出したものは片付けなさい、って教えられるから、ぼくたちは化粧しなきゃいけなくなるんだ。

手段だった整理整頓が、心の代理人にまで生長した。何もない座卓やメイキングされたベッドを見ると、ホテルみたいで、客であるということを強調されている気がして、気後れしてしまう。飲みかけのコップがあっていいし、脱ぎっぱなしの服があっていいし、クローゼットは半開きがいい。キレイな状態を見せたい気持ちを理解するから、どんな状態も見たい気持ちも理解してほしい。

同窓会で、かわいいと思っていた人に再会した時、話しかけられるまで気付けなかった。かわいいとは思えなくなったキレイな顔で、スクールバッグのキーホルダーの代わりにイヤリングが揺れている。引っかかってやまなかった小麦色の肌の面影はなくなって、ゆでたまごみたいに白くてつるんとして掴み所がなかった。きみの平和的な表情で、ぼくには小糠雨が残った。