物に入った。
「....ゼンデ・エレーザはいるか?」
しばらくして、2階に案内され一つの部屋に入る。
中にいたのは、ヒョロっとした耳の長いエルフであり、ギルドマスターである。
ピアがシュラルトの育成クエストは、このギルドマスターから直々のお願いだった。
「ピア・キーベ、どうした?」
「エレーザさん、御言葉ですがあの人の育成は私には無理です」
「まぁ、そう言うな。あいつはいずれ強力な戦力になる。君にならできると思ったが?」
「思っていたって....あのですね、私はDランクですよDランク。ギルドマスターなら当然、分かりますよね?位として下から3番目の位です。育成クエストはBランク程の人がやることでは?なんで私に任せるんです?」
「見た通り、あいつは本当にどうしようもないバカでな、BランクもAランクにも頼んだが、全て断られてな。だから君に任せたんだ」
「だからって....それはそれでどうかと思いますけどね」
「頼むよ。君しかいないんだ」
「はぁ....Cランクにも頼んだらいいとおもうんですがね。あと、これ請求書です」
小指くらいの厚さがある紙の束を板状に投げ置く。
「もう使い切ったの?早くない?」
エレーザも予想外だったようで、桁が間違っていそうか疑いたくなるような請求書の額を頬を人差し指で掻きながら見ていた。
「....うん、分かった」
「わかったって、この2日間だけでこのギルドの月予算の1割弱使われたんですよ?下手したら更迭ものですって」
「まぁまぁ、私がなんとかしておくから、安心してくれ」
と、軽々ハンコを押してしまう。
「どうなっても知りませんからね」
と言いながらピアは部屋から出た。
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