てがみ

まさひろ

20年

20年前にある女と別れた。


…というとカッコつけてて「フラれた」のであって、カルテを見ると2000年の初診になっている。そうなのである。僕は「たかだか」「失恋」みたいなものに20年(22年)支配されている。


もちろんその背景には「ネット黎明期のブロックなきブログ問題」やらがあったり、そもそも遺伝的な精神疾患体質があったりするわけだが…とは言えそういう分析的な、というか、自己正当化のための?理由づけを置いておいても自分は「その問題」と20年以上向き合っている(いや逆に向き合わず逃げている?)


彼女との始まりは、なんとなく友達にフライヤー(ちらし)をもらって行ってしまったKen-Ishiiというアーティストのイベントだったと思う。僕はチケットが当日手に入らないということで、イベント会場の前で看板を書いて「チケット探してます」と…。それはナンパでもないし「真面目に」当時として少し古くなっていた手法でチケット転売を受けてイベントに入った。


イベントの内容は覚えてない。KenIshiiは無事見れたと思う。いやDJイベント的なやつだから、名も知らないDJのプレイで踊っていた。そんな踊ってる中で「看板を持っていた人」という立ち位置で彼女は僕を見つけた。そして彼女は(間違いなく)美形だったもんだから、僕は「こりゃ儲けた」と言う様な謎のモチベで彼女の連絡先をゲットした。当時はポケベルだったのかな?もう覚えてないそれも。


彼女はパン工場で働いていた。彼女はテクノミュージックが好きだった。彼女には彼氏がいた…とまぁ概ね前提条件的に思い出せるピンポイントな情報を整えたらそんな感じだと思う。でもその後彼女と会ったりして1年かけて”口説”いていくわけで、彼女に他の男への別れを決意させて付き合うわけだけど…

そういや、2回目のデート彼女どうしてたんだろ、二人きりであったわけないしな、なんか共通の友達がいた様な気もするが覚えてない。


まぁ程よく必死に口説き、程よく付き合うと、程よく結婚も意識するとか、誕生日を祝うやら…序論が長くなったな。いや序論だけで終わりそうだよ。いや、ここからの本論僕は思い出したくないのか?


わからない。


とにかく彼女は北とか言う男と知り合って、どこかに行った。そもそもサイバースペースの遊べるsony vaioで知り合ったらしいのだけど、そのvaioの購入を勧めたのは僕だったりするわけで…いや、あの頃WiFiなんてものもないからモデムやらインターネットの最初の設定すら僕がやったんじゃないのかと…そこら辺が思い出したくないのかな僕は。


いや違うんだ、そんな暗い話がしたいんじゃない。その別れのあと20年やらたっても僕は彼女を思い出すし、この通りブログ(小説?)に書いていくわけだが…。大体はこの時間だ、こんな夜になると彼女の亡霊みたいなものが僕にやってくる。


まぁ絶対にあり得ないんだけど「念じ続けたら思いは通るのでは?」と言う全く根拠の無い自信みたいなものが最近あって。


とにかく20年苦しんで睡眠薬やら向精神薬のお世話になってる割に「oにたい」の先に辿り着いたと言うか…「これだけ思ってたら会う事も0%では無いし」と「その時なんて言おうかな」とか思ってる。(まぁ無いんだけどね)


あ、そう言えば彼女の旦那さんもサイバースペースで見つけてしまったので、僕はその名前を把握してる。その絡みで彼女と別れてから20年経って彼女のインスタも見つけてしまうわけだが…👍イイネ!をしたら彼女鍵垢に即行してた。ブロックでは無いんだよな。


インスタの鍵アカも不思議で、鍵でも更新数はチェックできるという仕組み。その僕からの👍イイネ!のあと閉鎖状態になったそのアカウントも1ヶ月に一回くらい更新されるので、それを手元の手帳に日付とカウントをとってたりする。


いや、このストーカーだろと言う話自体も余談で、そういう無理のない日常に彼女の悲惨な思い出との向き合い作業を組み込んでいる今。この20年はひたすら辛かったけど、「あと20年もしたら好転するんじゃね?」と、(太古の考えなら神の声で)どこからか言葉が聞こえたりする。

〜いや幻聴じゃないよ、そう感じるって意味ね。


もっと踏み込むなら、「20年」とざっくり区切って2040年の誕生日に、この問題から開放されると言う「約束」なんじゃなかろうかこれは。昔教会で聞いたお話で牧師が「人間期限がないと5分でも待てなくて、疑いに憎悪に変わるが、期限が決まってると何年でも(民族的に)何100年でも待てる」と言うことらしい。


もう僕はつかれた。今日も右肩を下にして眠れば新幹線の絵面が見えて、左を下にしたら彼女の衣装ケースが見える。目に見えないけど間違えのない、どこにいても目にする、目を閉じれば目にする景色だ。寝ますよ。おやすみ see you


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