ジャンヌ・ダルクの泪

日の出ずる大地が曇天に覆われた。

森は幹の細さを晒し、人間以外の呼吸を隠匿した。

壁は打ち壊され、炊煙の代わりに生活を呑み込んだ灰燼が舞う。

畑が黄金の波をつくる様を見ることはもうできないだろう。


燃え上がる祖国を救うために、聖女が立ち上げられた。


一回りちいさな鎧が泥と血の跳ね返りで汚れている。

左手に持った剣を踏み躙られた荒れ野に突き立てる。

右手を精一杯伸ばし、旗を高く掲げる。

光沢を捨て去った布片は、風に靡かれているというより、伝わった手の振動で揺蕩っている。

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