溺れて思い知る
シヨゥ
第1話
「溺れる者は藁をも掴むとは言うが、本当に掴むとは思わなかったな」
助けを求めてみるとそんなことを言われた。
「俺も絶賛溺れている最中さ。二人して抱き合って心中でもしてみるか?」
そう言って彼は笑う。
「まあ洒落になんないよな。この状況」
死屍累々とはまさにこのこと。責任者が次々と文字通り消えていき、残された末端社員で辛うじてプロジェクトを動かしている状況。動かしていると言っても方向性もなくただ這いずり回っているような状況だが。
「誰が一番先に陸にたどり着くか楽しみだな」
彼はまた笑う。
「まあそいつはまた海に引きずり込まれるわけだが。まあ溺れている内は自分のことに専念できると思って楽しむことだな。それじゃあな」
そう言って彼はパソコンに向き直る。もはやこちらを見ようともしない。言葉を失って改めて思い知る。この場に居る限りは助けなど来ないのだと。誰もが孤立無援なのだと。改めて思い知る。
溺れて思い知る シヨゥ @Shiyoxu
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