話し合い

インターホンが鳴って、梨寿りじゅは玄関の扉を開けた。


俺も、玄関に向かった。


「梨寿、友達を呼んだのか?」


そこに立っている人は、女の子だ。


フリルのワンピースを着ている。


セミロングの髪は、くるくると巻かれている。


「違うよ。由紀斗」


そう言って、梨寿はその人を家にあげた。


俺も、梨寿についていく。


「座って、コーヒーいれてくるから」


そう言うと梨寿は、キッチンにコーヒーをいれにいく。


俺とその人は、向き合ったまま何も話さなかった。


「どうぞ」


梨寿は、コーヒーを置いて彼女の隣に座った。


「主人です。」


「初めまして、大宮由紀斗おおみやゆきとです。」


「初めまして」


「こちらが、私の好きな人です。」


「初めまして、井田真白いだましろです。」


そう言われて、頭がパニックになった。


「えっと、待って下さいね。ちょっとだけ時間を…」


「梨寿さんとお付き合いさせていただいてます。」


「女性ですよね?」


「はい、そうです。」


男が来ると思っていた。


俺の頭は、ショート寸前だった。


「由紀斗、私は真白ましろを好きなの。だから、別れて欲しい」


そう言って、離婚届を差し出された。


「ってきり、男が来ると思っていた…。」


俺は、離婚届にサインをする。


「男じゃなくて、すみません。」


「いえ、愛し合ってるならどちらでもいいんですよ」


俺は、サインする手を止めてそう話した。


「由紀斗変わったね。昔は、同性の恋愛は気持ち悪いって言ってたのにね。」


「そうだったな。今は、違うよ。ただ驚いて、梨寿はてっきり子供が欲しいのだと思っていたから…」


俺の言葉に梨寿は、目を伏せた。


「そんなのとっくに諦めたでしょ?」


「そうだな。とにかく、親にサインをもらってくるよ。俺」


「わかった」


「ちゃんと認めてもらってくるから」


「わかった、待ってる」


俺は、梨寿と井田さんを置いて家を出た。


駅について、電車に乗った二駅乗って降りた。


電車の中で、離婚届を四つ折りにして鞄にいれた。


とにかく、頭がパニックだった。


梨寿の相手が女性。


ああー。もう、わからない。


俺は、実家にやってきた。


ピンポーン


「はい」


「俺だけど」


丁度、両親は二人共在宅中だった。


「由紀斗、何のようだ?」


「悪いけど、これにサインが欲しい。」


「離婚しようとしてるのか?」


「ああ」


「許さんぞ」


机をバンッと叩いて、父はいなくなってしまった。


「母さん、お願い」


「離婚するなら、大宮の姓を捨てなさい」


「何言ってるの?無理に決まってるじゃないか」


「養子にでもしてもらいなさい。大宮の姓を捨てれないなら、離婚は許しません」


「無茶言わないでよ」


「部長さんからの縁談を蹴って、あの女との結婚を許したんです。去年には、孫も諦めさせられて。とんだポンコツ女房を掴んできておいて。離婚だなんて。大宮の恥さらしです。大宮の人間は、誰一人離婚などしてませんよ。嫌なら、姓を捨て、縁を切ります。そうじゃないと、離婚は許しません。出ていけ」


「わかったよ、わかった」


母親に、塩をまかれまくって。


俺は、実家をでた。


はあー。名字を捨てろと言われてどうしたらいいんだよ。


塩をはらいながら、駅についた。


梨寿に謝らなければならない。


俺は、電車に乗って家に戻る。


他人に書いてもらった所で、別れたのがバレたらどうする。


大宮の姓を抜くのは、どうしたらできる。


俺は、頭を抱えながら家に帰った。


「お帰りなさい」


「井田さんは?」


「さっき、帰りました。」


「話があって、いいかな?」


「お風呂に入りますから、その後でも?」


「ああ」


梨寿が、お風呂に入っていった。


梨寿の顔を見ると言えない気がした。


暫くして俺は、洗面所から梨寿に話しかけた。



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