寝顔

疲れて眠る由紀斗さんを見つめていた。


ストックがなくなってしまったな。


財布をスーツのポケットにしまった。


不倫相手なんだよな?俺。


スマホを見つめる。


[次、いつやる?]


[4Pか6Pって話しになってっけど]


[女子少ない方がいいよな]


[彰の中、ヤバイって話聞いた?]


[絶対、彰いれような]


グループでの会話を見つめてる。


淫乱BOYSってグループ名、ダサすぎだろ


[いっちは、今回も参加すっかな?]


[いっち、イケメンだからいなきゃ困る]


先輩とは、ずっと繋がってる。


結婚したのに、まだこんなのやってて、正直馬鹿だと思ってた。


[悪い、今回は不参加で。出張またあるから、疲れとれないし]


送信と…。


[まさか、特定作ったんじゃないよな?イチ]


先輩のメッセージに心臓の鼓動が速くなる。


[まさか。ないですよ。出張が忙しいんですよ]


俺は、震える手で送信した。


あの日を思い出すとこの人のいいなりのままだ。


『どうなってんの?これ、聞いてないよ』


『死ななくてよかったぐらいだろ?』


『イチがやったんだよ。わかるか?』


『俺が、何で?』


『救急車、呼ぶからみんな帰れよ』


辰己たつおみ先輩、俺が本当にやったんですか』


『そうだよ、イチ。なぁー、みんな見てたよな』


『ああ、見てた』


あの時の動画を晒されたら人生は終わりだ。


由紀斗さんも、俺を嫌う。


飲みかけのワインを紙コップに注いだ。


だから、人を好きになりたくなどなかった。


[いっち、いないの残念]


[まあ、たっちゃんもイケメンだからいっか]


[すみません。また、誘って下さい]


二度と誘われたくない。


だけど、あの日を思い出すと逆らえない。


初めて酒を飲んだせいで、何も覚えていなかった。


いまだに思い出せない。


はあー。


このまま、一生先輩の言いなりになって生きていくと思っていた。


好きな人なんて一生いなくて…。


あの日、先輩が差し伸べてきた手を振り払っておけばよかった。


惣菜の焼き鳥を口にいれる。


由紀斗さんに愛されるまでに、全部終わらせたい。


涙が頬を伝ってくるのがわかる。


俺、ちゃんと由紀斗さんを愛したいよ。


袋にゴミを纏めてく。


俺は、残りのワインを飲み干した。


快楽ばっかり考えていた二十代前半の猿な俺を捕まえてボコボコに殴ってやりたかった。


洗面所で顔を洗った、歯磨きをしながら鏡を見つめる。


馬鹿だよな。


妻がいる人を好きになって、まさか本気になるなんてな。


もう、由紀斗さん以外を抱きたくない。


どうする事も出来ない思いに押し潰されそうだった。


口をゆすいだ。


体を拭いてあげようかな…。


俺は、温かいお湯をだしてタオルを絞った。


「由紀斗さん、体拭いてあげますからね」


スヤスヤ眠る由紀斗さんの体を拭く


ぬるくなったら、また絞ってを繰り返して拭いてあげた。


さっきより、気持ちよさそうに眠ってる。


「起きないね」


俺は、由紀斗さんにキスをした。


「うー、梨寿りじゅ


やっぱり、奥さんを愛してるんだな。


「さっき言った事、忘れてくれない?俺、由紀斗さんに愛される程、綺麗じゃないから」


そう言って洗面所に戻ってきた、タオルを綺麗に洗う。


漂白剤つけたって、俺のよごれは落ちないんだよ。


電気を消して、ベッドに戻る。


一緒に添い寝するつもりだったけど、やめとくよ。


隣のベッドに寝転んだ。


奥さん、綺麗な人なんだろうな


俺みたいにけがれてないんだろうな


何で、こんな人生になっちゃったかな?


起き上がって俺は、由紀斗さんの写真を撮った。


カシャ


もう、見れないかもしれない。


嫌、見れないんだ。


だから、余計に愛しくてつい撮ってしまった。


ダセーよな。俺


スマホを見つめる。


由紀斗さんが、隣のベッドで寝てる。


それだけで、ドキドキしてる。


由紀斗さんに愛されたかったな


あんな事がなかったら…


思い切り、愛されていたのにな


泣きながら目を閉じた。


震える体を抱き締めてくれる人はあの日からいなかった。


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